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騒動6-サイレント・ネオ-boy meets girl-

こうして全員がそろっての最後の食事が始まった。 最後とわかると不思議なもので、他愛のない話に終始した。オジャムとサシャが突然現れた夜のことや、テディ・Dとゴサクがいがみあったこと、村での生活のことなど、ほんの数ヶ月の事だが、色々な思い出話に花が咲いた。

すっかりみんながお腹いっぱいになると、オネが入れてくれたほうじ茶を飲みながら、 オジャムは意を決して大事なことを口にした。

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「あの、今後の事なんですが…」
「そうだべなあ…」
ゴサクは冷蔵庫から缶ビールを持ってくると、グラスに注いで一気に飲み干すと、難しい顔をして言った。
「どうしたらいいんだべか…オラにはかいもく、見当もつかん」
「そうだべな……何でも、もうすぐリムリから役人が来るって話だべ。 そこで、お役人にサシャの事を話すのが良いと思うが…」
オネはお茶をすすっている。
「それはどうかな…」
しかし、ムサシが横やりをいれた。
「俺は月歌に来てから色々な都市をまわってきた。どうも、リムリっていうのは評判があまりよくない都市のようだぜ」
すると、テディ・Dも身を乗り出して同調した。
「私もそう思うわ。リムリの市民はともかく、上の連中は最低で信用できないわ! 特に今、一番力があるっていうヒュースケンスという人は、最低な奴よ!」
「ど、どうしたのさ、ムサシ君もテディ・Dも……リムリの役人にお願いして、サシャをララまで連れて行ってもらうことに反対なのかい?」
オジャムがおどろいていった。

現在、リムリはわずか7歳のリムリ7世が提督としておさめていた。リムリは北は北閥やシャギがいるカイバ、南はムーンキングダムにはさまれる弱小都市だ。一方でその土地は肥沃で農耕が盛ん、文化芸術も発展している水と芸術の都と呼ばれており、権力者に常に狙われる文化都市でもあった。今はシャローンの治めるムーンキングダムを盟主とあおぐ属国となっている。領土はせまく、兵は弱かった。さらに、幼いリムリ7世に提督がつとまるわけもなく、親族が権力をあやつっていた。賄賂政治も横行しており、政治腐敗がひろがっていたのだ。
そんな中でもヒュースケンスというリムリ一族の娘婿がおり、著しい野心を抱いて様々な企みをしているのだった。風のうわさではヒュースケンスは、敵対しているはずの北閥やシャギ党ともかかわりがあるとさえ言われていたのだ。

サイレント・ネオ-boy meets girl-(騒動/先行配信中)

BGM

-登場人物-

テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?

ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機落としを達成、スーパーエースに認定された。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。

ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。

シャギ:極悪非道の仮面騎士と呼ばれる男。若いころは、義侠を持ち黄金のシャギと呼ばれていた。青年時代に地元の若者たちと悪党を結成、砂漠地帯で暴れまわったが、ゲンバ提督の娘に手を出したことで怒りをかってしまう。顔を切り刻まれ、腕と足を切り落とされたあげく、投獄された。しかし、復活後は人が代ったように残酷になり、シャギ党を結成して、ついにはカイバの提督の座を強奪するに至った。

ムドー:月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。ダークブルーのパンツァーを愛機としており、精鋭の青備え50機を率いる。

マギー教授(おねえ)とみなみちゃん(アイドル):一年前に地球(テラ)から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。
かつてスーパーエースだったマギーは戦闘での怪我のため、現役を引退して士官学校で教授をしている。裏の顔はおねえである。

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