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サシャの秘密11-サイレント・ネオ-boy meets girl-

「そうかのう…そうであるならば、どんなにうれしいことであろうか。
サシャはどこぞで生きておるのか…砂漠の砂嵐で苦しんでおらんか、腹をすかせておらんか、夜露はしのげておるのか…ああ、どうか、サシャをお助けくだされ!」

痛々しいほどに弱っているゲンバ・オーウェンを目にした兵士の中には、すっかり見損なう者も少なくなかった。

-レイラの企み-

そんな弱弱しい老人を見舞うためやってきたある女性は、わずかに開いたドアの隙間から中をのぞいていた。
そして、タイミングは今とばかりに、わざとらしくかけこむように入ってきた。

「叔父様、御病気になったということで、急いでかけつけてきましたわ!」

その女性はゲンバの姪であるレイラ・オーウェンだった。
栗色の髪を頭の上で団子型に結い上げ、やや太っている30代の女である。
レイラは早口で、おおげさに身振り手振りをまじえて話し始めた。

「ああ、なんていうことでしょう。あれほど元気だった叔父様がこんな姿になるなんて!? 私は今でもまったく信じられませんわ。ええ、そうですとも。叔父様にはいつまでも元気でいらしてほしかったのですもの!」
「レイラや、こんなわしのためにわざわざ見舞いに来てくれたか、そうか、本当にありがたいことだ」
「そんなことは当り前ですわ。確かに私の父親と、叔父様は犬猿の仲でしたわ。そのせいで、娘の私もずいぶん、ひどい目にあったものです。
しかし、私と叔父様は血がつながった親族なのですよ。過去のことなど、すっかり忘れてしまいましたわ」

これを聞くと、家臣のリッチモンドもジョセフも驚いたことに、ゲンバは目に涙をためていた。

つづく…

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