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西域で神かくし多発・当局が巡回強化-週刊ムーン・ウィークス-サイレント ネオ-

月歌西域で10歳~18歳の子供が行方不明になる事件が多発していると当局は発表した。
主に被害に遭っている地域は、辺境都市ララ、水の都リムリ、西の砂漠地帯の村々である。
特に砂漠地帯の村での被害が大きく、行方不明になった子供の数は200人を超えると発表された。

砂漠では妖精が悪さをして、子供をさらっていくという寓話がある。
また、神かくしにあったのではないかと、一部の年長者は考えていると取材でわかった。
砂漠地区を管轄するララ、カイバ、リムリの各都市では、軍人の巡回を強化する方針を固めている。
しかし、西域砂漠は広大であるため、どこまで抑止できるか効果を疑問視する専門家も多い。
特に砂漠地帯の村は治安も悪く、軍人が常駐していない場所も多い。
また、砂漠を本拠とする盗賊団なども多く、各村での自治での治安向上が課題となっている。

市民の90%以上が、群雄割拠から各都市での戦争が続く現状をなげき、治安向上のために各都市の提督は全力を尽くすべきだと考えていると、当社の電話調査で応えている。

カイバの報道官は「これは決して見逃してはいけない事件です」と遺憾の意を表明した。
「シャギ新提督はこの状況に対し、非常に憤りを感じていると話しています。カイバでの被害は報告されていませんが、カイバが管轄する砂漠の村で被害が出ています。
シャギ提督は自分が管轄する地域で、子供が行方不明になることは決して見逃さない。仮に人さらいが関わっているならば、1人残らず捕まえて処刑すると強い決意を述べられています」
と語った。

ララの報道官は「確かに子供が行方不明になっているのは事実です」と事件を認めている。
「しかし、ララでの行方不明の数は、巷で言われているような人数ではありません。少数です」
とも答えた。
「ともかく、このような状況をゲンバ・オーウェン提督が見逃すことはありません。提督はララ及び砂漠地帯を巡回する兵士を、今後一年で2倍に増やすと発表しています」
と毅然とした対応をすると述べている。
「一部報道ではオーウェン提督の孫が公的な行事に姿を現すことがなくなり、行方不明になっている疑いが浮上しているとありますが…?」という記者の質問に対しては、
「それに関してはノーコメントです。提督は家族のことについて言及することはいっさいありません」
と提督の子女誘拐に関して、肯定も否定もしなかった。
ただし、報道官は「仮に提督のお孫さんが誘拐されたなら、国中で大騒ぎとなっているでしょう。ご存じの通り、提督はお孫さんを非常にかわいがっています。きっと、全軍を派遣してでも探し出すでしょうね。噂というのはやっかいなものです」とも付け加えている。

このように子供が行方不明になっていることに厳しい措置を取ることを表明している2都市。
その2都市と比べると、温度差があったのがリムリの報道官だ。
「確かにリムリでは100人を超す子供がここ一年で行方不明になったと報告されています。
しかし、この数字は例年と比べてもそれほど大きな差ではありません。もちろん、子供の行方不明に関して、当局も大きな問題と考えています。
捜査願いが出た事件に関しては、捜査官を増やすなど対応をすることを検討しています」
と、他都市に比べて多くの行方不明者を出しいるリムリの報道官は話している。
「対応が少し生ぬるいのでは?」という記者の質問に対しては、
「そうは思いません。残念ながらリムリは大きな都市ではありません。リソースが限られているのです。
宗主国であるムーンキングダムにも援助の要請をしています。キングダムのシャローン閣下は心を痛め、軍人の派遣を前向きに検討していただいております」
このような会見の中、あるフリーの記者は「ムーンキングダムとリムリの国境地帯で、多くの子供が運ばれているのを村人が目撃していると話しているそうですが、確認しているのか」と突っ込んだ質問をしている。
報道官は「そのようなことは、当局では確認していません。しかし、国境地帯の治安向上のため、軍人の巡回を増やしています。仮にそのようなことがあれば、報告があるはずです」
と語るにとどまった。

このように多くの都市を巻き込む「神かくし事件」。
行方不明になった子供が1人でも多く発見されることを祈るばかりだ。

虹倉さんが実際にこの文章を朗読しています。

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