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【W杯現地観戦の魅力とは?】20日間のカタール滞在記 次回大会に向けての願い

20日に及ぶカタールでの旅を終え日本に帰国した。1杯1900円もするビールが惜しげもなく飛び交ったドイツ戦勝利の宴からは早、2週間以上が経過したことになる。

1杯1900円のビールを飲み重ねてドヤ顔の🇲🇽サポーター

筆者もサッカーの魅力を伝える仕事に携わっているが、今回は完全にサポーターとして。プライベートで日本戦の全4試合を含む、計13試合をスタジアムで観戦。

結論から言うと、ワールドカップの現地観戦は最高にエキサイティングで面白い。

Jリーグ、学生サッカー、地域リーグ、代表関連と時間を見つけては現地で試合観戦しているが、そのどれとも似つかわない、特別な空間だということは言い切れる。

ワールドカップで見ても、テレビ観戦のみ、現地とテレビ観戦ミックス、現地観戦メインの大会と経験してきたが、現地でのワールドカップ観戦こそが、このイベントの魅力を最も体感できると声を大にして言いたい。

本書は、次回大会、現地で日本の応援をしようと思う方々が一人でも増える事を願い、記す事にする。だって、この楽しさを是非体感して欲しいと思うから。そして、現地で日本代表に直接声援を送り、今回超えられなかった、ベスト8入りを後押しする一員になって欲しいのだ。

次の舞台はアメリカ・カナダ・メキシコの3カ国共催。もう3年半後に迫っている。

ワールドカップ現地観戦ってそんなに楽しいの?

私が感じるワールドカップ現地観戦・最大の魅力。それは世界の多種多様な方々との交流が最高に楽しいということだ。

現地観戦の魅力①
世界のサポーターとの交流

ワールドカップは世界最大級のお祭りだ。前回大会では世界の総人口(4歳以上)の半数以上にあたる35億7200万人がW杯を観戦したとFIFA(国際サッカー連盟)は発表した。中東初開催となった今大会も、GS終了時点で200万人以上が現地で試合を観戦し、テレビ視聴者数は20億人を超えたという。

出場32カ国は勿論、出場を逃した各国のサポーターも集結し、この祭りの盛り上げに一役買う。そこにギスギスした空気など皆無。ユーモア溢れる世界各国の猛者達が、フットボールをつまみにその瞬間をただただ、楽しんでいるのだ。

今回、Metro This wayというボランティアの声が現地で大フィーバーした。

地下鉄はこちらですよ!その誘導をボランティアがあの手、この手でリズムを変えたり周囲との掛け合いにより、盛り上げながら誘導しているだけなのだが、そんなひと時もこの祭典の下では特別な一瞬へと昇華する。

スタジアム周辺は勿論、公共交通機関でもお祭り騒ぎだ。電車で騒ぐなんて!?という声もあって然るべきだと思うが、これは百聞は一見にしかず。

是非、その様子を直接見て味わって欲しい。

また、普段接点がないような人々と交流が持てることも少なくない。こんな方々と密な時間を共に過ごせるのか?といった出会いが往々にしてあるのも、世界から人々が集まる。ワールドカップならではと言えるかもしれない。

今回、印象的だったエピソードを一つ紹介したい。キッカケは先述のドイツ戦の打ち上げ会場だった。

ひょんな事から、トーブ(現地の衣装)を着た方とコミニュケーションをとっていると、現地のあるガス会社のお偉い方だそうだ。色々と話をしつつ、連れの人間が、連絡先を交換し、その日はお別れ。すると、後日、みんなで遊びに来ないか?とのお誘い。一向で指定の場所に向かうと。。。豪華な食事やサプライズの数々。そして、その日同席してくれていた彼の友人を含めて、おもてなしを次から次へ。日本が大好きだからと何から何まで良くして下さっただけでなく、みんなで家に遊びに来ない?との言葉に甘えさせて貰い、貴重で素敵な時間を現地で過ごさせて貰った。

来年or再来年にはカタールでアジアカップの開催が予定されている。きっとまた再会する機会があるはずだ。

現地観戦の魅力②
仲間との時間

仲間と共に過ごす時間もこの祭典の醍醐味の一つと言える。

今回、私自身の例で言うと、大半の時間を20人弱の仲間達とアパートメントを貸し切り、共同生活を送った。
自炊をしたり、バカ話しをしたり、オフ日にはBBQや寿司を皆で食すホームパーティ、他にはアクティビティーに遊びにいったり。

年齢も職業も性別も、サッカーへの関わりもバラバラ。ただただ、日本の勝利を願いカタールに集まった、という共通項をキッカケに共に時間を過ごした。海外アウェイこそ、代表観戦は面白い。私は常々そう思っている。

ホームで日本を応援する人々が集まるのと、海外で応援する人々が集まるのとではその交流機会や交流濃度に大きな差が出ると感じるのだ。

例え、初めての遠征であったとしても不安がる必要は全くない。交流会などが行われる機会も少なくないので、そこから気の合う仲間を探せばいい。

予算はどれくらい必要なのか?と思う方もいるだろう。私の事例で行くと、今回の航空券代が往復で約15万円。滞在延長による便変更で2万円。
チケット代はグループステージだとおよそ、1試合当たり、9000円-3万円程のレンジで分かれている。今回高額、低品質と一部で報道もあった宿代は1泊1万円強で、すこぶる快適な生活を送らせて貰った。(仲間の皆様に大感謝)

ここに食費や雑費代が最低限、掛かってくるので、安い旅行ではないが、その価値以上の経験を出来た。一切の迷いなく、そう言い切れる。


現地観戦の魅力③
日本人である事の誇りを感じる

「俺は日本が好きなんだ」

果たして、この旅路の中で何度、他国の方に声を掛けられたことであろう。

日本の文化が大好き
日本に行って魅了された
かつて日本人に親切にされた

日本にいるだけでは耳にしなかった声かもしれない。

私の想像以上に日本という国は世界の国々から、愛されているんだと感じたのも今回の旅のハイライトだ。地元の良さを上京してから再実感するもと同じ類の感情だろう。

また、自分自身が日本のユニフォームや国旗を見に纏い、「日本!日本!」と海外のスタジアムで声高に叫ぶ瞬間、自分は日本で生まれ、日本で育った事実を再実感する瞬間でもある。

そして、眼下では、日の丸を背負う選手たちが己の全ての力を出し尽くし戦っている。我々が後押しせずに誰が後押しするのだろう?そんな気持ちに強くさせてくれるのも海外での現地観戦の魅力と言えるだろう。


カタールワールドカップ 現地観戦談

〝伝説の夜〟
ドイツ戦とスペイン戦を終え、このような声が漏れ聞こえてきた。

期待と不安が交錯する中、迎えたドイツ戦での逆転劇を振り返ると、逆転のトリガーの一つがスタジアムの雰囲気だと思っている。

序盤は、強豪国・有名選手のスーパープレーを願うスタジアム。大多数がドイツ応援の雰囲気の中、日本は何とか0-1で耐え忍ぶ。

そして、後半に入ると、 冨安健洋、 三笘薫、 浅野拓磨、 堂安律、 南野拓実。途中出場した日本代表戦士が中心となり、鬼気迫る勢いでドイツゴールに迫る。

すると、スタジアムに変化が起きた。

お祭りを楽しむかのごとく、試合そっちのけで、ウェーブに勤しんでいたナチュラル層が身を乗り出し始め、試合に釘付け。ゴール裏を中心に日本の勝利を声高に叫ぶ、輪が徐々にスタジアム中へ伝播する。

そして、その声に導かれたの如く決まった堂安律、浅野拓磨のゴール。

完全にスタジアムの空気が変わった。

〝今日は日本がドイツを食う様を見届けようぜ〟

あの空間には、言葉にせずとも、そんな共通願望が蔓延していた。

その後は〝痛快〟の一言。

スタジアムで応援していると、この感覚に出会える事が極たまにある。

「あっこれは点が入る」「絶対に勝てる」

後押しの総和が限界突破した時、望んだ結果と応援の共鳴が起きえる。

だからこそ、この感覚を体感したことのあるサポーターには一人でも多くスタジアムに来て欲しい。

あの日のスタジアムにはそれがあった。高揚と熱狂に包まれたハリファ国際スタジアム。日本の勝利以外、あり得ない空気の中、結果は然るべき帰結で幕を下ろした。

歴史的偉業ではあるが、奇跡の勝利だとは全く思わなかった。

4日後のコスタリカ戦。あの伝説の一夜に漂った、勝利を確信する雰囲気はこの日のスタジアムには…無い。

コスタリカの狙い通りのカウンター、一閃。
やはり、世界の舞台は甘くはない。身をもって思い知らされる。

絶対的優位な立場から一転、グループステージ突破へ追い込まれた日本。迎えたスペイン戦は勝利のみが自力での道開拓。

SAMURAI BLUEの勝利を願い応援するのみの日本サポーター。

だが、会場のスクリーンにはリアルタイムのグループ順位が映し出され、会場の大部分が一喜一憂する中で行われる難しい雰囲気。

ただただ、目の前の日本勝利を願いありったけの声を送ったが、前半をドイツ戦同様に0-1で粘った。

これは悪くない展開だ。実際に、後半に入るとスタジアムの雰囲気が一変した。開始早々、ハイプレスの連続からボール奪取。堂安律がその左脚を振り抜き、ネットを揺らした瞬間、ドイツ戦をも凌駕する空気が同会場のハリファ国際スタジアム中を包み込む。

〝日本!また強豪チーム食っちまいなよ〟

スタジアムは完全に日本のホームゲームさながらの空気に。

そして、導かれた、優勝候補2チームを退けての首位通過

選手たちのレベルが日本史上、最強のメンバーが揃っているのは大会前から確信していた。実際にピッチの日本代表は何とも頼もしかった。

ただ、同時にあのスタジアムの空気が無ければ結果は違うものになっていたとも思っている。

世界の一線で戦う選手たちが魅せたプレーに、スタジアムが呼応し、必然のごとく結果はついてきたのだ。

改めて、今大会で確信した事は、応援は時にチームの勝敗にも寄与し得るという事。今回はスタジアムの空気が日本の得点を呼び込んだと思っている。

実際に、今大会は、日本を応援して下さる現地や他国のサポーターの方々が実に多い大会だった。試合を重ねるに連れて、日本に肩入れする外国人が増えていった体感が間違いなくある。

試合前にはハチマキやゴミ袋を片手に日本応援をお願いに周る

大会4試合となったクロアチア戦ではメイン、バックとスタジアム全体が試合開始から日本寄りの雰囲気。前田大然のゴール前にはスタジアム一体に、日本のゴールを呼び込む空気があった。

日本代表の選手たちが見せたプレーへの熱狂・共感。同じアジアで開催された仲間意識、現地でサムライブルーのゴミ袋やハチマチを配りながら、日本代表の応援へ巻き込む草の根活動の広がり。日本という国への好印象など様々な要因が絡み合っていると思う。

W杯は周囲のナチュラル層を日本側に巻き込めるか否かが、スタジアムの雰囲気を作るのにとても大事な要素だ。だからこそ、第3国のファンを巻き込むべく、応援歌もシンプルなものを多用していた。現状出来ることはやり切ったという体感があった。

だが、ベスト8に進出したモロッコにはその日本を凌駕する程の、圧倒的なホームの雰囲気があったという。もしかしたら、日本がそれをも超える空気を創れていたら、また違った未来になったかもしれないとも思う。

だからこそ、4年後の大会では、より一層スタジアムを日本の空間にすべく、一人でも多くの日本を応援する方が現地に来て、後押しして欲しい。その輪の広がりが日本の躍進には絶対に不可欠なものだと確信している。


最後に


日本戦勝利の後、街を歩くと、世界各国のサポーターから、この世を救ったヒーローかのごとく賞賛と喝采を浴びた。

日本最高だったな!と。

他方、別の日のヒーローはまた違った国になる。

ワールドカップを現地で観戦すると、フットボールを軸に世界が繋がっている。そんな事を肌身をもって感じる。

ワールドカップは最高のフェスティバルなのである。

費用の捻出、休みの確保、語学の自信の無さ‥行かない理由を探せば行かない理由などいくらでもある。

ただ、一歩踏み出した先には、きっとかけがえのない時間が待っている。

ハリファ国際スタジアムで見届けた4発のゴール
長友佑都がサポーターを煽り倒す様子
Fan Festivalで飲み尽くしたビール
夜のスークワキーフでの喝采
スタジアム中が日本ゴールで包まれる空間

一生忘れられないものになるだろう。

次回のアメリカ・カナダ・メキシコ大会はどんな大会になるのか今から楽しみでならない。

そして、その期間のJリーグ、欧州リーグ、世代別日本代表、アジア予選…

その過程を追いながら、迎えた大会は、より一層、エイサイティングな大会になるはずだ。

次回大会は3年半後。
そのカウントダウンはもう始まっている。
一人でも多くの日本コールが現地に結集する未来を願いたい。

そして、素晴らしい戦いぶりを魅せてくれた選手・チーム関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。

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