ララへ！1-サイレント・ネオ-boy meets girl-
「仕方ないな……まあ、俺もララに野暮用があるし、少しの間だけ付き合ってやるか。 だけど、言っとくぜ。もう、やっかいごとはごめんだからな」
ムサシが念を押すのだが、喜ぶサシャは拍手をしている。
「ムサシもいっしょ、ムサシもいっしょ！」
こうして一行はララに向かうことになったのだった。
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やるべきことが決まったからには、すぐに出発すべきだ。
ぐずぐずしているとリムリの役人がやってきて面倒になるのは明らかだったからだ。
早速ムサシは村の入り口にとめてあるトレーラーをとりに向かった。
オジャム達は身支度を早々に整えると、ゴサク達に別れの挨拶をするために玄関の前に集まった。
オネはまずテディ・Dを抱きしめると、
「テディ・D。あんた色々抱えているみたいだけれども、あなたは一人じゃないのよ。悩んだ時はいつでもここをたずねておいで。ここをあなたの故郷だと思ってね」
と言った。
「オネさん、ありがとう」
テディ・Dは久々に感じる人のぬくもりに体も心も温かくなった。次にオネはサシャを抱きしめた。
「サシャ、この家のことを忘れないでね。そして、ララに帰ったらおじいちゃんに優しくしてあげるんだよ。そして、サシャは好き嫌いせず何でも食べて、今より元気に育ってね」
「うん、さーたんはぜったいにわすれないよ。また、すぐにあそびにくるよ」
ララに行けば容易に会えないことをわかっていないサシャは、明日にでも会いに来れるとばかり思っている。
最後にオネはオジャムを抱きしめた。
「オジャム、サシャを頼んだよ。それに、お前はずいぶん成長したよ。もっと自分に自信を持つんだよ」
「はい、ありがとうございます。絶対にサシャを無事にララに連れて行って、きっとここに戻ってきます」
オジャムは力強く言った。
オネと子供たちがお別れを言う間、ゴサクは後ろを向いて鼻をすすっていた。しかし、向き直るといつものゴサク親方の姿になっていた。
「ったくお前たちのおかげで、とんでもねえめにあった。もうこりごりだべ。お前たちがやっといなくなってせいせいするさ」
「ゴサクのおじたん…」
サシャが真に受けて、途端にさびしそうな顔になった。
すると、ゴサクはサシャの頭を優しくなでて言った。
「まあ、たまにはサシャ、戻ってきて、元気な顔を見せてくれよ。なーに、二度と会えなくなるんじゃないんだ。しみったれた別れはよそうぜ。オジャム、サシャを頼んだぞ。まあ、おっかあは最後の別れになるかもしれんが…」
これを聞いてカチンときたオネがゴサクの頭をはたいた。
「ゴサク、まだまだ、オラは死ぬ予定でねえぞ。さあ、とっととお前は働きにでもいかねえか！」
と叱咤したものだから、みんなは笑顔になった。
こうしてオネとゴサクと別れをすませた3人は、ムサシと落ち合う予定の東の原っぱに向かったのだった。
ゴサクの家から丘を降るさなか、後ろを振り向くとオネもゴサクもずっと手を振って、いつまでも家に戻るそぶりはみせなかった。
「ゴサクさん、オネさん、ありがとう。決して2人の事をわすれないわ！」
胸いっぱいにせまるものがあった、テディ・Dは思わず叫んだ。
振り返るたび2人の姿は小さくなっていった。しかし、いつまでもいつまでも二人並んで、子供たちが去っていくのを見守っていた。
オジャムもサシャもテディ・Dも心からゴサクの家に来れて良かったと思った。
サイレント・ネオ-boy meets girl-（ララへ！/先行配信中）
BGM
-登場人物-
テディ・D：ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム：お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ：誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…！？
ムサシ：地球（テラ）・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機墜としを達成、英雄認定及びスーパーエースの称号を得た。地球のＣＡリーグにも参加している人気パイロットでもある。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。
ソック：ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。
シャギ：極悪非道の仮面騎士と呼ばれる男。若いころは、義侠を持ち黄金のシャギと呼ばれていた。青年時代に地元の若者たちと悪党を結成、砂漠地帯で暴れまわったが、ゲンバ提督の娘に手を出したことで怒りをかってしまう。顔を切り刻まれ、腕と足を切り落とされたあげく、投獄された。しかし、復活後は人が代ったように残酷になり、シャギ党を結成して、ついにはカイバの提督の座を強奪するに至った。
ムドー：月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。ダークブルーのパンツァーを愛機としており、精鋭の青備え５０機を率いる。
マギー教授（おねえ）とみなみちゃん（アイドル）：一年前に地球（テラ）から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。
かつてスーパーエースだったマギーは戦闘での怪我のため、現役を引退して士官学校で教授をしている。裏の顔はおねえである。
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