桜桃忌
昨日、6月19日は桜桃忌だった。
窓の外の、どんよりと重たく暗い梅雨空を見ていたら、17歳の自分に戻っていくようだった。
半袖の開襟シャツにプリーツスカートの制服、ソックス。
三つ編みの髪。
3階の教室の窓からは、重たく暗い梅雨空が見えていた。
理系のクラスの黒板の六月十九日〇曜日の横に、現国の先生の字で「桜桃忌」と書いてある。
暗い息の詰まる教室の中で、何故かそこだけ、ほんのりと艶めいていた気がした。
太宰治を知らなくて、宮沢賢治の銀河鉄道の夜を読まなくても、数Ⅲや化学式が解ける方が偉くて、そんな時代。そんな教室。
黒板の「桜桃忌」だけが優しくほのかに心に灯った。
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