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2021.8.19 『胎内』、現代への呪いを

演劇人コンクール2021の一次審査(演出プラン等書類審査)に通過し、なんと上演審査に進ませていただいたことが決まってから、早いもので1ヶ月ほど経つ。

正直、超ダメもとで送ったので、メールで通知された時は詐欺かと思った。自分が自分でないような感覚がして、とりあえず半日様子を見た。そして、制作の伊藤さんに報告した。なぜなら、コンクールへの応募を勧めてくれたのが伊藤さんだったからである。

勧めてくれたことに心から感謝しています。ありがとうございます。

とはいえ、勧められたのが締め切りの3日前で、そこから慌てて募集要項を読み、先のことなど何も考えず応募した。12月に『カモメ』が控えており、その稽古は10月終盤から始まる。果たして自分はこの過密スケジュールを乗り切れるのか、応募時は見ないふりをしていたその不安が最初に押し寄せた。

先日、会場である江原河畔劇場へ下見に行かせていただいた。豪雨の日で、新幹線は西へ向かうほど停車の頻度を強め、窓を斜めに流れていた雨水が上から下へ垂直に下るのを眺める時間が増えていった。

この日がとても楽しみだった。僕は空間のイメージから作品を立ち上げる割合が高く、ほとんど、空間があるからそこに人が立ち、それゆえ会話や物語が起こる、という回路をたどってテキストができることがほとんどだ。だから、『胎内』という、三好十郎=他人が吐き出した言葉に当事者性を持てないまま、「空間」を求めて僕は特急列車の席につく。

劇場に入ると、劇場のそばをとどろく円山川が、ロビーの窓外にあった。時間が止まっているような気がした。視界の右から左へ、泥をかきまぜながら、進んでいるようで、いな、それはうねるだけでその場にとどまっているような感覚さえした。

劇場は元役場の建物を生かしながら作られ、天井や柱に、木造のそれを残して立っているのが、客席から見てわかった。

しかし空間が何か語りかけてくることはなかった

そして思い出した、劇場という空間は、「開かれて」いるがゆえ、口を「閉ざして」いたということを。

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エリア51による2020〜2021年演劇企画「KAMOME」。企画・演出の神保による旅の日記(不定期)。チェーホフの名作「かもめ」にのせて…

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