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美しい顔は声がつくる。ボイストレーナー・鳥山真翔に学ぶ「美顔ボイトレ」

外出自粛で人と話す機会が減った今。「最近、声を出してないかも…」と思った人は要注意。声を出す喉だけでなく、顔も衰えているかも。ボイストレーナーの鳥山真翔さんによれば、明るい「声」は美顔を保つカギでもあるという。一体どういうことなのか、最近、さまざまなメディアでも注目されている鳥山さんの人気講座「美顔ボイトレ」を体験してみた。

脳の働きは声で始まる

鳥山さんの「美顔ボイトレ」を体験させてもらったのは、2020年の2月。まだ新型コロナの影響が大きくなる前だった。「ボイストレーニング」の名に相応しく、レッスンは都内の某スタジオで行われた。

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本格的なレッスンを予感させる、キーボードが置かれた鏡貼りの部屋。この日の受講者が揃うと、「こんにちは〜!」と鳥山さんが登場した。

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「美顔ボイトレは、ボイストレーニングを頑張って、顔を引き上げていくトレーニングです。そのためレッスンでは、声を出してください。声を出さないと何も変わらないと思って!でもその前に、まずは声の仕組みを知ってください」

そう言って鳥山さんが書き出したのは、「行動が先 意識が後」という言葉だ。

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「よく、脳で考えてから行動に移すものだと思われがちですが、実は逆なんです。例えば物を取る時、意識をするより先に体に電気信号が送られる。その体の形状に反応して「私は物を取る」という意識になる。つまり、フィジカル次第で脳が切り替わるということなんです。これは、こと発声においても同じ。『緊張したから声が震える』ではなく、緊張している時、呼吸が浅くなったり筋肉が硬直して、震えた声が出る、その震えた声を聞くから、『緊張している』と意識してしまう。だから、無理やりでもいいから安定した声の出し方がわかっていれば、うまくスイッチできる。声をコントロールするだけで、人とのコミュニケーションも円滑になります」

声と脳の関係なんて、これまで考えたこともなかった。しかも、自分の声のせいで、余計に緊張したり悲しくなっていたりした可能性があるなんて。正しい発声の大切さをしっかり頭に叩き込んだら、次は声の仕組みを学んでいく。

「声は体の中でしか生まれません。大きい声を出したければ、息を吐いて前に出すのではなく、体の中で響かせるように声を出す。太鼓やギターなどの楽器をイメージすればわかるように、音が響く空洞は体にしかないんです。そして体の中にある空洞はどこにあるのか、これがわかっているかが大事。声が低いとか、泣きそうな声になってしまうというのは、そういう空洞で共鳴させているから。出したい声を出せる空洞に、的確に息を送る。これがボイストレーニングです」

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とても専門的な話だが、ホワイトボードを使って、丁寧にわかりやすく解説をしてくれるので頭にすっと入ってくるのもありがたい。

「声は3つの空洞で共鳴させます。胸、鼻腔、そして鼻腔の先、眉間からおでこのあたりにある空洞です。鎖骨のあたりに手を当てて声を出してみてください、振動していませんか。これが、胸で共鳴している状態です」

言われた通り手を当てて声を出すと、振動しているのがわかった。胸で共鳴させる声は「胸声」といい、いわゆる地声のことである。低く、しっかりした声が出るが、筋肉に囲まれているので、緊張した時に声が震えてしまうなど、影響を受けやすいのが難点だ。また、眉間のあたりで響かせるような声はヘッドボイスといい、キンキンとした高めの声。人によっては不快感を与えてしまうこともある。

そして、鼻腔で共鳴させる声。鼻腔は骨で囲まれているので、緊張などに左右されない声が出る。声が弱々しい、暗い、などの悩みを持つ人も、鼻腔の発声を意識すると、印象を変えることができるのだそうだ。美顔ボイトレはこの鼻腔で発声できるように鍛えていく。

意識するのは、たった二つの筋肉。

ではどうしたら、鼻腔で響かせる発声ができるのか?ここから、実践的なレッスンが始まる。

「意識するのは、目の奥の筋肉『上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)』と『口角挙筋(こうかくきょきん)』の2つだけです。普段話したり歌ったりする時に目の裏まで空気を送れている実感があるか?もしないなら、これらの筋肉を使えていない。」

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口を突き出して、鼻に当てることができるか?片方ずつ、眉毛をあげることができるか?細かくチェックして、筋肉の場所を意識する。そしてこの筋肉をきちんと使えるよう、トレーニングを行っていく。

まずは口周りの筋肉『口角挙筋』から。頰の筋肉をあげて笑顔を作るのだが、頰の周りに意識を持ってくるだけで、息が上がってくる。

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続いて、目の奥の筋肉『上眼瞼挙筋』を鍛えるトレーニング。目を見開き、眼球をゆっくり左右上下に動かす。一見地味なのだが、しっかりやると結構辛い。

「眉毛も目も開けて鼻呼吸すると、空気が通っていきます。この状態を保って発声するために、しっかり鍛える。それに、目の周りの筋肉を鍛えると、リフトアップにもなるんです」

そう、良い発声を練習していくこの過程こそが、美顔への一歩。筋肉を意識して顔を動かすと、顔のたるみやほうれい線が解消されていき、明るい印象の顔になるのだという。

実践!美顔ボイトレ

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筋肉を存分に動かしたら、いよいよ発声だ。これまで教えてもらった発声の基礎知識と、2つの筋肉を意識しながら発声していく。記事では雰囲気が伝わりづらいので、内容を一部、動画でご紹介する。

声を出す時のポイントは、おでこにシワがよらないよう、しっかり目を開けること。そして頰をあげて、口周りの筋肉を意識しよう。この時、顎関節を動かすほどに顔を大きく開ける必要はない。

顔の動かし方を知り、正しい発声法を実践した2時間のレッスンは、心地いい疲労感があった。ちなみに鳥山さんのレッスンでは、トレーニングの前後で写真も撮ってくれるので、変化に気付けるのが嬉しい。

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実はこうした小さな変化に気づくことが、トレーニングにおいて大切なのだと、鳥山さんは語る。

「トレーニングって正直、催眠術みたいなところがあって。ダメを徹底して教えて、ダメよりはいいかなって思ってもらうのもポイントなんです。トレーニングが続かない人は、完璧を求め過ぎる、すぐ答えを出そうとする人。せっかく来ても、変わらないなって首傾げてしまう方がいるんですが、それだと続かないし効果も得られない。トレーニングは魔法ではないので、少しでも変化があれば良しとする、それが大事」

そういえば鳥山さんはレッスン中も、「変わらなかった、と落ち込むのではなく、1mmでも変わったら喜ぶ!満足する!」と、私たちを励ましていた。

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「ただ、ここに来るのは多くても、3回までにしてください。通わなきゃ良くならない、が今までのボイトレでした。でもそれだともたない。本当にトレーニングで大事なのはいかに日常に落とし込めるか。そのためのポイントをここで学んで、しっかり家で実践してほしい」

発声がこんなにも顔や印象を左右するなんて。そこに気付くことができただけでも、大きな収穫があった。さらに教えてもらったトレーニングは一生モノ。顔や声に悩みを持つ人は、ぜひ一度、このトレーニングを受けてみてほしい。受ける前と後では、きっと何か、変化があるはずだ。

撮影:南方 篤

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