砂漠の陣10-サイレント・ネオ-boy meets girl-
「ほう、それも一興でござるな。それならそれで、首と体が離れぬように今夜はじっくりと策でも錬るといたしましょう。はっはっは…」
ガスズはそういうと、高笑いしながら去って行った。
「きゃつは頭がおかしいのか…それとも、まれにみる大物なのか…」
ムドーはその後ろ姿を愕然としながら見つめていた。
10
その夜も更けたころ、ムドーが寝つきもわるく寝酒でもあおろうとベットから出た時だった。ムドーの個室をたずねる者があった。参謀のマーバイムである。
常にシャギの横に控えるこのマーバイムもガスズの行動の真意がわからずに、気に留めていたのだ。
「夜分遅くに申し訳ござらぬ」
「いや、私も寝つき悪く、寝酒でもあおろうかと思って起きたところでござる」
「それは良かった。お口に合うかわかりませぬが、ラム酒で一献と思い持参しました」
「いや、戦場暮らしの私はどんな安酒でも大歓迎でござる。さあ、お入りくだされ」
二人は窓側にある丸テーブルに向かい合って座ると、早速酒を飲み始めた。
「して、マーバイム殿、いったい何用で来られたのでござるか?」
早速、ムドーはグラスになみなみと注がれた酒を一気に飲み干してからたずねた。
「いや、あのガスズとかいう若者のことについてでござる。いやはや、あの大言壮語、あきれるばかりでござる。シャギ様がお怒りになるのも仕方ございませぬ」
「マーバイム殿も、さきほどのガスズ殿の言葉、全く信頼されとおられるのか?」
「私ばかりではござらん。あの場にいた誰もが驚き呆れ果てているところでござる。ムドー殿は違うとでも申されるのか?」
「いや…私は…」
ムドーはグラスに入った二杯目のラム酒をうまそうに飲み干すと、少し考えてから言った。
「私とてあの若者が何を考えているのか真意を測りかねてござる。150機が守る3砦に 一人で向かうなど虎穴に飛び込むようなもの。しかし、若くしてあの余裕、 ただの者とも思われぬ」
「ムドー殿は買いかぶられておるのではござらぬか? 若気の至りということもござりましょう」
「そう言いながらも、眠れずにマーバイム殿も来られたと言うことは、何か気になってござるのであろう」
ムドーは手酌でラム酒を自らのグラスにつぎながら言った。
サイレント・ネオ-boy meets girl-(砂漠の陣/先行配信中)
BGM
-登場人物-
テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?
ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機墜としを達成、英雄認定及びスーパーエースの称号を得た。地球のCAリーグにも参加している人気パイロットでもある。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。
ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。
シャギ:極悪非道の仮面騎士と呼ばれる男。若いころは、義侠を持ち黄金のシャギと呼ばれていた。青年時代に地元の若者たちと悪党を結成、砂漠地帯で暴れまわったが、ゲンバ提督の娘に手を出したことで怒りをかってしまう。顔を切り刻まれ、腕と足を切り落とされたあげく、投獄された。しかし、復活後は人が変わったように残酷になり、シャギ党を結成して、ついにはカイバの提督の座を強奪するに至った。
ムドー:月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。ダークブルーのパンツァーを愛機としており、精鋭の青備え50機を率いる。
ガスズ:ムサシのライバル。CAリーグでは常にムサシと同時に昇級しており、何度か土をつけている。黒いCAヤシャをあやつる。唯我独尊を地で行く男。
マギー教授(おねえ)とみなみちゃん(アイドル):一年前に地球(テラ)から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。
かつてスーパーエースだったマギーは戦闘での怪我のため、現役を引退して士官学校で教授をしている。裏の顔はおねえである。
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