短編小説:主以外はみんなが知ってる忘れもの
電車のなかでよくありそうな風景。約1500字。
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その日はテスト期間中で午後の授業も終わるのが早くて部活もなく、いつもよりずっと早い時間に私は帰路に就いた。乗った電車は人もまばらで空席が多く、駅に停車するたびに春の生暖かい空気が外からふわっと入り込んでくるようだった。
高校の最寄り駅から電車に乗って数駅が過ぎ、明日のテスト勉強でもしようとシートのはじに座っていた私が英単語帳を膝の上に出したときのこと。次の駅に到