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これからの10年は、自分たちで作っていく -ハマ・オカモト対談4/4

※2020年4月掲載記事(こちらの記事は2020年2月下旬に実施されたインタビューを元に構成されています。)

5月11日に、初のムック本であるBASS MAGAZINE SPECIAL FEATURE SERIES『2009-2019“ハマ・オカモト”とはなんだったのか?』を発売するハマ・オカモトさん。デビューからの10年を振り返ったうえで、次の10年についても語ってもらった。

ーーぴんこ:
ハマさん、29歳になられたんですね……。変わらないですね、見た目。

ハマ:
なんかね、最近は「だんだん年齢と比例してきた」って言われます。20代前半はなんか、ね。

ーーぴんこ:
年相応には見えなかったですよね。

ハマ:
ラジオでもそういうくだりもありましたしね(笑)。

ーーぴんこ:
そんな30歳を前にしたハマさんが、ムック本を発売されますね。本を作るにあたって、いろいろ振り返ったと思うんですけど、いかがでしたか?

ハマ:
リットーミュージックさんって音楽専門誌をやってて、僕は『ベースマガジン』でずっとお世話になってたんですけど、まあいわゆるムック本っていうやつですよね。「出しませんか?」ってお話をいただいたんですけど、正直恥ずかしいから嫌だなって(笑)。でも19でデビューして10年やってると、バンドだけやってたら言うことも書くこともないっちゃないと思ってたんですけど、バンドの外でも仕事を10年やってきたので、やっぱりベースを弾いている人っていう以上のことは話せる本になってるかなと。人のところというか。プラス本当に目まぐるしくやってきたので、良くも悪くも。もう自分が何をやってきたのか半分わかっていないところもあって、それこそ振り返りなんですけど。それをまとめられる仕様になるんだったらいいなと。で、お受けしました。あと「打倒、Wikipedia」っていう裏テーマがあって(笑)。俺のもあるんですけど、自分のページが。どこの誰だかわからない人によってすごく詳細に書かれてて。

ーーぴんこ:
ファンの方がきっとね、更新されてるんでしょうけど(笑)。

ハマ:
そうなんでしょうね。それにしても、2008年とか2009年とかだいぶ前のことも書いてあるんですよ。だから気持ち悪いなって(笑)。で、自分のこと調べるのもWikipedia見るのが本当に早くって。「何月に誰々を手伝った〇〇がリリースされている」とか。それも癪に障るっていうか(笑)。なので今後そういうのを見なくてもいいような本を作ろうと思って。だから10年を振り返って、最初のマネージャーの頃からの日割のスケジュール、10年分を全部出して、何をやっていたのかっていうのを全部載せるくらいの勢いで。去年の8月くらいから制作を開始したんですけど、進めば進むほど自分でコントロールしたというよりかは、周りの人に作ってもらったという感じがすごくあって。

ーーぴんこ:
「ハマ・オカモト」という人物を。

ハマ:
はい。世間様が思うイメージとかは、やっぱり自分の周りの人たちが作ってくれてるなっていうのをすごく感じましたね。だから10年振り返って、自分のことなんで自分がターニングポイントだったんだなっていうのはありますけど。タイトルの「なんだったのか?」っていうのは自分で考えたんですけど、伝説のプロレスラーの自伝みたいでいいなと思って(笑)。亡き者みたいな感じでいいなって(笑)。

ーーぴんこ:
(笑)。

ハマ:
デビューからの10年を清算したい気持ちがあったので、過去形のほうがいいなと思って。って言ってたら自分じゃない他人の本を作っている気持ちになってきて、めちゃめちゃ客観視できておもしろいですね。

ーーぴんこ:
そう、タイトルを見て思ったんですよね。「何なのか?」じゃなくて「何だったのか?」っていうのはこだわりがあったんだろうなって。

ハマ:
そうなんですよ。単純におもしろいっていうのはあったんですけど。本心ですよ、何だったんだろうこの10年っていう。そこでそれにしようと思って。だからギリギリで名前にコラムつけて、一個のものとしてしようかなって。ミュージシャン同士の対談もあれば、音楽以外の枠も設けてやったりして、本当に振り返りでしたねこの半年ちょっと。

ーーぴんこ:
10年って大きいですか?

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ハマ:
ようやく振り返れるなって思いました、10年で。自分が何かやった、弾いた曲とか、恥ずかしくてそんなすぐに聴けなかったんですよ当時って。後悔しそうと思って。心残りがあったとか上手く弾けなかったとかじゃなくて、何でもそうですけどやり終えた瞬間から違う感覚って芽生えるじゃないですか。やったから。だからもっとあぁすればよかったなっていうことはどうしても思っちゃうじゃないですか。だからそれを思うのが嫌だったんですよ、当時。全力でやったから念入りにチェックしてここをこう直したいとか思うのが嫌だからしばらく聴けなかった曲とかも、やっぱり10年経つと「この人頑張ってるな」みたいになって(笑)。

ーーぴんこ:
めっちゃ客観視してますね(笑)。

ハマ:
そういうのを全部できたからよかったですね。あとインタビューも『ベースマガジン』に掲載したインタビューを載せたいって言われたんですけど、そんな恥ずかしいことないじゃないですか(笑)。19の奴が「こういう風に弾いてます」みたいな。そんなん10年経って見たら笑っちゃうから「嫌です」って言って。でもムック本が~みたいな話になったから、「じゃあいいですけど、赤ペンを自分で入れさせてくれ」って。自分で過去のインタビューの抜粋に赤ペンを入れて編集の人と。2010年の何月にここで、演奏に対してこんな風にアプローチしてるっておっしゃってますけどって言われて一緒に読んで、恥ずかしかったですね(笑)。これは今は思わないとか、これは今も言ってますねとか(笑)。

ーーぴんこ:
じゃあどこに赤字入れたかわかるようになってるんですね。

ハマ:
編集の人がおもしろいこと言ってると思ってくれたところを年ごとに抜粋して、それに今のコメントみたいなのを入れて、全方位的な振り返りですね。

ーーぴんこ:
じゃあかなり色んなアプローチで振り返っていったんですね。

ハマ:
そうですね。だから時系列的なアーカイブと、作品のアーカイブと、楽器とかも載せましたけど。あとはそのパーソナルなことですよね。アンケートもそうですけど、160人くらいにお願いしました。なのでそれだけでどこで知り合ったとか100なん通りあるんで、それも振り返りでしたね。忘れちゃってたわけじゃないですけど、自分が覚えてなかったことをやっぱり覚えている人もいるし。でもずっと他人の作業してるような気持ちになるんですよ、「この人頑張ってんな」って(笑)。「本当に23歳か!? えらいですねぇ」みたいな(笑)。だからフェンダーと契約したときも23とかなんで、23か~って。今自分が年下の23の子とかがそういう契約してたら凄いなってなるなと思って。当時は自分のことだから、ね。

ーーぴんこ:
だから業界の皆さんすごいなってなってましたよね。

ハマ:
当時の自分が素直に実感できなかったこととかを振り返る作業にできてて、すごくいい機会でしたね。

ーーぴんこ:
本を作る作業で10年間のハマ・オカモトは何だったのかっていう、自分なりの答えは見つかったんですか?

ハマ:
それはさっき言ったことと重複しちゃうんですけど、人の手によって作られた10年。人の手によって楽しく、自然に物事をやれているのは身の周りにいてくれる人たちが作ってくれたものだっていうのがすごい実感してます、今。

ーーぴんこ:
おもしろいですね、自分なのに自分じゃない誰かを振り返る。

ハマ:
そうそうそうそう。写真とか見てても他人みたい。別にそんなに変わってないんですけど(笑)。

ーーぴんこ:
ちょうど10年で、おもしろい作業でしたね。じゃあ30になって、どういう風に生きていきたいとかあります?

ハマ:
これからの10年は、自分たちで作るっていうか。より自分たち主体で物事を動かしていくことができたらいいなと思いましたね、心の底から。だから今回自分で作った本って、人に作ってもらったものをまとめたって感じなので。仮にもう10年経ったときに10年を振り返るとすると、本当に自分で書けるものみたいな10年にすべきですし。

ーーぴんこ:
それは大きな違いですよね〜。

ハマ:
そうですね。その自覚はやっぱり芽生えましたね、この10年で。

ーーぴんこ:
振り返ってみて、この10年はこんな感じだったって。じゃあってなれればっていうことですよね。

ハマ:
あとは続けることっすね、本当に。続けることがいかに難しいかっていうのは、10年やって思ったので。同期のバンドとかもどんどん活動休止とか解散っていう風になっていって、やっぱりただやりたいことだけを続けていけるなんて美味しい話は無いと思っているし。そのためには、やっぱりいろんなことを考えなきゃいけないなと思うので。ヒットを出すことだけが生命線では無いと思っているので、バカ売れするとかだけでは無い。10年やってこれたから安泰ではないんで、これからどうするかはきちんと考えなきゃなって思いますね。

ーーぴんこ:
バンドとしての活動があって、それぞれの外の活動もあって、2軸があるみたいなのは変わらずなんですかね?

ハマ:
そうですね。もうもはや戻れない感じもするので。バンドだけっていうのは血の巡りが悪くなる気がするので、みんなそういうのは向いてないというか。それは変わらないかもしれないですね。

ハマさんが自身に投げつけた「ハマ・オカモトとはなんだったのか?」という疑問。半年以上にわたり振り返ってみて気づいたのは、「周りに作ってきてもらったハマ・オカモト」だったという。だからこそ10年後には、自分たちで作り上げていきたいと話すハマさん。ハマさんにとって20代最後の1年であり、デビューから10年という節目である2020年は、きっと大事な分岐点になるはず。ハマ・オカモトさんとOKAMOTO’Sの10年後が楽しみで仕方ない。


ベストアルバム「10’S BEST」
OKAMOTOʼSのデビュー10周年を記念したベスト盤。収録内容はファン投票などによって決定。これまでのバンドの軌跡が詰まったアルバムだ。

BASS MAGAZINE SPECIAL FEATURE SERIES『2009-2019“ハマ・オカモト“とはなんだったのか?』
ハマ・オカモトの10年の活動を年譜でまとめたうえ、ロングインタビューによって、その歩みをひもといていく。

スタイリスト:TEPPEI
スタイリストアシスタント:守田圭佑
ヘアーメイク:藤井陽子

撮影:岡祐介

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