砂漠の陣13-サイレント・ネオ-boy meets girl-
「されど、戦に勝てばすべて罪に問われないというのが乱世における不文律でござる」
「というと…?」
ムドーはグラスごしにラーカイムに鋭い視線を送った。
「今の話私の胸三寸におさめることもできまする。私もあの若者が何をするか、ちと興味がござりまする」
「ならば、このムドー、カスズに協力してみましょう」
ムドーとラーカイムは話をまとめると盃を合わせた。
こうしてある日の夜が更けて行った。
13
次の日… シャギ党の諸将たちが砂漠基地の前に集結していた。今日出陣するガスズを見送るためである。
しかし、日が真上にのぼろうとしていると言うのに、一向に姿を現さない。
外に出向く時、シャギは玉座をみこしのように二本の柱をつけてそれぞれ4つのはしを2人ずつ、合計8人の大男にかつがせていた。
市民たちはこの姿を見て、仮面の王様の悪い戯れ、悪趣味に輝く神輿にのるお山の大将と陰口を叩いていた。
シャギはこの外仕様の玉座神輿に腰かけ、苛立ちながらガスズが現れるであろう基地の入口を見つめていた。
「遅い、遅い、いったいあの若造は何をしておるのじゃ!? いざ出陣の段になり、怖気づいているのではあるまいな!?」
するとガスズの様子を見に行かせた、下士官が駆け戻ってきた。
「シャギ様大変です。ガスズ殿のお部屋はもぬけのから。ガレージも探しましたが、姿ありませぬ」
これを聞くと、仮面の下でシャギは苦虫をかみつぶした表情で吐き捨てた。
「ふん、いざとなったらしっぽを巻いて逃げだしたか……やはり、予想通りただ口先ばかりの…」
だが、シャギがすべてを言い終わる寸前だった。
「俺は逃げも隠れもせぬ!」
砂漠基地の鉄門がゴゴゴとと音をたてて開くと、一騎のCAが姿を現した。
全身を黒塗りにしたそのCAこそ、ガスズの専用機ヤシャである。全長は平均より若干低い18.15mで、目を除くありとあらゆる部分がブラックカラーで統一されていた。その異様ないでたちに、シャギ党の面々は言葉を失った。
「昨夜は飲みすぎて日がすっかりのぼってしまったが、このガスズ、いざ出陣いたそう!」
「ふん、口ばかり達者の若造が、泣きわめいて逃げ帰る姿、容易に想像がつくわ!」
シャギは吐き捨てたが、その言葉はヤシャに乗るガスズには届かなかった。ヤシャはうなりをあげてスピードを上げると、真上にある太陽の光をうけて、ボディを黒光りさせながら出陣したのだ。この時、シャギ党の面々にムドーがいないことに気付いているのは、参謀ラーカイムばかりだった。
サイレント・ネオ-boy meets girl-(砂漠の陣/先行配信中)
BGM
-登場人物-
テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?
ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機墜としを達成、英雄認定及びスーパーエースの称号を得た。地球のCAリーグにも参加している人気パイロットでもある。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。
ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。
シャギ:極悪非道の仮面騎士と呼ばれる男。若いころは、義侠を持ち黄金のシャギと呼ばれていた。青年時代に地元の若者たちと悪党を結成、砂漠地帯で暴れまわったが、ゲンバ提督の娘に手を出したことで怒りをかってしまう。顔を切り刻まれ、腕と足を切り落とされたあげく、投獄された。しかし、復活後は人が変わったように残酷になり、シャギ党を結成して、ついにはカイバの提督の座を強奪するに至った。
ムドー:月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。ダークブルーのパンツァーを愛機としており、精鋭の青備え50機を率いる。
ガスズ:ムサシのライバル。CAリーグでは常にムサシと同時に昇級しており、何度か土をつけている。黒いCAヤシャをあやつる。唯我独尊を地で行く男。
マギー教授(おねえ)とみなみちゃん(アイドル):一年前に地球(テラ)から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。
かつてスーパーエースだったマギーは戦闘での怪我のため、現役を引退して士官学校で教授をしている。裏の顔はおねえである。
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