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書く練習シリーズ

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文章教室になかなか行けないので、課題の中から書けるものを選んで書いてます。
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記事一覧

ゼンマイの煮物は記憶のなかに

母の作ったゼンマイの煮物が好きになったのは、目の前でソファにゴロンと寝転ぶ邪魔っけな娘が…

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HOME THEATRE

JR有楽町駅を出て、日比谷方面へ向かう。 ビックカメラを右に見て横断歩道を渡り、左へ。もう…

はるまふじ
1か月前
8

似て非なるもの 見下ろすと見下す ミュージカル『王様と私』

「お前は王を敬っていないのか?なぜ私より頭が高い。何人たりとも国王を見下ろしてはならん」…

はるまふじ
1か月前
25

大切ないちにち

2024年4月26日、わたしは50歳になった。 誕生日プレゼントに夫から仕事用のリュックをもらう…

はるまふじ
1か月前
13

動物のお医者さん

深刻な顔で、「相談があるんです」と彼女は言った。 同棲中の彼氏とのあいだに子どもでもでき…

はるまふじ
2か月前
8

母の温度

2022年大晦日。 もう二度と動かぬ母と向き合っていた。 ほんの1週間前まで温かかった、白くて…

はるまふじ
2か月前
25

流川楓と木暮公延

50回目の誕生日が間近に迫った土曜日、プレゼントは何がいいかと訊かれた。仕事でパソコンを持ち歩くことが多いわたしの体を気遣ってか、リュックを買ったらいいんじゃないかと彼は言う。 ショルダーバッグを好むわたしの鞄は、どこへ行くときだって大きめだ。それでもパソコンを入れると他に何も入らないほどパンパンになる。仕事上、あちこちへ行かざるを得なくなってノートPCを持ち歩く羽目になったのだが、これが重い。 毎度毎度通勤のたび、ショルダーバックにパソコンとACアダプタを入れ込んで、片

令和五年三月某日

体育館に入って真っ先にわたしの脳裏に浮かんだのは、寒い寒い日の記憶。 ストーブにあたりな…

はるまふじ
2か月前
3

手紙は下準備から

文具店に行くと、つい便箋売り場に寄ってしまう。B5サイズの便箋に一筆箋。彩りが華やかでつい…

はるまふじ
2か月前
2

改訂版 「好きな言葉」

カーテンコール。 終演とともに、薄衣1枚だけ役をまとって出演者が板の上に再び出てくる。演…

はるまふじ
2か月前
6

備忘録 「好きな言葉」

「生きてゆかれてください」 変な日本語だ。使い方として正しいのだろうか? 正しいかどうか…

はるまふじ
2か月前
6

桜を見上げる 記憶は巡る

満開の桜を見上げるたびに、思い出す。 臨月の身体を横たえて、そろそろ寝ようかとぼんやりし…

はるまふじ
2か月前
6

令和元年度の終わりは混乱とともに

元号が令和になって最初の年度末。品川で大学時代の友人と3人、食事をしていた。 仕事が終わ…

はるまふじ
2か月前
2

感動したこと 日生劇場『カムフロムアウェイ』

身体が、浮き上がった。 ビバリー機長の歌う「Me and the Sky」が、空へといざなう。 ふわりと客席に着陸したわたしの目からこぼれ落ちた涙を、拭くいとまはない。100分1幕のミュージカル『カムフロムアウェイ』は、疾走している。台風が迫る中、機長の感じる緊迫感と年配カップルの離れがたさが一緒に板の上に乗る。 2001年9月11日の同時多発テロでアメリカ領空が封鎖され、カナダにある小さな町ニューファンドランド・ガンダー空港に38機の飛行機が集まった。人口10,000人