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32.雲を抜ける瞬間、波を超える瞬間

飛行機で、雷雨の激しい中上昇を続けると、分厚い雲に突き当たります。

その荒天を粘りに粘って抜けると、晴天が広がっています。雲の上に、雲はないのです。

サーフィンをしたことがあります。

パドル、といって手で一生懸命に漕いで進むのですが、波に何度も戻されては進み、戻されては進を繰り返しています。

しかし、ある一定の場所まで行くと、あんなにも高かった波が収まって、波はあるのですが押したり引いたりする波ではなくなります。

そこはまるで別の空間のように、突然静かになるのです。


静謐な空間は、だいたいこのような激しい気象や波の先にある。

人生も同じようなものだよ、と学んできました。

進めば進むほど状況は悪くなっているように思う。

本当に前に進んでいるのか不安になる。

ゴールがどこなのか見えず、何につながっているのかわからなくなる。

そんなときを抜けると、急に突き抜けるときがやってくる、と。

成功は、そうした大変な時期の先にあるのだと。

「大変」な時期は、「大きく変わる」時期だと。

そう信じて進んだ者が、その境地にたどり着くのです。


もうやめておけよ、一生懸命漕いでも無駄だよ、それが将来の何につながるのさ……。

いろんな声が聞こえてきます。

ただその声の主は、たどり着いていない者の声です。

「もう少しだ!」

サーフィンを教えてくださった方が、波の向こうで手を挙げて大声で呼んでくれました。

その姿を見て、声を聴いて、僕はまた少しだけ前進する。

この波が消える海が想像できませんでした。

いつまでも押し寄せてくるんじゃないかと思っていました。

でもそれは、今の僕が見える範囲の、ちっぽけな世界にすぎませんでした。

翌日筋肉痛確定の腕が、ゆっくりと動きを止めます。


じっと身を委ねると、そこは波というより、揺らぎ。

海の上に、ただ漂っている感覚。

波がなくなりました。

そのときに見えた海が、とても広かったのを覚えています。

2月の海なのに、とても綺麗に見えたのを覚えています。

波を超えた瞬間。

また、雲を抜けた瞬間。

そこに広がる世界で、あなたは何を見ますか?

僕は進み続けます。

本当にありがたいことに、先を見ると、人がいます。
もう少しだ、と背中を押してくれる存在の方がいます。

その先人たちを道標に、僕は今日も少しでも前に、上に、進むのです。

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