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剣客商売第9巻 第7話 剣の命脈

 志村又四郎は、金子道場の十傑の一人。
 死病を得て寝ついている。
 その朝。今際の望みは『大治郎との真剣勝負』と自覚した又四郎は、大治郎宅をめざして家を抜け出した。
 又四郎は、金子道場近くの湯島天神を参詣した(最期か・・)。又四郎が以前懲らしめた浪人らが姿を見つけ、尾行を開始する。

 今まで作ったものは「目次」記事でチェックいただけると嬉しいです。
 ではでは。机上ツアーにお付き合いいただけますよう。


地図(画像)

志村又四郎は大治郎に会いに ➀志村屋敷ー②③④⑤⑥-⑦ー⑧鯉屋
大治郎は、小兵衛宅から友之助の見舞い、小兵衛宅へ報告の後、帰宅
怪しい浪人2人は、③湯島天神で又四郎を発見・尾行、⑧鯉屋前で待伏

地図データ

本文抜書の『51)』等は、文庫本のページ数です。
切絵図出典:国会図書館デジタルコレクション:感謝申し上げます。

歩く人。

1.又四郎
2.大治郎
3.浪人2人(鼻無し・耳無し)

歩く人・もうちょっと詳しく

1.志村又四郎(愛宕下の屋敷):父は、志村又右衛門為康。八百石、弟・小三郎(妾腹の子十一歳)

 師は金子孫十郎信任(のぶとう)。又四郎は金子道場の十傑の一人。
 金子は三冬の師であり、小兵衛とも昵懇。大治郎も年に2・3回訪問して剣話を聞く。
 その関係で又四郎は大治郎と試合・後、師が酒席を設けてくれ、剣友になった。そのあと、病に倒れ今に至る。
 今回、死を覚悟、大治郎に真剣の試合を申し込むべく歩く

2.大治郎(橋場の道場):父・小兵衛(鐘ヶ淵の隠宅)に小兵衛の弟子の植村友之助の見舞いを頼まれ、歩く
 植村友之助は一時命が危ういほどの病にかかり道場を退いた。小兵衛は、自分が遺贈された湯島天神下・同朋町の屋敷に住まわせ管理を頼んでいる。
 小兵衛は風邪をひいて、隠宅から動けない設定。

3.耳無浪人・鼻無浪人の二人組(湯島天神スタート):1年前、湯島天神近くの木立に、気を失った娘を運び込もうとしているところを、又四郎に見とがめられ、懲らしめられた(耳・鼻)。執念深く探し・狙っている。

或る日(コース)

1.志村又四郎
280)今日の未明に➀愛宕下の屋敷をぬけ出し、②芝口一丁目の、早朝から店を開けている飯屋に立ち寄り、熱い味噌汁で飯を二椀。
 ③湯島天神から④上野の山下へ出るには、男坂か女坂を下がるのが便利で、男坂は急な階段。女坂はゆるやかにまわって下る。
 女坂へかかった又四郎は、そこで塗笠をかぶったが、その直前に又四郎の横顔を見て、はっと足をとめた二人づれの浪人があった。

湯島天神。女坂・男坂

287)志村又四郎は⑤上野から浅草へ向かう大通りを、あくまでも静やかに歩む。
 ⑥東本願寺の境内をぬけ、裏門から浅草の広小路へ出ようとする直前に、秋山大治郎が本願寺裏門前を通り過ぎた。
 その差は、いまの30秒ほどではなかったろうか・・・。
288)又四郎が裏門を出たとき、大治郎の後姿は、左側に連なる寺々の塀外に見えていたのだ。

 こうして志村又四郎が⑦大治郎宅へ姿をあらわしたのは、昼下がりになってからだ。
288)訪ねて来た又四郎を迎えて、三冬が目をみはった。
 <大治郎の不在>
「また、日暮れごろにお訪ねいたす」
 丘を下って行った。
 <その後を二人の浪人が尾行>
290)志村又四郎は橋場の⑧船宿〔鯉屋〕へ(ここで、又四郎の動きを一時中断して大治郎へ・・・尚、鯉屋付近では、引き続き、二人の浪人が又四郎が出てくるのを見張っている・・)

2.秋山大治郎
276)⑦浅草・橋場の秋山大治郎宅へ、おはるがあらわれ
「へえ、どこかへ、お使いに行ってもらいたいらしいのですよう」
 おはるとともに⑨隠宅へ。小兵衛は風邪で臥せっている
 この日、大治郎は田沼屋敷の稽古日ではなかった。
 隠宅へ行くと、昨日、⑩北大門町の文蔵が、向島へ用足しに来たついでに寄ったもので『⑪湯島天神下の同朋町へ寄ってみましたら、植村先生が寝込んでおいでになりました』と告げたという。
 ⑪湯島天神下の同朋町にある亡き浅野幸右衛門の旧宅には、植村友之助が下男の為七と共に暮らしている。
「すまぬが大治郎、友之助の様子を見て来てくれまいか」
280)「帰りに、また寄らせていただきます」
280)ちょうどそのころ・・・。
 志村又四郎が、③湯島天神の境内へ姿をあらわしている。
287)秋山大治郎が⑥本願寺裏門前を通りすぎた。

 その直後、志村又四郎は本願寺裏門から浅草広小路へでた。
 その差は、いまの30秒ほどではなかったろうか・・・。
 又四郎が裏門を出たとき、大治郎の後姿は、左側に連なる寺々の塀外に見えていたのだ。

志村又四郎とのすれ違い

290)秋山大治郎が⑪下谷・同朋町の浅野旧宅へ着いたとき、町医者の診察が終わったところ
 大治郎が⑨隠宅へもどって来たのは八ツ半をまわっていたろう。
 おはるが舟を出し、・・
293)大治郎を乗せ、おはるが繰る小舟が大川をわたりつつあるとき、志村又四郎は船宿の2階でうとうとと微睡んでいた。
296)⑧鯉屋の舟着きへ舟を寄せると、老船頭があいさつを寄こした。
298)お峰に見送られて、秋山大治郎が二歩、三歩と外へ踏み出した、その瞬間であった。
 夕闇を切り裂いて疾ってきた一条の矢が、大治郎の胸元へ襲いかかった。  
 大治郎は矢を切り払い、道をへだてた向こうにうごめく人影へ疾風のごとく迫った。
299)「に・逃げろ」
 鼻無し浪人がわめいた。
300)裏手の木立を斜め横に走りぬけ、小川のほとりの道に出たとき、このあたりの地形をわきまえつくしている秋山大治郎が迂回して駆けあらわれ、二人の前へ立ちふさがった。←大治郎・2浪人を撃退。
304)<いつまでも出てこない志村又四郎を心配して鯉屋の女将が2階へ行く、目覚めた又四郎が聞く>
「いま何刻じゃ?」
「六ツをまわりましてございますが」
 <又四郎は吐血してくずおれる・・大治郎の名を呼び遺言する>
 志村又四郎は息絶えていた。
 船宿からの急報を受け、大治郎と三冬が駆けつけた。
 明け方になって志村家から、用人や家来たちが、遺体を引き取りに来た。



時系列

 本文通り

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