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ハマ・オカモト「バンドにいる自分とひとりでいる自分のバランスの取り方がわかるようになった」

※2020年4月掲載記事(2020年2月下旬に実施されたインタビューを元に構成されています。)

ムック本の制作やベストアルバムの発売にあたり、デビューからの10年間を振り返ったというOKAMOTO’Sのハマ・オカモトさん。その結果、この10年のハマ・オカモトとはなんだったのか? かつてハマさんと一緒にラジオDJを務めていたHarumari TOKYO編集部員・岡野ぴんことの対談から紐解いていく。

ーーぴんこ:
最後に会ったのが4年前ってことは、ハマくん当時26とかだったんですかね?

ハマ:
23か24じゃないですかね。僕、来月で29歳なんで。

ーーぴんこ:
いやいや、すごいですね。ちょうど30歳を前にして振り返りたい時期なんじゃないかなって(笑)。

ハマ:
ちょうどバンドも10周年で。バンド自体の振り返りも今年1年くらいは多分やるんですけど、それに付随して、自分は自分でこういうことをやってたっていうのは振り返ってます。

ーーぴんこ:
そこは「バンド」と「ハマ・オカモト」って違う軸なんですか?

ハマ:
そうですね。でもやっぱりバンドマンであることが主軸にはなっているんで、土台というか。だから変な話、バンドにいるときはハマ・オカモトっていう名前でやればいいけど、例えばこういう仕事とか本名でやってもいいわけじゃないですか。違う名前で。でもバンドをやっている人がこういうことをやっているからおもしろいと思っているので、そういう意味ではずっと交わっているところがあるんですけど。全部還元ですかね。バンドって村なんで、そこのバンドしかやっていない人のことを否定するわけじゃないですけど、やっぱり自分のバンドのドラムとかギターとかベースとかしか知らない世界の中で自分の良し悪しを判断するのはな、って思ってます。例えば星野源さんのところに呼んでもらって、自分が普段一緒にやらない人たちとやるとこんな感じなんだとか。経験値って、楽器を演奏している人からするとこんなボーナスステージはないので。そして、それは全部バンドに還元できますし。ラジオとかテレビでゲストの人と喋るとかも、コミュニケーションとしては最上級じゃないですか。還元できない人はできない人でいるんでしょうけど、僕はわりとできるほうなので。とはいえ群れて友だちたくさんいますっていうのとは無縁の人生ですけど(笑)。でもこういうところで喋れるからいいなと思って。だから私生活で色んな人と会う人もいれば、僕みたいに仕事で色んな人に会う人もいるんで。まったく別ではないんですけど、バンドにいるときには出せない自分の状態を出せる「ひとり」での仕事もあるので、良い作用はずっとある感じですね。

ーーぴんこ:
ラジオのときも、普段はハマさんとふたりでやってて、バンドメンバーの皆さんが来たときもあったじゃないですか。そのときはやっぱりいつもの感じとは違って、皆さんがいると「この中での僕の役はこれ」っていうのに徹すればいいっていう、ある意味リラックスした状態があって、それはおもしろいなと思ってたんですよね。

ハマ:
その通りだと思います。

ーーぴんこ:
でも両方がなきゃダメですかね?

ハマ:
バランスを取っているというか。4人でやるとこういう仕事も分担するじゃないですか。それで良いこともあるし、イライラすることもあるんですよ。「全然質問聞いてねぇなこいつ」とか(笑)。そういう集合体としてのおもしろさと意識があるっていうのは、単純にいち人間として健康ですよ。最近は僕以外のメンバーも外仕事をするようになったので。うちのボーカル、今やNHKの歌のお兄さんだし。『ムジカコッピリーノ』の主人公みたいなのやってるんですよ。

ーーぴんこ:
ショウくん、そういうの向いてるかも(笑)。

ハマ:
うちのドラムはDJやったり、うちのギターもソロ出してツアーやったりってなってるんで。たぶん健全になりますよね。これだけやっていかなきゃいけないっていって血が溜まるよりは、いろんなことをやってすっきりしたうえで、4人で集まったときに何をするかってできるから、よっぽど並みの同い年のバンドよりは健全にやれている気がします。

ーーぴんこ:
関係性的にね。

ハマ:
「うざっ」って思ったら離れられますからね(笑)。バンドだけだとずっとその中だけでやってなきゃいけないですけど。

ーーぴんこ:
たしかに、意外なところでメンバーの皆さんをお見かけすることもあったので、それぞれおもしろいことやってるなって思ってました。

ハマ:
うちは干渉しないんですよ、人がやってることに。

ーーぴんこ:
バンドにいる自分と外仕事している自分のバランスみたいなものも、この10年で学んだ感じですか?

ハマ:
バンドでいうと僕が先に個人仕事が増えていったので、増えていけばいくほどバランスは取れるようになりましたね。

ーーぴんこ:
ほかのメンバーも?

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ハマ:
そうですね。自分が3人のところへ帰ったときの立ち居振る舞いとそうじゃないときが、明確に。ありがたいことにレギュラーものも多かったので、そうなるとそこにチームができるっていうか。なのでそこでのやり方みたいなもので自分の中のやり方ができて、バンドにまわって、って精神的にもどんどんバランスが取れるようになっていった感じですかね。あと結局みんなバンドで音楽やるっていうのが一番おもしろいと思っているので。だから最近よくファンの人に言われるんですけど、「ほかでやっていることのほうが楽しそう」みたいな。バンドじゃなくなっちゃうんじゃないかとかよく言われるんですけど、はっきり言うと、そりゃひとりでやっていることは楽しいに決まってるじゃんっていうのもあるし(笑)。でも、だからこそ4人でやっているのが一番楽しいじゃんっていう。どっちも本当に同じところに存在しているから、それはわかってほしいっていうのはよく話しています。だってDJやってるとき、楽しくなさそうにやっちゃダメだろって(笑)。まぁファン心理っていうやつなんでしょうけど。それとこれとは別だし、でも表裏一体ではあるしっていうのは、こういうバンドだからわかってほしいなとは話してます。

ーーぴんこ:
でもそれも長年のファンはわかってきてる?

ハマ:
そうですね。うちのお客さんは理解が深い人が多いので昔から。民度が高いってよく言ってるんですけど(笑)。お客さんには絶大な信頼を置いてます。

ーーぴんこ:
10年間でお互いが理解しあって。

ハマ:
そうですね。言いたいことを言うようになったのが早いんですよ。普通にこうやって喋っているときに「うざい」とか(笑)。そういうことに気を使わなくなった。あとは音楽を作っている姿ではなく、4人で喋ってるだけの動画の配信とかで、最近何を食ったとかっていうことを月1でやっていくと人間的に理解されるようになっていって。もちろん最近はSNSとかもあるから勘違いされる距離感とかもあるんですけど、そこを徹底して「ちがうぞ」ってやり続けていた結果、僕らは「こういう音楽をやっているこういう人たち」っていう風に見せることができたんで、ここを好きになってもらっているのは強いなって。わかってる上で活動を追ってもらえているので。踏み込みすぎてる距離感でもないけど、でも言わずともわかってもらえてるっていうのがすごくあって。なおかつ、新しく出る音楽にも理解してもらえるっていう今すごく良い状態で。以前、中野サンプラザでどっきり的に客席に入っていくとかやるんですけど、普通って「わー!」って騒ぐじゃないですか。でもね、みんな誰も触らないの(笑)。だから一応スタッフ立てるんですけど、まったくそんな混乱もなく。一昨年かな、アンコールで客席から出てきてステージに戻るっていう演出のとき、このサビの間にステージに戻らなきゃねってなったとき、触られてることを想定するとちょっとラグを計算しなきゃいけないよねって言ってたのに、まったく触られなかったから想定よりめっちゃステージに早く着くっていう(笑)。

一同:
(笑)。

ハマ:
それもいいけど、触らないのもどうなの!?って(笑)。嫌いなのかも?あまり好きじゃないのかも?って(笑)。でもそういう話をライブでもファンの人たちとできるっていうのがね、良い関係性ですよ。

個人の仕事で得たものが、OKAMOTO’Sの活動にもまわって還元される。さらに、ファンに自分たちのこのスタンスを伝える努力をしていけば、ファンとの一体感も生まれる。2軸を持つことによるバランス感覚を身につけただけでなく、良い循環が生まれるところまで拡張する。バランスを取ることを学ぶだけで止まらないのが、ハマ・オカモトという人間なのだろう。次回は、バンド活動の10年について。

<第2回に続く>

ベストアルバム「10’S BEST」
OKAMOTOʼSのデビュー10周年を記念したベスト盤。収録内容はファン投票などによって決定。これまでのバンドの軌跡が詰まったアルバムだ。

BASS MAGAZINE SPECIAL FEATURE SERIES『2009-2019“ハマ・オカモト“とはなんだったのか?』
ハマ・オカモトの10年の活動を年譜でまとめたうえ、ロングインタビューによって、その歩みをひもといていく。

スタイリスト:TEPPEI
スタイリストアシスタント:守田圭佑
ヘアーメイク:藤井陽子

撮影:岡祐介


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