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明日海りおの「いま」を堪能する 1st Concert ASUMIC LAB参戦記

明日海りおさんの1st Concert「ASUMIC LAB」に行ってきた。
12月9日、10日の2日間。10日はコンサートツアーの千秋楽となる。

誰かのコンサートに行くのは、2年ぶりだ。
以前も書いたけれど、私にとってコンサートは「お祭り」である。

お祭りに参加するために、グッズを買い、
プログラムという名の「明日海りお写真集」を眺め、
ペンライトを準備し、
アクリルスタンドを日々持ち歩いて気持ちを盛り上げた。

緊張した。今までに参加した「お祭り」はすべてミュージシャンのもの。
ミュージカルスターのコンサートは想像がつかない。
明日海さんの宝塚在団中の横浜アリーナコンサートは拝見したけれど、宝塚花組のトップとしてのコンサートと、ソロコンサートは全くの別物だろう。
そもそも、来るのは「明日海りお」を観たい人だけなのだから。

ワクワクしているうちに、あっという間に月日は過ぎていった。

コンセプト

「明日海りおを構築する四つの世界観」を掘り進めていくという思いを込めて、タイトルに「LAB」を入れたという。

私には、コンサートに行く=実験を見に行く/研究の成果を聴きに行くと言っているように感じられた。宝塚のトップスターではなくなって2年。引き出しの増えた「いま」の明日海りおのあれやこれやを総動員したものを見せるよ、と。

で、四つの世界観って何だろう?と思っていると、「クール」「ガーリー」「エッジ」「エレガント」であることが事前に購入したコンサートのプログラムで分かる。おなじみのカッコいい姿の他に、さまざまな面を見せてくれそうだ。

コンサート当日

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お供のアクリルスタンドたち

9日は定時に退社して、真っすぐ東京国際フォーラムホールAへ向かった。

実は、コンサートと言えばさいたまスーパーアリーナとか、武道館とか、東京ドームとかむちゃくちゃ広いところかライブハウスか、という極端なサイズ感の経験しかない。東京国際フォーラムホールAのキャパシティは5000人。経験したことのないサイズだ。
私の席は1階の前から20列目以内・センターブロック。どのくらいの距離感なのだろう。比較的恵まれたところだということは、なんとなくわかっていた。

席についてみると、予想以上に近い。
ドキドキしながら開演を待った。

オープニングは「This Is Me」

鉄格子の向こう側に立つ明日海さんの姿が、シルエットだけ見える。
「I'm not a stranger to the dark〜」と、力強い女性の歌声が聴こえてくる。

歌いながら鉄格子の向こう側のその人が、こちらへ出てくる。
まるで、ここが私の居場所だとゆっくり確かめるかのように。

正直、英語の発音はそれほど上手くない。
だが、すぐにそんなことはどうでも良くなってしまった。
「This Is Me」という曲が持つもの。「自分の居場所で覚悟を持って前に進む。それが私だから」という強い気持ちをパワフルに表現する明日海りおさんに、圧倒されてしまったからだ。

黒のロングジャケットとパンツ、ロングポニーテール姿は、クールな女性の魅力にあふれている。ビジュアル、歌声、お芝居。すべてをいったん「明日海りお」の内側に落とし込み、見せてくれたパフォーマンスに心を鷲掴みにされる。

「クール」パートで魅せたしなやかで女性らしいダンス

続いての曲はBoAさんの「VALENTI」。横浜アリーナのコンサートでも歌った曲で、しなやかで女性らしいダンスを披露する。その次の「ジョバイロ」でも同様だ。男性ダンサー2人を従えて魅せたダンスは、男役時代とは全く違う、オンナの色気にあふれていた。

男性ダンサーにリフトされる明日海さん。またしても「体幹どうなってんの」案件である。明日海さんの踊りの美しさに、思わず目を見張る。

ダンスで魅せたと思ったら、Adoさんの「ギラギラ」ではまた歌で魅せてくれた。難点が一つだけあるとしたら、この曲の世界観を表現し切るには、明日海さんが美しすぎることだろう。コンプレックスを抱えた女性の孤独な恋の歌を、カッコよく歌い上げる。上手い。

「ガーリー」パートで魅せた温かさ

衣装は確かにピンクのフリフリで、ガーリーそのものだ。けれど、ガーリーというより「マザリー」(母性)という方が、しっくりくると感じられた。
明日海さんの視線の先に、温かく、やわらかく包み込みたいと思える存在が見えたような気がしたからである。

最もはっきり感じられたのが、MISIAさんの「アイノカタチ」を歌っているときだ。

MISIAさんが歌い上げると、この曲にはなんだか宇宙規模の愛の大きさを感じる。だが明日海さんが歌う「アイノカタチ」は、まるで私の隣に座って語りかけてくれているように聞こえたのだ。

「あのね 大好きだよ」
何万回も伝えよう
温かく増えた想いは
全部 アイノカタチです

MISIA「アイノカタチ」より

「自分に向かって語りかけている」と聞こえていたのは、私だけではない、と確信している。

「エッジ」パートで魅せた個性派の顔

レーザービームのなかで歌う中森明菜さんの「DESIRE」も素敵だったのだけれど、何と言ってもこのパートで触れたいのは「プレイバックPart2」だ。

男性ダンサー2人を軽くあしらいながら、曲の世界観を歌とダンスと、お芝居ゴコロで表現する。途中の「坊や 一体何を教わってきたの?」に漂う色香で、むせそうになる。

こんな明日海りおさんは、観たことがない。

圧巻のミュージカルパート

どんな曲を披露してくれたのかはこの際、セットリストを見ていただくとしよう。どれも素晴らしかった。ここでは、ご本人にも緊張を強いる曲と言う意味で、「私だけに」について綴っておきたい。

「私だけに」は、ミュージカル『エリザベート』の第一幕で、主人公であるエリザベートがしきたりを押し付けられ、反発し、誰にも束縛されず自由に生きると決意する時に、歌われる曲だ。

コンサート中、明日海さんご本人も言っておられたが、気軽に「歌います」と言える曲ではない。私が観に行った2日間とも、歌う前に水分補給をして、一息ついていた。気合いを入れないと歌える気がしないのだろう。
そもそも『エリザベート』、全体を通して歌が難しい。で、ほぼ全編出ずっぱりのシシィ(エリザベートの愛称)の歌う曲の中でも、「私だけに」はおそらく高難度の部類に入る。

そして、キーが高い。
男役出身で、退団後2年しか経っていない明日海さんにとっては、まだ使い慣れない音域だと思う。『マドモアゼル・モーツァルト』で女性の音域も使っていたので、ある程度行けるとは思いつつも、歌い始めるまではハラハラしていた。


全然、心配いらなかった。心配したことを失礼だったと恥じた。

もちろん、細かく言えば色々あるのだろうけど、気高く意志の強いシシィという役を、きちんと歌唱とお芝居に落とし込んで見せてくれた。
いつか、帝国劇場の舞台にシシィとして立つ明日海さんを観てみたくなる。

千秋楽でゲストの珠城りょうさんとデュエットした、「栄光の日々」で階段を降りる時、少しガニ股になってしまう明日海さんがまた良い。どうしてもミュージカルの曲を披露するときは、役が降りてきてしまうのだろう。

珠城トートと明日海ルドルフの「闇が広がる」では、一瞬にしてトートとルドルフになる2人に震えた。

可愛さ満載 歌って踊るポップスパート

大きめの白いTシャツにガーリーな3色のスカートをはいて元気いっぱいに登場した明日海さん。Little Glee Monsterの「世界はあなたに笑いかけている」がこんなに似合うとは。いやはや、驚いた。

可愛さあふれるJ-POPがとても似合うことを示してくれた、素敵なパートだった。このパートでは本家のサザンオールスターズとは全く違う、「HOTEL PACIFIC」を見せてくれたことに触れておきたい。

「HOTEL PACIFIC」ってこんな曲だったっけ? と思うぐらい、全く別物に仕上がっていた。女性ダンサーとともに軽快に歌って踊っていた。
振りは本家と同じ部分もあったのだけど、明日海さんがやるとあんな風になるとは、思ってもみなかった。

信じられないぐらい可愛くて、信じられないぐらい楽しそうだった。

エレガントなドレスを着て歌うはまさかの・・・

アンコール。
エレガントを絵にかいたような白いタイトなドレスを着て、髪をオールバックにして登場した明日海さんがひとしきり話した後、披露したのは何と…

COMPLEXの「恋をとめないで」である。
若い人はCOMPLEXを知らないと思うので少しだけ説明すると、1988年に結成されて、90年に活動を停止した、布袋寅泰と吉川晃司のユニットだ。

で、この曲は明日海さんの横浜アリーナコンサートの、ラストの曲である。あの服を着て披露するのが「恋をとめないで」だっていうのも、また面白い。見た目は変わっても、心は変わっていないよ、と言いたいのかもしれない。

夜のデイトは危険すぎるからなんて
だからどうした お前の気持ちだろ

そのドアを力いっぱい閉めれば済むことさ
いつまで少女でいる気なのさ

(中略)

家の前で待ってるよ 誰が引き留めても
土曜の夜さ 連れ出してあげる

Don’t stop my love 恋をとめないで
どんな事からも 守ってあげるから
Don’t stop my love 恋をとめないで
いまを正直に 恋をしようよ

COMPLEX「恋をとめないで」より

男前そのものの曲を披露した後、最後に歌うのが「ケ・サラ」。

この曲は、明日海さんが宝塚の退団公演のラスト、黒燕尾姿で歌った曲だとのこと。宝塚時代のファンの皆さんには、思い入れの強い曲らしい。

ともに涙流して 抱き合った熱き友よ
引き裂かれることもあるだろう
明日はわからないさ

ケサラ ケサラ ケサラ
僕たちの人生は
悲しみ痛み笑顔で隠して
歌い続けることさ
(中略)
希望の歌をうたいながら
明日を信じて生きよう

改めてこうして歌詞を眺めてみると、ぐっとくるものがある。
今の時代だからだろうか?

終わりに

ステージの上で「ケ・サラ」を歌い終え、その人は舞台の下手側に移動して会場に礼をした。そして、今度は上手側に移動して、また礼をした。

階段を昇る。途中で振り返る。

その奥に、高く高く続く階段がある。
階段を、昇っていく。もう振り返らない。

「ASUMIC LAB」で見せてくれたのは、どこまでも続く「明日海りおの表現を追求する旅」の現在地。

男役という制約を取っ払ってしまうと、こんなにも豊かに表現の世界を広げられるのだ、この人は!!と心から感動した。
女性としての声が自在に使い分けられるようになりつつあって、カッコよくて、クールで、エッジが効いていて、とても可愛らしくて、美しかった。

そして、このコンサートの構成も見事だ。
ステージこそ自分の生きる場所だ、と高らかに宣言するような「This Is Me」に始まり、さまざまなスキルをつけて厚みを増した「明日海りおの表現」を披露し、「ケ・セラ」で締める。

「明日はわからないさ」だけど、「僕たちの人生は 悲しみ痛み笑顔で隠して 歌い続けることさ」。

舞台に人生を捧げる覚悟を感じた。

この旅の次の目的地は、どこだろうか。
是非、旅の行方をずっと見守らせてほしい。

祭りは、終わってしまった。
ペンライトが、ほんの一瞬だけ、光るブレスレットに見えた。

こんなの。祭りが終わってもさみしく光り続けるやつ。


セットリスト

<COOL>
衣装:黒のパンツ、インは素肌にベスト。
胸元ざっくり開いてる。お腹チラ見せ。
トート閣下っぽい飾りのついたロングジャケット、ロングポニーテール。

This Is Me(The Greatest Showman)
VARENTI (BoA)
ジョバイロ (ポルノグラフィティ)
ギラギラ (Ado)

<GIRLY>
衣装:ピンクのフリフリ(by明日海さんご本人)

Hello, my friend(ユーミン)
STAYIN' ALIVE(JUJU)
タッチ(岩崎良美)
月光(鬼束ちひろ)
いのちの歌(竹内まりや)
長い間(Kiroro)
アイノカタチ(MISIA)

<EDGE>
衣装:赤(というよりバーガンディ)パンツスーツ

DESIRE(中森明菜)
プレイバックPart2(山口百恵)
楓(スピッツ)
銀の龍の背に乗って(中島みゆき)

<ミュージカルパート>
衣装:ブルーワンピ+パンツ

シャルム(『シャルム!』)
私だけに(『エリザベート』)
パパどうして(『マドモアゼル・モーツァルト』)

<ミュージカルパート 千秋楽版(ゲスト:珠城りょうさん)>
SING'IN IN THE RAIN(『雨に唄えば』)珠城さんソロ
栄光の日々(『THE SCARLET PIMPERNEL』)
→明日海さんショーヴラン、珠城さんパーシー
闇が広がる(『エリザベート』)
→明日海さんルドルフ、珠城さんトート
世界の王(『ロミオとジュリエット』)
→ダブルロミオ(べェンヴォーリオ&マーキューシオも)
私だけに(『エリザベート』)明日海さんソロ

<ダンスパート>
衣装:白T(XLサイズ)にガーリーな3色スカート

世界はあなたに笑いかけている(Little Glee Monster)
LA・LA・LA Love Song(久保田利伸)
気分上々↑↑(mihimaru GT)
HOTEL PACIFIC(サザンオールスターズ)

<ELEGANT (アンコール)>
衣装:白いタイトなワンピ セミロングのオールバック

恋をとめないで(COMPLEX)
ケ・サラ

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