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南カリフォルニア大学で作業療法を学ぶ part4 (プログラム編)

こんにちは!雨の長崎からお届けします,野田です.
前回より間を空けずに更新できたので,一人で喜んでいます.

さて,今回はプログラムの具体的な内容についてお伝えしようと思います.
講義,施設訪問,イベントの3つに分けて解説します.


講義

基本的に1コマあたり60分〜90分で構成されています.僕が気に入った主なコンテンツは以下の通りです.

・Lifestyle Redesign®︎ Treatment Approach:
日常生活における個別的なOTプログラムについて.

・Sensory Integration:
SIこと感覚統合両方の入門.基礎の基礎でした.

・Overview of Health Care in USA:
アメリカの保険制度について.日本の皆保険制度には賛否ありますが,国民全員が医療を低額で受けられることの素晴らしさを実感しました.

・The Sensory Adapted Dental Environment Intervention for Children with Autism Spectrum Disorders:
Dr. CermakによるASD者への歯科治療の研究と取り組みについて.実践と研究が結びついて進んでいて,とても勉強になります.

・Motivational Interview:
対象者をモチベートできるようなインタビュー技法に関する講義.当たり前といえば当たり前ですが,共感ベースの関わりは万国共通なんだな,と実感.

・The Neuroplasticity and Neurorehabilitation Laboratory:
ニューロ系の研究に関する講義.研究分野と近かったのでたくさん質問しました.

Ayresの出身校ということもあって,発達系の講義は充実していました.
特にDr. Cermakの講義はとても貴重でした.

また,作業科学が最も進んでいる大学の一つということもあって,身体障害に対する手技的な講義は少なく,理論や研究に関する紹介が多かった印象です.
同時に,ハンズフリーの臨床についてはたくさん紹介されていました.

恐らく医学モデル的な手技は理学療法との住み分けを考えると紹介しにくかったんだと思います.どちらかというと予防だったり癌リハだったり,日本の作業療法ではイメージされにくいものをメインで取り上げていました.

スライドは事前配布されるので,授業内容や英語に不安がある方は予習しておくと理解が進むかもしれません.一日のスケジュールが終わったら結構時間があるので,翌日のことを勉強する時間は十分にあると思います!

ちなみに講義中はいつ質問しても良くて,特にパレスチナから来ていた子たちが積極的に質問していました.受身的なアジア圏の講義とは違うスタイルでした.

先生方もそのことを理解しているようで,学生の表情を見ながら丁寧にフォローしてくれる方が多かったです.

英語に慣れないうちは1コマ受けるのに集中力を使うので,結構ハードかも(笑)

ちなみに,個人的にはLifestyle Redesignが面白かったです.
http://chan.usc.edu/patient-care/faculty-practice/about

詳しくは割愛しますが,OTが日常生活の専門家として様々な作業機能障害を支援し,well-beingを目指していく,というような方向性です.
予防的介入や,よりよく生きるための支援といった,今後必要とされる領域にOTが手を伸ばしていくきっかけになると期待できます.

高齢者や糖尿病,喫煙,大学生に至るほど対象範囲も広く,それぞれにパンフレットが用意されていました.

僕は病気や障害という段階に至る前の「生活」や「予防」の観点でもOTが活躍できると考えているので,それらを正規のOTプログラムとして研究・実践を行なっているこの取り組みは魅力的に感じられました.


施設訪問

SOTIプログラムでは,ロサンゼルス内の病院や施設にたくさん訪問できます.

インストラクターが「訪問するのはロスでも特にいい場所ばかりだよ」と説明してくれた通り,独自の取り組みが目立つ場所が多かったです.
同時に,日本と変わらないな〜と思う場所もたくさんありました.直接見にいくことで感じられる部分があったので,幅広く見学できてよかったです.

ほんの一部ですが,以下は特に印象深かった施設です.

・Keck Medical Center of USC:
いわゆる大学病院ですね.結構日本と雰囲気似てる!

・SI facilities:
人によって行く場所は違います.Ayres関連の施設に行った人もいたらしい.

・LAUSD school sites:
僕が日本に導入したいと切に願う,小学校でのスクールOT見学.
行政がOTをエリアごとに雇い,複数の学校に日替わりで勤務していました.

・Prototypes:
Community-basedで精神障害に取り組む施設.
利用者さん達と直接お話しできました.

・Century Villages at Cabrillo:
アメリカの社会問題でもある,ホームレスが利用できる施設です.
日常生活や就労のフォローをしてました.

@Century Villages at Cabrillo


イベント

プログラム期間中は,様々なイベントが企画されています.

・ウェルカムパーティー
・アメリカ独立記念日パーティー
・現役OT学生との交流パーティー
(パーティーばっかりな気がするのは気のせいか・・・?)

Village内にて各国の料理を持ち寄ったポットラック

最終日前日の海水浴にて

他の参加者と仲良くなれる機会はとにかくたくさんあります.
序盤は誘われたものに片っ端から参加していましたが,途中から体調と相談するように変えました.1ヶ月の長期戦です.


・ディスカッション
週1くらいで集まって,論文や近況について議論するグループがあります.
めっちゃ仲良くなれます.みんないい人だったな〜・・・


そして,本プログラムの一番の頑張りどころ!
プレゼンテーションです.なんと2回あります.

1. 母国のOTについてプレゼン(出身国が同じメンバーと協働)
2. SOTIプログラムの総まとめプレゼン(1〜3人グループで発表)

まず1つ目.母国のOTについてのプレゼン.

SOTIの参加者は様々な国から集まっています.
本プログラムは国際交流も大きな目的の一つなので,それぞれの国の現状についてお互いに知ろう!という意図で行われるプレゼンです.

出身国は計16カ国,その全ての国の作業療法について発表があるわけです.

これが本当に面白くて,自国の当たり前が他国では全然違うことにもたくさん気づけたし,同時に世界共通で困ってることもあると感じられる機会でもあります.

どの国でもOTとPTのアイデンティティ問題は根深いようです(笑)

僕はもちろん日本のチームで,日本文化と作業の関係性についてプレゼンしました!一人当たり5分くらい時間が割り当てられています.楽しいですよ!

参加者みんなに折り紙をしてもらって,くす玉を作りました.


そして2つ目.まとめのプレゼンです.

個人的にチームを作って,SOTIで感じたことをスライド or ポスターにまとめます.最終日に行われるので,思い出を振り返りつつ感謝を述べる場ですね.

1ヶ月を振り返りながらポスターを作るのは感慨深いものがありました.
作成するプロセスそのものが楽しいです.

予想通り,結構な割合の参加者が泣いてました!笑

たかが1ヶ月,されど1ヶ月.

異国で初対面の人たちと生活を共にするので,思い入れも深い.
みんなと離れるのがとても寂しかったです.


以上です!
プログラムの概要は大体把握していただけたかと思います.

直接見聞きするのは,インターネットで調べたり本で読んだりすることに比べると圧倒的に解像度が高くて,本当に行って来てよかったです.

このプログラムのために1ヶ月時間を作るのは大変だと思いますが,
ぜひ来年も日本から参加される方がいることを願っております!!

次回はプログラム申し込みのプロセスについて書こうと思います.
プログラムの入り口を最後に書くのもおかしな話ですが,困る人が多いと思うので残しておきます.

ではでは〜!

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