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〜フレンチと日本酒のラグジュアリーな出会い〜春霞×てるじい×薬師神シェフ

「日本酒=和食と合わせるもの」という考え方は、今や昔話。
日本酒は幅広い料理に合わせられる懐の深さがあり、さらに最近では味のバリエーションも広がり、日本酒ペアリングの楽しみ方はますます多様化しています。

イタリアン、中華、エスニックなど、正直言って日本酒で合わせられない料理のジャンルは無いのではないかと私は思います。

そんな中、以前"一手間の感動"というテーマでペアリングを教えていただいた日本酒ソムリエてるじいが、フレンチと日本酒のマリアージュイベントをされるということで、今回も参加してきました!!

前回の記事はこちらです。

今回のテーマはズバリ 春霞×フレンチ。

SUGALABOの元ヘッドシェフである薬師神シェフのお料理に合わせて、日本酒ソムリエてるじいが秋田県の銘酒「春霞」をペアリングさせるという、一夜限りの夢のコラボレーション。

今回は一体どんな口福マリアージュに出会えるのでしょうか…。
ドキドキして会場に向かいました!!

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秋田県美郷市で「春霞(はるかすみ)」「栗林(りつりん)」を醸す栗林酒造(くりばやししゅぞう)さんは、秋田県オリジナルの酒造好適米である美郷錦にこだわりを持ち、奥羽山脈の豊富な伏流水で酒造りをされています。
雑味の無い上品な味わいが特徴で、私も大好きな酒蔵さんです。

今回は蔵元杜氏である栗林さんご本人もいらっしゃいました!

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栗林酒造
明治7年(1874年)創業。仙北平野の良質の米と豊富な地下水に恵まれた秋田県美郷町にて、秋田県独自の酒造好適米「美郷錦」を中心に、日本酒「春霞」「栗林」を醸している。
昭和50年頃より純米酒の製造を開始、全国清酒鑑評会で昭和60年に金賞を初受賞、以降は7度の受賞を重ねる。この時期の協会9号系酵母での酒造りは、現在の酒造りの基礎のひとつとなっている。
40年間杜氏を務めた亀山杜氏が平成20年(2008)に引退し、現在は栗林直章氏が代表社員と製造責任者を務めている。

この風格からお分りいただけるかと思うのですが、栗林さんは非常に真面目で実直な性格の持ち主で、酒造りが始まると気が張って夜もまともに眠れないそう。
それだけ神経をすり減らせてお酒を造られているのですね。
春霞の綺麗な味わいは栗林さんの気質そのものが現れているように思えます。

そして、そんな春霞に合わせてお料理を作る薬師神シェフも、まさに春霞にぴったりの洗練された雰囲気。今最も注目されている若手シェフの一人ですが、今回は「春霞に何が寄り添うか」という観点で料理を作られたそうです。

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薬師神 陸 / 料理人 
2008年辻調理師専門学校のフランス料理講師として、後進の育成やテレビ料理監修、雑誌制作等幅広く活躍し5年間務める。
2014年〜予約困難なレストラン『SUGALABO』(東京/神谷町)の立上げに尽力。シェフとして国内外を飛び回り、「日本の素晴らしい食に纏わるコンテンツ」を発掘・シェアし、夜のみレストランとして完全紹介制で料理を振る舞う。
2017年の日本最大の料理コンペティションRED U-35でのGOLD受賞のほか多数受賞。 今夏独立し〝食のリテラシーを磨く〟をコンセプトに、新しい料理人の働き方と”食体験”をクリエイションしている。

そしてもちろん!!
ペアリングを監修するのは日本酒ソムリエてるじい。

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てるじい / 日本酒ソムリエ
28歳の時に日本酒の虜になり、その素晴らしさを広めるために日本酒の世界へ。
大手酒販店である「はせがわ酒店」に5年間勤めたのち、日本酒の名店「荻窪いちべえ」の店長を3年間経験。その後、今や超人気店の「麦酒庵 恵比寿店」を立ち上げから関わられて5年間店長を勤められたという、ザ・日本酒エリート。
麦酒庵時代に日本酒と料理のマリアージュに目覚め、官能評価と科学的分析を基にした相性の研究を重ねる。現在は、これまで培ってきた蔵元や酒販店との信頼関係や、独自の酒スキルを活かして、フリーランスとして活躍。

最初にてるじいの挨拶から会がスタートします。

「春霞のお酒は綺麗すぎるので、正直マリアージュを作るのにはかなり苦戦しました」と本音がポロリ。笑

うむうむ、分ります。
ちょっとお酒にクセや飛び抜けた個性があった方が、料理と合わせた時の変化を生み出しやすいんですよね。お酒そのものが完璧だと、マリアージュの余白が少ないので難しい…。

しかし、何度も試作と試食を繰り返した結果、春霞ならではの繊細なマリアージュが作れたそうです。「口内調味ベースで、お酒と料理をしっかり合わせてください」とのこと。

一方、栗林さんは「お酒のことしか知らないので、ペアリングは全然分りません」と、こちらも正直なコメント。笑

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お酒を造るプロ、料理を作るプロ、そのお酒と料理を組み合わせるプロ。
それぞれの分野のプロのコラボレーションに胸が高鳴ります。

名水百選にも選ばれている六郷湧水群の仕込み水で喉を潤しながら、料理が運ばれてくるの待ちます。
「この水にしてこの酒あり!」と言いたくなるような、とても綺麗な味わい。

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それでは、まずは「春霞 金賞受賞酒 袋吊り 30BY 美郷錦 35% 亀山酵母」で乾杯!

こちらは2018年度の全国新酒鑑評会で金賞を受賞したお酒。
美郷錦を35%まで磨き、袋吊り(もろみを袋に入れて吊るし、圧力をかけずに自然の重力だけで搾る方法)で仕上げた贅沢な逸品ですね。

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スモモを思わせる可愛らしい香りに、春霞らしい綺麗な味わい。
フレンチの食前酒にぴったりで気分が上がります!!

ちなみに、こちらの美郷錦の農家さんは六郷東根の小西嘉之さん。
(裏ラベルには農家さんのお名前も記載されています。)

栗林酒造さんでは、主に山間部の「六郷東根」と平野の「金沢西根」の美郷錦を使い分けており、質・量ともに安定した金沢西根に対して、六郷東根は収量が少ないものの良質な米ができるそうです。

六郷東根の美郷錦
奥羽山脈の麓、山間部の美郷町六郷東根では、山からの冷たい水で米つくりを行っています。収穫量は少ないものの、良質の米ができると古くから言われてきました。この地で平成27年から新たに美郷錦を栽培しているのが、小西嘉之、坂本長広の2名の若い農業者です。ここの美郷錦が「栗林」六郷東根になります。
(栗林酒造HPより)

お米にもしっかりと着目して味わっていきたいですね…!!

そして、いよいよお料理もやってきました!!
最初のマリアージュはこちらです。

栗林 西根 28BY 美郷錦60% 亀山酵母 × 本鮪のタルタル いぶりがっことアプリコット

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先ほどは東根の若手農家さんが作った美郷錦でしたが、こちらは西根のベテラン農家さんが作った美郷錦で醸されたお酒。

金沢西根の美郷錦
秋田の穀倉地帯、仙北平野は東の奥羽山脈、西の鳥海山麓に挟まれた地域です。美郷町金沢西根は、この平野のほぼ中央に位置します。質、量ともに安定した米つくりができると言われており、春霞で用いる美郷錦の多くはここで収穫されます。
(栗林酒造HPより)

28BY(平成28年度醸造)つまり2年半ほど熟成された純米酒ということもあり、香りは控えめでボディがしっかりとしています。少し温度が上がってきてもコクが増して美味しくいただけますね。

そんな栗林に合わせるのは、本鮪のタルタル。
本鮪+いぶりがっこ+アプリコット…
とても常人には思いつかない組み合わせですが、お味やいかに…!?

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…なるほど!
いぶりがっこは非常に細かく刻まれているため、時々コリっとした食感とスモーキーな香りが見え隠れする程度の、ちょうどいい塩梅なのですね。

フレンチは和食以上に食材の切り方が細かく分かれており、みじん切りにも色々な種類(アッシェ、コンカッセなど)があります。なるほど、ここまで細かく切るのはフレンチならではの発想だ!!

そして、ほんのりと効いたドライアプリコットの酸味が全体を軽やかにまとめてくれていて、甘みと香りの要素が見事にお酒と料理の橋渡し役になってくれています。これはお見事。

…しかし、「乾杯で頂いた春霞にスモモの香りのニュアンスがあったので、もしかしたらこっちも合うのではないか!?」と思い合わせてみたところ…

あ、合わない…!!

香りの要素は合うものの、旨味の強い鮪のような食材は、精米歩合35%の袋吊りのような繊細な味わいに完全に勝ってしまいます。その点、精米歩合60%かつ熟成したボディのしっかりとした純米酒は鮪に負けない力強さがあるのですね。

料理とお酒のボリューム感の調和は、ペアリングの土台になる。

いつもこのように考えていますが、改めてその大切さを実感しました…!!
(合わない組み合わせを試してみるのも勉強の一つだと私は考えおり、作り手には失礼と思いながらも敢えて前後の組み合わせを試しす習慣があります…)

さて、それでは次のマリアージュです!!

栗林 東根 28BY 美郷錦60% 亀山酵母(燗酒48℃) × 松茸のオープンサンド プチオニオンのキャラメリゼ

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こちらは先ほどの栗林と基本的なスペックは同じで、田んぼ違いの美郷錦を使用したお酒。栗林酒造さんでは以下のように商品を分類されているそうです。
栗林酒造さんのHPより拝借)

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品種違いならぬ、田んぼ違い。
なんともマニア心をくすぐります…!!

栗林社長曰く「お米の味そのものは微妙な違いですが、東根の美郷錦は蒸した時の仕上がりがふんわりとしていて、手触りが良い」とのこと。
蒸し上がりの状態が良いと、良い麹に仕上がり、ひいては良い醪、良い酒に仕上がりますもんね。

先ほどの西根と似ていながらも、東根の方がより滑らかな味わいに感じます。
48℃のお燗でいただくことで、さらに香り良く、まろやかに味わえます。

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合わせるお料理は、たっぷりの松茸の下にプチオニオンのキャラメリゼが敷かれたオープンサンド。キャラメリゼにはほんのりとシナモンが効いており、松茸と相まってうっとりする香りに包まれます。

「お酒の持つキャラメリゼのような香りに合わせてみました」と薬師神シェフ。

おお、来ました…!!
私が好きな「メイラード反応 合わせ(仮)」です!!

メイラード反応合わせ(仮)とは…
糖とアミノ化合物が反応することにより褐色物質(メラノイジン)が生まれる「メイラード反応(アミノカルボニル反応)」は、あらゆる食品で起こるもので、砂糖をキャラメル状にするキャラメリゼは、まさにメイラード反応そのものを利用した調理法。そして、もちろんお酒も熟成させるとゆっくりとメイラード反応が起きます。このメラノイジン由来の味や香りを合わせることを、私は「メイラード反応合わせ(仮)」と勝手に呼んでいるのです。(もう少し良いネーミングは無いかと悩み中…。)

お酒を一口味わい、追いかけるようにお料理を頂き、ザクザクとした食感を楽しみながら更にお酒を一口頂くと…、最初に松茸の香りが鼻に抜け、そのあとにキャラメリゼの甘みと香り、シナモンの香りが押し寄せ、香りと甘みが幾重にも重なりながらゆっくりと消えていきます…。

松茸、キャラメル、シナモン…松茸、キャラメル、シナモン…。

口福の無限ループにうっとりしながら、次のマリアージュへ。

春霞 白ラベル 純米大吟醸 30BY 美郷錦40% 亀山酵母 × 雲丹のフラン 椎茸のカプチーノと

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春霞のプレミアムシリーズには白と黒があり、こちらは白ラベル。
白と黒は基本的なスペックは同じなのですが、異なるのはズバリ"絞り方"。
乾杯でいただいた黒ラベル(金賞受賞酒)が袋吊りであるのに対して、こちらは圧力をかけて絞られています。

搾り方だけでどれだけ味が変わるかというと…
これがかなり変わるのです…!!

香りは割と似ているのですが、大きく異なるのは、やはり味
袋吊りのように圧力をかけずに搾ると、雑味のない綺麗な部分だけ搾る(もはや搾っていないですが…)ことができるのですが、圧力をかけると、もろみに含まれる様々な成分まで搾ることになるので、旨味や酸味や苦味など様々な味の要素が生まれます。

これを「雑味」と捉えてしまえばそれまでですが、私は雑味の正体は「コク」であると考えています。
「コク」とは曖昧な言葉ですが、つまりは複雑な味の要素が絡まりあって生まれる「味の奥行き」であると私は捉えています。

そして、特に旨味の強い料理に合わせるお酒は、コクがあるものでなければ!!

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そう、雲丹のフランに合わせるお酒なんて、絶対にコクが必要。

いわば「洋風茶碗蒸し」であるフラン。
雲丹がたっぷり乗って、なんともいやらしい見た目です。
プルンとした卵の食感に、口どけの良い雲丹のコクと旨味…!!
ここに椎茸のカプチーノだなんて、にくい組み合わせだ…。

もう、上品ながらもコクのある「春霞 白ラベル」が合わないわけがない。
そして、意外にも雲丹は吟醸香(フルーティーな香り)と相性がよく、白ラベルの持つ吟醸香とも相性抜群。ちょっぴり散らされたスダチの皮が、両者を爽やかにまとめてくれますね。

うぬぬ、とことん考え抜かれたペアリングです。
参りました…。

さて、続く5品目ですが…、先に申し上げておきます。
こちら、今年のベスト3に入る感動マリアージュでした…!!
この感動を思い出しながら、しっかりと食レポしたいと思います。

春霞 湧き水ラベル 30BY 美郷錦55% 亀山酵母 × 北寄貝と3種のトマトのカプレーゼ

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醸造時期の異なる春霞シリーズには「花ラベル(春)」、「田んぼラベル(初夏)」、そしてこちらの「湧き水ラベル(夏)」の3種類があり、その名の通り、六郷の湧き水のような、やわらかくほのかな甘みを表現されています。

湧き水ラベルは私も大好きなお酒。
しかし、「この上品でまろやかな風味をどう言葉で表現すればいいか…」と悩んでいたところ、薬師神シェフから助け船が。

「湧き水ラベルにはミルキーな香りが少しあります。そこで、水牛のモッツァレラチーズと、貝の中でミルキーな風味のある北寄貝の腹わたを残した状態で合わせてみました。」

…そうだ!!ミルキーな香りだ!!

そう言われてみると、このまろやかな風味には、ミルキーさを感じます。
なるほど、お酒の解像度が一気に上がりました…!!

そうと分かればこちらのもの!!
いざ、お料理と合わせてみましょう。

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…まず、お料理単体でものすごく美味しい。
敷かれているスープは、トマトをミキシングしてフィルターにかけ、濾過したコンソメに昆布を浸したものだそう。
他にも湯むきしたミディトマトと、イタリアのサンマルツァーノ種のセミドライトマト。ミディトマトはさっぱり爽やか、セミドライトマトは濃厚な甘みと旨みがあります。北寄貝はモキュッとした食感がいいですね。
ほんと、言われてみるとミルキーな貝だとわかります。

そして、お酒と合わせてみると…

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…………!!!!

お酒を口に含んだ瞬間に、背筋がピーンとなりました。
同時に、会場全体も「ザワ…」と俄かにどよめきます。

これは…、明らかに今までに味わったことのない感動…!!

モッツァレラと北寄貝のクリーミーな味わいにお酒が合わさると、優しいもの同士の組み合わせなのに、不思議とお互いの味がグワッと覚醒したように前面に現れます。お酒も料理も、それぞれ単体で味わうよりも格段に美味しい。

「引き立てあうってこういうことか…」と一人で頷きます。

そして、モッツァレラのミルキーな味わいがお酒との接点になりつつ、トマトの酸味と出会うことで、もう一段階の感動が…。スープに昆布の旨味が効いているので、それが土台となり、しっかりとお酒の味を支えてくれるのですね。

ここまで完成度が高いマリアージュは初めてかもしれません。
気鋭のシェフ、スター蔵元、マリアージュの魔術師の3者が出会うと、これほどディープな感動を生み出すことができるのですね。

と、尊い…!!

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…と感動している私の目の前に、不思議なものがやってきました。
メニューに目をやると、次のお料理の欄には「秋田のきりたんぽ 2種のアプローチで」と書いてある。これは一体…。

「次はきりたんぽです。まずはそのままお召し上がりいただき、次に酒粕とハーブ、生姜パウダーを加えてお召し上がりください。」とのこと。

ほお、面白いではないか。
それでは、まずはそのままいってきましょう!!

春霞 緑ラベル 純米吟醸 30BY 美郷錦 50% KA-4酵母(燗酒48℃) × 秋田のきりたんぽ

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知っているきりたんぽと少し違う、おしゃれな見た目です。
スープを一口いただいてみると…

う、旨い!!!!

鶏の旨味が効いた上品なスープに、モチっと香ばしい銀杏とあきたこまちで作った"ネオきりたんぽ"。キノコの香りと旨味に、セリの風味も最高です。
フレンチのシェフがきりたんぽを作るとこうなるのか…!!
お料理単体であまりにも美味し過ぎて、お酒が来る前に食べきってしまいそうな勢いです。危ない危ない。

それではお酒を頂きましょう。

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「このお酒が美郷錦の出発点であり、春霞の再出発のきっかけになった一本です」と、栗林社長。初めて美郷錦で造った記念すべきお酒が、この「緑ラベル」なのだそうです。そこから春霞は美郷錦をメインにしたお酒になり…、想いの詰まった一本ですね。

そして、薬師神シェフ自身も「春霞の出発点のお酒だからこそ、秋田名物『きりたんぽ』に僕自身もチャレンジしたかった」のだそう。
お酒の造り手と料理の作り手、双方の熱い想いが合致したペアリング。話を聞いただけでもグッときます。

こちらは48℃のお燗で頂きました。

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ほんのりと綺麗な吟醸香に、じわり旨味が広がります。
味のバランスが良く、繊細なきりたんぽのスープにそっと寄り添ってくれますね。
ついつい、お酒を飲む手ときりたんぽを食べる手が止まりません。

しかし、スープは全部食べ切らず、次は「味変」をさせなければ!!
スープに酒粕(春霞の熟成粕とココナッツミルク)を溶いて、ミント、パクチー、生姜パウダーを加えてみると……おお!!
どことなく、エスニックな味わいに。
春霞の酒粕とココナッツミルクは驚くほど相性抜群です。

これに合わせるのは…

春霞 純米大吟醸 29BY 雄町50% KA-4酵母 × 秋田のきりたんぽ エスニックver

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なるほど!!雄町ときましたか!!
29BYということで、1年半ほど熟成しています。

先ほどの繊細なきりたんぽには、上品な美郷錦の緑ラベルを。
酒粕やハーブで味の複雑味がましたエスニックverには、味の濃厚な酒米・雄町の少々熟成したお酒を合わせるということですね。

寒冷な秋田県では雄町の栽培が難しく、岡山県産の雄町を使用。
線の細い美郷錦には無い、温暖な土地ならではの芯の太さがありますね。
ボリューム感はもちろんのこと、パクチー、ミントにもすごく合います!!

いやはや、これぞ劇場型ペアリング…!!
驚きの展開が楽しいですね。

…おや??お肉のいい香りがしてきました。
そろそろメインディッシュです!!

春霞 六号酵母 生 30BY 美郷錦50%(燗酒48℃) × 黒毛和牛 セップ茸 ラヴェンダーの香り

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きました…!!黒毛和牛!!

すぐにでもお肉にかぶりつきたい気持ちを抑えて、まずはお酒から頂きます。

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栗林酒造さんでは、「亀山酵母」という酵母をメインで使っている中、こちらは春霞の中で唯一「きょうかい6号酵母」を使用したお酒。

ちなみに、メインの亀山酵母は、前杜氏の亀山さん(栗林酒造で40年間も杜氏を務めた超ベテランで、80歳を超えても現役で活躍されていたそう)の名前に由来しているそうで、きょうかい9号酵母が原型になっているそう。それらが徐々に蔵に住み着き、変化していった酵母を採取したのが亀山酵母なのだそうです。
「亀山杜氏の置き土産」と言う栗林さんの言葉に温かみを感じます。

そして、きょうかい6号酵母は秋田県発祥の酵母。
寒冷な地域でも活発に発酵する優秀な酵母で、香りは控えめで比較的淡麗な味に仕上がる特徴があります。

9号酵母は華やかな香りを出す酵母ということもあり、亀山酵母を使用した春霞と比べて香りが穏やかに感じます。前半は軽やかで爽やかなのですが、後半に米の繊細な旨みや甘みがだんだんと顔を出してますね。うむむ、美味しい…!!

それでは、お肉と合わせてみましょう。

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この神がかった焼き具合…、さすがはフレンチのトップシェフ!!
お肉は「サガリ」という、横隔膜の赤身肉で、ジューシーながらも脂身が少ないためさっぱりといただけて、爽やかな春霞にバッチリです。

ちなみに、春霞は冷酒で頂いた後に、燗酒で頂きました。
生酒をお燗すると、特有の青々した香りやナッツのような香ばしい香りが生まれ、お肉の焼けた香りによく馴染みますね。口の中が温かい状態になるので、お肉の旨みも引き立ちます。

そして、下に敷いてある白人参のソースのまあ美味しいこと!!
ねっとり濃厚なので、「さては大量に生クリームを使っているな…!?」とシェフに聞いてみたところ、なんと生クリームは不使用だそうです。白人参の濃厚な味を活かせば、生クリーム無しでもこんなに濃厚なソースが作れるのですね…!!
完全に脱帽…。

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しかも、「本当はもうひと塩したいところですが、お酒の繊細な味に合わせて控えめにしました」だなんて、なんてお酒に理解のあるシェフなのでしょう…!!
日本酒の未来は明るいぞ!!

春霞 栗ラベル 30BY 酒こまち50% 亀山酵母 × 洋ナシの軽いコンポテ マルコポーロのジュレ

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そして、最後のメニューはスイーツ。
メニュー名だけ見ると「??」となりますが、詳細は後ほど。

合わせるお酒は、栗林の名前にちなんで酒蔵に植えられている栗をモチーフにした「栗ラベル」シリーズの白。秋田県オリジナルの酒米「酒こまち」のお酒です。

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ラベルのイメージもあってか、ちょっぴり栗のような、甘さを感じる香り。バナナや洋ナシのようにも感じます。香りは非常に綺麗なのですが、「酒こまち」らしい膨らみのある味と適度な酸もあり、絶妙なバランスです。

ああ、これはスイーツに合いそうだなあ。

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洋ナシの軽いコンポテ マルコポーロのジュレ
硬めの洋ナシを赤ワインとスパイスでコンポートし、フランスのシャトリューズ(ハーブのリキュール)と生クリームなどで作ったサバイヨンソース(クリームソース)、そしてアールグレイにチャイのベースとなるハーブを入れたソースがかかっています。

もう、オシャレすぎてなにがなんだか…!!

適度な歯ごたえが残った洋ナシのコンポートは、甘さ控えめでさっぱりとして食べやすく、サバイヨンソースと合わさると濃厚な風味に。そこにアールグレイやハーブの香りが合わさり、なんともラグジュアリーな味わい。
甘みと酸味、そして爽やかさのバランスが、春霞の味のバランスにとてもよく似ており、一体感のあるマリアージュが楽しめました!!

お酒も料理も重たくないので、スイーツまでしっかり食べても、心地よい満腹感。
てるじい、栗林社長、薬師神シェフに拍手!!

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…ふと考えてみると、最近は個性が強い日本酒のインパクトあるペアリングが話題になりやすいこともあって、正統派の純粋に美味しい日本酒とお料理の繊細なペアリングを堪能したのは、久しぶりだったかもしれません。
インパクト優先ではなく、素直に心から「美味しい」と思える贅沢な時間でした。

栗林社長のお話を伺いながら春霞を飲める贅沢。
薬師神シェフの絶品料理を味わえる贅沢。

そして、これほど完成度の高いお酒とお料理を、更に上の次元の美味しさに持っていけるてるじいって、やっぱりすごい…。

そんなてるじいの口福マリアージュのイベントは、今後ますます進化していくようなので、ご興味のある方は是非足を運んでみてくださいね!!

今後のてるじいイベント

12/10火「チーズと日本酒のマリアージュが学べるセミナー&ディナー」
チーズプロフェッショナル(シュバリエ)の木舩奈保さん全面協力の元、要望の多かったチーズと日本酒のマリアージュを学べるセミナーと、口福マリアージュディナーやっちゃいます♪

◎『チーズと日本酒のマリアージュの基礎が学べるスキルアップセミナー』
セミナーでは、チーズの基礎と、チーズ約10種&日本酒約10種の美味しい組み合わせを、プロの解説付きで、味わいながら体験して頂きます♪
"チーズそれぞれに合うお酒は何か"をつかめちゃいます!
初心者からプロまでどんな方でもウェルカムです。
12/10火曜
一部・13〜15時
二部・16〜18時
!開場10分前!
定員・各部10名
会費・6千円 (前金制)
会場・clef 恵比寿

◎『チーズ料理と日本酒の口福マリアージュディナー』
日本酒マリアージュの変態てるじいと、シェフと美容師の二つの顔をもつ宮本氏の考えぬいた一夜限りの感動のマリアージュの世界をご堪能ください!
12/10火曜
時間・19:30〜22:00!開場10分前!
定員・先着20名
会費・7千円 (前金制)
料理・7品
お酒・7品
会場・clef 恵比寿

◎「未来酒店 渋谷パルコ店 にて、てるじい監修の 7種のsake cocktails & 10種の日本酒&おつまみのマリアージュセット がいつでも楽しめます♪」
渋谷パルコ B1 未来酒店

問い合わせ
106gsake@gmail.com
FB・てるじい

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