透明な涙
喉の奥が、熱くぎゅうと縮こまる。
その感覚がなによりも不快で、私は泣くことが嫌いだった。
鼻で息をするのが苦しく、嘔吐くように口から空気を取り込む。
その度にヒッ、と情けない声が漏れてしまうのが恥ずかしかった。
誰も聞いちゃいないけれど。
美しい玉のような涙を、綺麗に流す女にはなれなかった。
誰も拭ってはくれない、流れっぱなしの涙を可哀想に思う。ああ、私が美しい女であれば、優しい指先に掬われていただろうに。
私の目から生まれてしまったばかり、その行先は安売りされていたティッシュペーパーか、私のカサついた手の甲だ。
愛も同情も生まない透明な涙は、無精卵のようだった。
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