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東日本大震災とその時の会社の対応 その②

サイゼリアで待機をするが一向に電話が繋がらない。復旧がされない雰囲気が店内に蔓延していた。

もう、売上の報告時間も校了時間もどんどん過ぎていく。

これは、校了だとか売上だとか、もうそんな問題じゃなくて、生活や命に関わる問題になってきた、そう感じた。

さて、どう動こうか。

会社に戻ることがいいのか、
それとも家に帰っていいのか。

会社の指示をもらいたいところだけど、電話が繋がらないんじゃ、何もできない。

と、そんなことを考えたり、一緒にいる人と話したりして数時間、やっと会社と電話が通じた。

「いつまた繋がらなくなるかわからないから端的に。〇〇さんと一緒なの?電車地下鉄が停まってるから会社の車で迎えに行く。待ってて。」

同じ部署のリーダーから電話があった。

お隣の地区を担当するリーダー。
お隣の地区で、同じグループ。

彼は数字は上げるが賛否両論のリーダーだ。

部下のメンタル的なマネージメントは苦手なタイプ。歳は同じくらい。泥くさい営業現場で鍛えられてるから、「やればできるだろ。やるんだよ!」と部下に指示する系のリーダー。

やり方がどうであれ、数字を持ってくるその心意気を営業マンとして尊敬していた。

「連絡網やネット環境が復旧しないから、今日は帰宅すると会社が決定した。だから家の近くまで送るから。」

(車で来てくれるんだ!しかも近くまで送ってくれるなんて。涙が出そう。ありがとう!)

そう思った。

普段なら車で3〜40分で来れるこの浅草になかなか到着せず、数時間かけてやっと来てくれた。

到着して車に乗り込んで、今会社でどうなってるということや、相談の結果こういう流れになったということなどを聞かせてくれた。

私はやっと色々な事が見えてきた事と、とりあえず家に帰れるという安堵で、「本当によかった。ありがとう〜!」とテンション高く言いすぎたのかもしれない。

「あの、田口さんを助けに来たわけじゃないから。〇〇さんが妊婦さんだから来たんだからね。妊婦さんが最優先なんだから。」

はい.....。ごめんなさい...。
調子に乗りすぎたんだなぁと思った。

普段からこの人はキツい言い方だけど、なんだかこたえた。

帯状疱疹になるくらい自分を追い詰めてる自分だったから、この時も自分を相当責めた。

「そんな言い方、しなくてもいいじゃない!」って言えない性格。

ぐさぐさ自分のハートをナイフで刺す性格だった。

調子に乗った自分が悪い、妊婦さんが最優先で助けられて当然、この人は車で私を送り届けてくれてるのになんて私は、私は....。

ぐさぐさ刺し続ける。

その奥に隠れてる本当の気持ちにグッと蓋をする。

嬉しかっただけなのに、私は助けられない対象なの?、私だって心細いのに.....。

車で送ってもらっている途中、地下鉄の銀座線が走り始めたという情報が入り、二人とも銀座で降ろしてもらうことになった。

妊婦さんと二人で銀座の地下鉄に降りた。
妊婦さんは旦那さんと待ち合わせるということで、銀座駅に待機することになった。

旦那さんと無事落ち合えるまで私も一緒に待った。無事旦那さんと落ち合えたので、私は一人地下鉄で最寄りの駅まで帰った。

お家に帰ってテレビをつけると信じられない映像が何度も繰り返されている。

大きな津波が人や車や家を飲み込んでいる。
いとも簡単に飲み込んでいる。

そして首都圏では帰宅困難者が大勢いて、みんな歩いて家に帰っている。タクシーも何時間待ちな状態。

こんな光景、見たことない。
こんな体験をしたことがないし、想像もできなかった。

東京の方はまだいい方なんだ。
東北の方たちのことを思うと.....何とも言えない。

土日は、もちろんその地震による影響に関する最新情報でメディアはもちきりだった。

家族が津波で流される。
好きな人が津波で流される。

なんだそれ.....。
そんな悲惨なストーリーが本当にあるの?.....。
愛しあってるのに。
そんなことが起こってしまうのか.....。

想像をしていなかった。
想像ができなかった。
こんな事態は。

たしかにあの地震の時、私自身も死ぬかもしれないと思った。「死」をリアルに感じた瞬間だった。

発電所も地震の被害にあったため、電気を極力控えようという運びになった。

電車も間引き運転で走るようになった。
一瞬にして生活が変わった。

明日の出勤はどうなるのだろう。
今後の営業活動はどうしていくんだろう。

私たちが売っているのは求人広告。
こんな最中に求人なんて考えるのか?

都内でも被害に遭われたお店、企業はあるわけで、みんな復旧作業に勤しんでいる。

「明日は通常通り出勤。」

そう、連絡が来た。

通常通りなんだ。
電車に乗れるのかな。
間引き運転をしてるので、1時間に走る本数を減らしている。

月曜日。
少し早めに出て最寄りの地下鉄の駅に潜る。

改札に辿り着くまでに長蛇の列。
改札をくぐり抜けてもぎゅうぎゅうの人だかり。
駅員さんが交通整理をしてくれてるので混乱することはなかったけど、電車に乗るまでかなりの時間を要した。

やっと会社に着く。

上司が少し神妙な面持ち。

「首都圏事業部で話し合った結果、通常通り営業をするし、通常通り数字を追う。数字は落とすな。訪問が出来なければ今日は顧客に電話をしろ。」

ちょっと待って。
明らかに世の中は求人どころではない。
その指示が最善だとは思わない。

いや、待て、その前に。
私たちへ、心配の言葉はないのか。

家族は大丈夫だったのか、何か被害に合わなかった、とか。

あの日、あの夜、みんなはどうしてたんだろう。

そんな話もできないの....?

死ぬほどこわい思いをしたんだよ?
一人暮らしで家族と同居してない社員もいるんだよ?

心細かったんだよ。

毎日一緒にいるのは会社の人間なんだよ。
家族くらい時間を共にしてるのに。
そんな指示をする前に、かける言葉はないのかい.....。

愕然とした。
きっと上司も上からの命令だ。
上司が神妙な面持ちなのは、上司も会社の対応が不服だからだ。

しょうがないんだ上が決めたことだから、と言わんばかりの不服そうな表情。

そこに心がなかった。

ひとりひとりはいい人たち。
大好きな人たち。
上司だって、そのまた上司も。

だけどこの会社には勇気がなかった。
数字を度外視して、社員を守る勇気が。

こんな状況でも「働け」としか声をかけられない、そんな心の会社だったのだ。

来月から新しい部署に行く。
コールセンター業務でアルバイトをマネージメントする仕事をする。

自分の部署だけは、自分だけは心を忘れないで仕事をしようと思った。

この会社に心底がっかりした3月14日(月)朝だった。

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