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べた日記(07/06/2020)前妻からのLINE

「人吉」と聞くと、頭の中で女優の、今よりずいぶんお若い松坂慶子さんが「銀ちゃん!!」と叫ぶ。自分にとってはそういう場所だ。それと山深い緑の中を、くま川鉄道が走っている様子を斜め上から見た映像。小夏がヤスと、お義母さんに会いに行くのだ。

明け方頃じとりじとりと降る雨の音で目が覚めた。
眠れない夜をようやく眠り、そして起きた時、大切な人がもういないことや大事な家がもうないのだと、認めなければならない時を想像しようとした。でも想像もつかなかった。ただそれでも雨はじとりじとりと降っていて(こうなってもまだ降るんだ…)と感じるのかもしれないそれだけは、想像できた。

7時に家を出て、チョコレートを取りに自分の社宅に向かった。途上、ニュースで「元気な頃お世話になったことが思い出されて…」と絞った声が聞こえた。家族全員が亡くなられた家の近所の女性だ。女性は「生きておられた頃」と言えないほどに、気持ちがまだ近いのだろうと考えた。「コロナが終わって、気を奮い立たせてさぁ頑張ろうと思っていたのに、今度は自然災害で…」というバス会社営業所の方の声。自分は、どう祈って良いのかも分からない。

料金所を過ぎた直後から渋滞だった。車で通勤する人が増えたと聞いた。
それで世田谷で降りた。全く動かないので、思わずコンパートメントの中の簡易トイレの存在を確認した。もしものために。

社宅について、蛇口で髪を洗っていたらチョコレートが着いた。

明日の打ち合わせのために、直ぐにシステムを設定していたら、前妻さんからテキストメッセージが入った。自分の前妻じゃないけど前妻さんだ。内容はLINEアカウントを作られた、というもので、LINEはどうやって儲かっているのでしょうと質問もされていたので、「広告とスタンプ売上収入じゃないでしょうか」と書いて送る。

前妻さんは不思議な人で、子供たちの学芸会や出し物の時は、こっちの席まで用意してくれた。前妻じゃなければ親切な人だと思ったことだろう。いや。親切な人だ。
ウチの詩人のことを「トイレに良く行くでしょう」と言ったことがあって、そういうことを言って良いのは母親だけで、お義母さんはそんなことは言わないから、ウチの詩人についてそんなことを言った、地球上で唯一の人になってしまった。1/4世紀も前のことだ。こう書く自分はまだムカっとしているのか。だとすると呆れる。

あと、学校に何か持って行く時に、ちらし寿司の上に巻くシソはくるくるっと巻いてから細く切るときれいに切れるですよね、みたいなことを言っておられたこともあった。昨年クリスマスに帰った時に前妻さん家の猫ちゃんを下から撮ったら、猫はある意思を秘めたような顔をしていた。

システム設定はうまく行った。アドミンとして自分が入るのは初めて。
こんなに簡単で良いのか。もちろん大変なのはこの後のデバイス操作だけれど。

ところでウチの詩人ってなんて言えばいいんだ。「ウチの」がなんだか軽くて悪い気もする。「同居」はもっと悪い。