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思う必要のない「結婚しなければ」

「別に娘に結婚して欲しいとは思わないの」

ある女性の言葉。
5ヶ月を迎えた娘の寝顔を見ながら、この子は将来どんな人になるんだろう…などとぼんやり考えていたとき、ふと思い出した。

わたしの母と同い年の彼女は、娘さんを溺愛していた。娘さんは30代半ば。いつも娘さんの幸せを祈っていたし、彼氏ができるように、結婚できるように、心から願っているとよく口にしていた。
だから「結婚して欲しいとは思わない」という言葉がとても意外だった。

「結婚して欲しいんじゃなかったの?」
「うん、別に」
「いつも彼氏ができたらいいな、結婚できるといいなって言ってるのに?」
「うん。」
「じゃあ…なんで?」
「それはね、娘がね、彼氏が欲しい、結婚したいって思ってるから、その願いが叶って欲しいの。それだけ。あの子が望まなければ別に結婚しなくてもいいし、あの子が幸せならなんでもいいの。」

そう言ってニッコリ笑う彼女からは、いつも以上に深くて大きな娘さんへの愛を感じた。

彼女の考え方はとても柔軟だし、本当の意味でわが子の幸せを願うとは、こういうことなのかもしれないと思った。


親が子どものことを心配してアレコレ言う気持ちは、自分が親になってみて、本当によくわかる気がする。
特に年ごろになると「誰かいい人いないの?」「結婚しないの?」などなど、いろいろと尋ねられてきた。
心配だったのだと、今なら素直にそう思える。
でも、当時のわたしは心底うんざりだった。
そして自分でも気が付かない間に
“彼氏をつくらないと”
“結婚しなければ”
“結婚して両親を安心させたい”
そんな思いで頭がいっぱいになっていた。

結婚は、お互いに心から好きだと思える相手に出逢えることで成立するものだと思う。
“この人とこの先も一緒にいたい”
“この人を幸せにしたい”
そう思える相手に巡り合い、相手も同じように思ってくれる。
それは奇跡のようなことだと思うし、そんな相手にいつどこで会うかなんて、誰にもわからない。
たぶん、出逢うときには出逢う。
「出逢うべき人には必ず出逢う。一瞬早くもなく、一瞬遅くもなく、ね。」
誰かが教えてくれた。
初めて聞いたとき、そういうものなんだろうな、と妙に納得してから、この言葉はずっと心に残っている。

娘の出逢うべき人とは、どんな人たちだろう。
娘がずっと一緒にいたいと思える人は、どんな人だろうか。
娘のことを幸せにしたいと思ってくれる人は、どんな人なんだろう。

娘が“年ごろ”といわれる年齢になっても、「結婚しないの?」「孫の顔が見たい」なんて言う親には、わたしはなりたくない。
わたしみたいに“結婚して両親を安心させたい”なんて想いを抱いて、悩ませたくない。
結婚しない自分に劣等感のようなものを感じながら生活する時間なんて、必要ない。
何が幸せかを決めるのは、自分の人生を生きる本人だから。

娘が、自分で決めた道を歩み、毎日を楽しく過ごせること。
娘が、幸せだと感じる生活ができること。

それだけが、わたしの願い。
どうか将来のわたしにも忘れないでいてほしい。




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