濱口竜介『寝ても覚めても』 ー流れる女を見つめる物語ー Watching the girl Flow
濱口竜介監督の『ハッピーアワー』(2015)は、重心を失った人物たちが、「揺れる」ことで、それまでとは違う重心を取り戻す、「揺れ」の映画である。物語に差し挟まれる二つの震災、阪神と東日本の大震災は、「揺れ」、すなわち「足場の不安定性」という本作の主題に直結すると、三浦哲哉は言う(『ハッピーアワー論』)。
『寝ても覚めても』(2018)でも、同様のことが言える。本作は、流路を失ったヒロインが、「流れる」ことで、それまでとは違う流路を取り戻す、「流れ」の映画である。物語内に差し挟