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書く練習シリーズ

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文章教室になかなか行けないので、課題の中から書けるものを選んで書いてます。
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#エッセイ

ゼンマイの煮物は記憶のなかに

母の作ったゼンマイの煮物が好きになったのは、目の前でソファにゴロンと寝転ぶ邪魔っけな娘が…

はるまふじ
2週間前
13

HOME THEATRE

JR有楽町駅を出て、日比谷方面へ向かう。 ビックカメラを右に見て横断歩道を渡り、左へ。もう…

はるまふじ
1か月前
8

大切ないちにち

2024年4月26日、わたしは50歳になった。 誕生日プレゼントに夫から仕事用のリュックをもらう…

はるまふじ
2か月前
13

動物のお医者さん

深刻な顔で、「相談があるんです」と彼女は言った。 同棲中の彼氏とのあいだに子どもでもでき…

はるまふじ
2か月前
8

母の温度

2022年大晦日。 もう二度と動かぬ母と向き合っていた。 ほんの1週間前まで温かかった、白くて…

はるまふじ
2か月前
27

流川楓と木暮公延

50回目の誕生日が間近に迫った土曜日、プレゼントは何がいいかと訊かれた。仕事でパソコンを持…

はるまふじ
2か月前
2

令和五年三月某日

体育館に入って真っ先にわたしの脳裏に浮かんだのは、寒い寒い日の記憶。 ストーブにあたりながら壁に貼られた入試問題を眺めていた。あの子は今、この問題と戦っているのか。そう思うと寒さ程度でぐちぐちつぶやいている自分が、なんだか恥ずかしくなった。 あれから、6年。 同じ体育館にわたしは立っている。 入学式の日咲いていた桜は、まだつぼみ。 秋には見事に色づく銀杏並木も、いまは寒々しい。 抜けるような青空の下に掲示された、 「令和四年度 卒業証書授与式」の文字。 楽しい思い出ば

手紙は下準備から

文具店に行くと、つい便箋売り場に寄ってしまう。B5サイズの便箋に一筆箋。彩りが華やかでつい…

はるまふじ
2か月前
2

改訂版 「好きな言葉」

カーテンコール。 終演とともに、薄衣1枚だけ役をまとって出演者が板の上に再び出てくる。演…

はるまふじ
2か月前
6

備忘録 「好きな言葉」

「生きてゆかれてください」 変な日本語だ。使い方として正しいのだろうか? 正しいかどうか…

はるまふじ
2か月前
6

桜を見上げる 記憶は巡る

満開の桜を見上げるたびに、思い出す。 臨月の身体を横たえて、そろそろ寝ようかとぼんやりし…

はるまふじ
2か月前
8

令和元年度の終わりは混乱とともに

元号が令和になって最初の年度末。品川で大学時代の友人と3人、食事をしていた。 仕事が終わ…

はるまふじ
2か月前
2

じぶん語りその2

「Pretty good!」 英会話のレッスンで、調子を訊かれたときにそう返すことがある。 仕事で疲…

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じぶん語りその1 

娘に顔がヘンだよ、と言われることがよくある。 たいてい、目に周囲の映像は映っているけど、脳内に描いたイメージが動き始めて、そちらを追うのに没頭しているときだ。 妄想のなかの人物が動き始めて、そちらに惹かれていると現実世界の自分がおかしくなる。テレビドラマや映画のように長いストーリーにはならない。せいぜい15秒程度のコマーシャルと同じ程度。壮大な物語でもなければ、劇的な出来事でもない。だがこの瞬間は、わたしにとって無くてはならない、大切な時間だ。 仕事でほかの人にお願いしな