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近づく夏 日常は戻らない 三浦春馬さんへの思いが逝く日まで

あるきっかけがあって、鶴柄のアロハシャツを買った。

「鶴」はもちろん、私の愛する鶴丸、つまり小野但馬政次を意識してのことである。

なぜNHK大河ドラマ『おんな城主直虎』が終わって数年たっているこのタイミングでなのかと問われれば、チャンネル銀河で現在放送中であること、高橋一生さん主演『フェイクスピア』を観に行く機会に恵まれたことからの連想だとしか、言いようがない。次に『フェイクスピア』を観に行くときには、鶴と一緒に行きたくなったのだ。

とにかく、買った。メンズのXSサイズの、鶴柄のアロハシャツを。

到着して着てみたら、ジャストフィットなのだが、骨盤周りが引っかかる。男性ものだから当たり前だ。少しお尻周りがスッキリするともうちょっときれいに着られるのではないかと思い、昨年夏から止まってしまっている毎朝の習慣を再開することにした。

コロナ禍で生活がだいぶ変わって、毎朝暗いうちに起きてウォーキングは難しくなったのだけれど、在宅勤務の日なら少し朝時間が取れる。毎日は無理でも、運動不足だし少しずつでも続けていこうと思った。日常を取り戻すべく、日焼け止めを顔と体に塗って、マスクをして、外に出た。

6月はまだ始まったばかり。朝から、強めの日差しがアスファルトを熱しはじめていた。ろくに歩いてもいないのにじっとりと滲んだ汗が、左手の活動量計のリストバンドの下に溜まっていく。

何の気なしに、普段歩いていた道を歩く。iPhoneから流れる音楽は、最近お気に入りの明日海りおさんが歌うJ-POP。横浜アリーナで行われたコンサートのライブ録音版のアルバムを聴きながら、まるで少しだけ身体が浮いたような、浮き立つ感覚を覚える。青く澄んだ空を見上げた。

しばらく歩いていると、すぐに身体が熱を帯びていく。耳から好きな曲の一つ、『青いベンチ』が飛び込んできた。

空に浮かんだ、夏らしい形の雲を眺める。7月が近づいてきていることを感じて、ぼんやりと昨年夏に受けた衝撃を思い出していた矢先だった。明日海りおさんの歌声が、私の心を揺さぶったのは。

この声が枯れるくらいに
君に好きと言えばよかった
会いたくて仕方なかった
どこにいても 何をしてても

身体以上に、目の奥が一気に熱を帯びていく。こぼれそうになる涙を、表情がおかしくなりそうなのを、こらえた。

そもそも、宝塚の舞台に長年立ってきた明日海りおさんは、曲の世界観を歌で表現するのがとてもお上手だ。このコンサートが行われたのは退団間近の2019年。舞台上の表現者として、厚みを増した歌声ということになるだろう。こちらが意識しなくても、勝手に涙腺が強く刺激されてしまう。

夏の到来を感じる暑さと晴れた空から連想した、三浦春馬さんの姿。
明日海りおさんが、さらに追い打ちをかける。

ああ 季節は思ったよりも進んでて
思いをかき消してく
気づかないほど 遠く

この声が枯れるくらいに
君に好きと言えばよかった
会いたくて仕方なかった
どこにいても 何をしてても
この声が枯れるくらいに
君に好きと言えばよかった
もう二度と戻らない恋
痛みだけがちょっと動いた

もう、泣くのは止められなかった。すれ違う人が振り返る。

明日から、ウォーキングするときは『U.S.A』の無限リピートにしようと決めた。そうすれば、きっと、身体が浮き立つ感覚のままでいられるに違いない。

夏が近づいてくる。私は、7月18日をどんな気持ちで迎えるのだろうか。今は想像もつかない。

思いよ 逝きなさい

(中略)

今はこのまま 
いつかこの思いが逝く日まで
空へ昇る日まで

 Dreams Come True 「朝がまた来る」 より

思いが空へ昇るのは、いつのことになるのだろうか。
私にも全然分からない。

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