ランキング/レーティングシステムと、プレイヤーのモチベーション

私がスマブラ4というゲームで非公式プレイヤーランキングを作ってみて気付いたことを軽くまとめます。主旨としては「ランキング/レーティングのシステムによってプレイヤーのモチベーションが上がったり下がったりするので、ランキングを作る側の人は気をつけましょう」というお話です。タイトルでは「モチベーション」というやや感情寄りの言葉を使っていますが、「プレイヤーが試合に参加するためのインセンティブ」のほうが正確かもしれません。

蓄積型ランキング

ランキングと聞いて多くの人が思い浮かべるのが蓄積型ランキング(勝手に名付けました)だと思います。野球のホームラン王、サッカーの得点王などが最もシンプルな例です。また、テニスの世界ランキングなどでは、大会結果に応じてポイントが得られて、一年間に獲得した合計ポイントでランキングが決まるので、同じく蓄積型です。私が作ったスマブラ4のランキングも、テニスのランキングシステムをベースにできています。

モチベーション(インセンティブ)という観点で言うと、蓄積型ランキングでは特別な事情がない限りより多くの試合に出場することが最適解となるので、プレイヤーに対して常に試合出場のインセンティブを与えらることになります。一方でデメリットとして、結果としてできたランキングが必ずしも実力順にならない可能性があります。例えば、野球で100試合出場して30本のホームランを打ったプレイヤーAと、ケガなどの事情で50試合しか出場できなかったけど20本のホームランを打ったプレイヤーBが居たとすると、本来の実力はプレイヤーBのほうがありそうです。しかし、積み立て式ではホームラン王という称号はプレイヤーAに与えられることになります。

野球では年間試合数が決まっていますが、ゲームのオンライン対戦のように無制限に試合ができる形式だと、「やったもん勝ち」になりがちです。ゲームに割ける時間が多いプレイヤーが露骨に有利になるので、例えばフルタイムで働く勤労者よりも時間に余裕がある学生のほうが有利になる可能性があります。

非蓄積型ランキング

打率、レーティング、段位などの指標で作られるランキングを非蓄積型ランキングと呼ぶことにします(いい名前が思いつきませんでした)。打率(ヒット数/打席数)のようなシンプルな計算方法から、レーティングのようなやや複雑な計算式を用いるものがあります。レーティングの計算方法としてはElo ratingが有名です。スマブラには「世界戦闘力」というレーティングに似た独自の指標がありますが、本来の実力を図る指標としてはいまいち信頼性に欠けるので、ガチ勢に間ではあまり受け入れられていません。そのかわりに、のちょうさんという方が作られた非公式のレーティング戦が人気です。オフラインでは私が作ったプレイヤーランキング、オンラインではスマメイトのランキングが現在の主流となっています。

非蓄積型では、蓄積型にあった「やったもん勝ち」という弱点を克服しています。一方で積み立て式に無かった弱点として「試合に出場しない」という戦略が最適解になる場面があります。実際に、野球では首位打者(打率王)を獲得するためにシーズン終盤に打率が下がることを割けるために試合に出場しない選択をした例があります(ちなみに、イチローが打率ではなく打数にこだわるのもこの理由らしい)。

試合に出場しない選択をしたプレイヤーたちを責める意図はありませんが、盛り上がり、興行という点において非蓄積型の大きなデメリットとなります。ランキングシステム作成においては、非蓄積型の特徴である「負けたら下がる」という性質に注意する必要があります。

シーズン

蓄積型、非蓄積型共通の要素として「シーズン」があります。野球やサッカーなどが分かりやすいですが、メジャーなスポーツは大体1年周期でランキングレースが区切られます。テニスのランキングも1年区切りですが、過去1年の結果から算出されたランキングを毎週更新するシステムなのでシーズンではありません。シーズン制は「シーズン開始時期に0からのスタートになるので新規者が入りやすい」「シーズン終盤のデッドヒートで盛り上がる」等のメリットがあります。ゲームのランキング運営という点で言うと、シーズンがあると運営コストが少しだけ高いです(シーズンとシーズンの間にメンテナンスが必要など)。

それと、シーズン制度を導入すると「各シーズンでランキングが固定されるのでプレイヤーの実績として明示しやすい」というメリットがあります。これは例えば、非シーズン型ランキングで常に1~5位をキープするトッププレイヤーが居たとしても、ランキングが流動的なので実績として言葉にしづらいのに対して、シーズンが区切られていれば「2018年1位」というような分かりやすい実績として残せるという意味です。テニスの錦織圭選手と大坂なおみ選手がトッププレイヤーであることはみなさんご存知かと思いますが、現時点での世界ランキングを把握してる人はそこまで多くないと思います。テニスではランキングの代わりに大会の結果を実績として使うことが多いですね(2018年全米オープン優勝、みたいな)。テニスくらいのメジャーなスポーツであれば、全米オープン優勝と書かれていればトッププレイヤーであることは明白ですが、ゲームにおいては「〇〇カップ優勝」とか言われてもその大会がどれほどの権威をもった大会なのか外からは分かりにくかったりするので固定されたランキングがあると何かと便利です。

ゲームの世界で言うと、買い切りゲームで課金要素が少ないゲームは長く続けてもらうことが売り上げに繋がりにくいのでシーズンが無く、基本プレイ無料で課金によってゲームはプレイヤーに長くプレイしてもらうためにシーズンを導入してる、みたいな印象を受けるんですが実際のところどうでしょう。実際のところ、界隈を盛り上げたいならメリハリを付けるためにシーズンは導入した方がいいかなと思います。

おわりに

ランキングと言っても意外と奥が深いですね。世の中にランキングシステムを作らなければならない人が多くいるとは思えませんが、何かの役に立てればなと。私が作ったランキングの詳細はこちらのTwitterアカウントから辿れます。


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