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フリーランスの老後の備えの話。

「人と違う生き方はそれなりにしんどいぞ。誰のせいにもできないからね。」月島雫の父

フリーランスの老後を考える

 この記事では、フリーランスの老後資金について論じます。この記事の結論は、「フリーランスの場合、『老後2000万円問題』は、厚生年金の分を単純計算すると『老後6000万円問題』になる」ということです。
 このことについて、①フリーランスと親世代のサラリーマンの条件の違い、②フリーランスの老後に必要な額の具体的な試算、③フリーランスがどう老後資産を作るか の三点から検討します。


はじめに

 
 こんにちは、ハルヒスキーと申します。

 私は成人向け漫画を描きながら、Youtubeで配信しています。

 Youtubeでフリーランスの老後資金についての話題を取り扱いました。
 より詳しく・正確な情報にしたいと思い、noteで記事にします。
 (私は、フィナンシャルプランナーなどではなく、ただの成人向け同人作家なので、その点はご容赦ください。)

 この記事で伝えたいことは、主に三つです。
 一つ目は、「フリーランスは、自分の親世代のような感覚で自分の老後を考えてはいけない」こと。
 二つ目は、「フリーランスは、サラリーマンよりはるかに多くの老後資金を必要とする」こと。
 三つ目は、「フリーランスが十分な老後資金を作るためには、おそらく、何らかの運用が必要になる」ことです。

 ただし、これらはそれぞれの方の条件・状況によって大きく変わりますので、その点はご留意お願いします。


サラリーマンの親と、フリーランスの自分


親と同じような老後は送れない

 「老後」について考える時、どれぐらい具体的に、正確にイメージできるでしょうか。おそらく、多くの人は、「老後」について漠然としたイメージを持つ場合、「自分の親」をイメージするのではないでしょうか。

 ですが、特にフリーランスにとってそれは危険なことだと思います。いくつかの面で、フリーランスの現役世代は、親世代と同じような老後は送れないからです。
 その条件の違いを認識しておかないと、自分の老後資金の形成に、とんでもない失敗をしてしまう可能性があります。

親世代の条件

 まずは親世代の条件を考えてみます。
 ざっくりと、以下のような条件になると思います。

・サラリーマン(固定的)
・退職金あり
・国民年金+厚生年金
・持ち家※
・デフレ下
・超低金利

 ※「持ち家」の部分ですが、たとえば、2022年の統計では、65歳以上の持ち家率は86%で、「老後2000万円問題」で有名になった金融庁のレポートも、「住宅ローンを完済した持ち家がある」ことが計算の前提になっています。

 特に、デフレの条件下で、親世代にとって最適解のマインドは、「あぶないから投資には手を出すな」「コツコツ貯金して銀行に老後資金を作れ」「安定した職を得て定年まで勤めあげろ」というものだったと思います。

フリーランスの条件

 これに対して、これからフリーランスはどうかというと…

・フリーランス(流動的)
・退職金なし
・国民年金のみ
・賃貸※
・インフレ下
・金利上昇

 ※フリーランスは住宅ローンが組みにくい上、今後、金利上昇で住宅ローン金利が上がり、住宅ローンで持ち家を持つことは難しくなっていくと思われます。

 多くの点で異なっています。特に、「厚生年金の有無」「退職金の有無」「持ち家の有無」は大きいと思います。老後、家賃負担が大きく関わってきます。

 このように、大きく条件が変わる結果、「親世代のような老後」を、そのままフリーランスの現役世代が送るのは難しいと思われますし、お金に関して親のアドバイスはあまり役に立たない、ということになります。

 特に、物価が年2%ずつ上昇していくようなインフレ下にあっては、「コツコツ貯金して銀行に老後資金を作れ」というような、親世代で最適化されたマインドが通用しなくなってしまいます。

考え方の変化が必要?


「老後2000万円問題」はフリーランスだといくら?

「老後2000万円問題」の試算


 いわゆる「老後2000万円問題」として話題になったのは、2019年のこちらのレポートです。

 簡単に言えば、

①老後、夫婦の月の収入を約21万円とする。
②老後、夫婦の月の支出を約26.5万円とする。
③差額は毎月、5.5万円の赤字となる。
④30年(360ヶ月)で、1980万円の赤字となる。これは、金融資産から補填しなければならない。
⑤老後、約2000万円の資産が必要である。

という計算になります。住居支出の額が月1.3万円となっていることから、持ち家を想定します。


 「自分はそんなに使わない」「結婚できない」「30年も生きない」「持ち家を持てない」など、個々に様々な条件があると思いますが、とりあえずこれを、そのままフリーランスの状況に当てはめてみます。

厚生年金を差し引いた場合

 フリーランスの方も様々だと思いますが、まず、「厚生年金がゼロ」の場合を考えます。(実際は、厚生年金に相当するような、国民年金基金などを行っている方が多いと思いますが、一旦ここでは、それを抜きに試算してみます。
 上の試算では、年金額は約19.2万円と想定されていました。国民年金の月あたりの給付額を6.8万円とすると、厚生年金が12.4万円と想定されていることがわかります。
 すなわち、赤字額の5.5万円に12.4万円を足して、毎月、17.9万円の赤字になります。

 360ヶ月×17.9万円=6444万円 になります。

 単純に、「厚生年金をもらえない」という条件だけで考えると※、「(サラリーマンの)老後2000万円問題」は、「フリーランスの老後6000万円問題」と等価であることになります。

 ※繰り返しますが、実際には、「国民年金基金」という制度があり、厚生年金の代替をフリーランスが自分で作ることができます。ただし、それはきちんと制度を理解し、フリーランスが自身で利用する必要があります。


お手上げ

家賃を加算した場合

 次に、この条件に、月額7万円の家賃を考慮するとどうなるでしょうか。

 サラリーマンに比べて、フリーランスが住宅ローンを組み、持ち家を持つというのはハードルが高くなります。
 また、今後、住宅ローン金利が上がって行けば、それはますます難しくなっていくでしょう。
 そのため、フリーランスは生涯、賃貸で暮らす可能性は十分あると思います。

 仮に、毎月家賃で、6万円の支払いがあるとして、先ほどの試算に加えます。

 360ヶ月×(17.9万円+6万円)=8604万円

 この条件であれば、「老後8600万円問題」になります。
 (もちろん、住宅ローンを払っていない分、資産に余力が生まれるはずではあるのですが。)

インフレを考慮した場合

 最後に、インフレについてです。
 今後、日本はデフレを抜け、インフレになっていく、と予想されています。

 仮に、「年率2%インフレ」が起きた場合、「現在の6000万円」は、30年後にはいくらになっているでしょうか?
 1億870万円です

 もちろん、インフレに合わせて、フリーランスも報酬の引き上げや商品の値上げを行っていくことで、収入を増やすことができるでしょう。
 しかし、単純に銀行に預金した場合、金利による増加はほぼ期待できません。そのため、インフレによって大きく価値を損なってしまう可能性があります。

そんな額不可能だろ、という場合は、支出を抑え、長く働く。

 この試算で前提とされている条件を変える必要があります。

 後述しますが、国民年金基金など、フリーランスや自営業者向けに、厚生年金に相当する公的年金の仕組みがあります。それらを利用することで、厚生年金の不足分を補うことができます。

 他には例えば、毎月の出費額を減らすことが重要になってきます。試算では、毎月26.5万円の支出が想定されていました。これを、毎月20.5万円まで切り詰めるとします。

 その場合、必要な額は、
 360ヶ月×(17.9万円-6万円)=4284万円になります。

 ただし、賃貸(家賃6万円)の場合は、その額が行ってこいするだけなので…
 360ヶ月×17.9万円=6444万円

です。

 注意するべきことは、そもそもこれらは65歳から95歳までの30年間、勤労収入をほとんど得ないで生活する場合の試算です。
 65歳を過ぎても働く場合、大きく条件が変わってきます。
 というよりも、多くの人が(サラリーマン含めて)65歳を過ぎても、何らかの形で働いて収入をえざるを得ない、と思います。フリーランスであればなおさらです。


 日本人の平均寿命から考えて、95歳より早くなくなることもあるでしょう。ただし、平均寿命は伸び続けていますが…。 

ずっと元気に働きたい


フリーランスがどう老後資産を作るか


 一般的に、何も対策しなければ、フリーランスは、サラリーマンに比べ、多くの老後資金を必要とすることが分かったかと思います。
 その差を生んでいるのは、主に厚生年金の有無です。また、持ち家を持てない場合で、家賃支出も、老後の支出で大きな要素になります。
 そして、デフレが続いた親の世代と比較すると、インフレについても想定する必要があります。

 これらを踏まえて、フリーランスはどう老後資金を作っていくべきでしょうか?

どうしたものか

稼ぐ・貯める・増やす


 抽象的に言えば、「稼ぐ・貯める・増やす」ということになるかと思います
 まず、フリーランスとしての収入を上げるのが、「稼ぐ」。
 次に、支出を抑え、制度などを用いて節約・節税をするのが、「貯める」。
 そして、その貯めた資産を、運用によってさらに大きくすることが「増やす(殖やす)」です。

 まず、「稼ぐ」ことが重要です。「貯める」といっても、元の収入が小さければ、いかに節約したとて、貯められる額は大きくなりません。
 蛇口から出る水の量が少なすぎれば、いつまで経ってもお風呂にお湯はたまりません。
 ですので、まずは収入を大きくすることが大切です。

 また、「増やす」ためには、原資を「貯める」必要があります。いかに稼いでいても、それをすぐに使い切ってしまっていては、いつまでも貯蓄は増えません。

 そして、「貯める」だけで「増やす」ことをしないと、インフレ下では資産価値が目減りしていきます。

 すなわち、「稼ぐ」「貯める」「増やす」に取り組み、上手く組み合わせていく必要があります。


年金を増やす制度

 年金で賄う老後資金について考える場合、フリーランスでも利用できる制度がいくつかあります
 代表的なものは、国民年金基金です。これは、フリーランスや自営業者向けに、厚生年金の代替として存在します。
 また、確定拠出年金(iDeCo)は、公的年金にプラスして、私的年金を作る制度です。

 先の試算では、国民年金基金などを含めていませんでしたので、丸々、厚生年金分をマイナスとして計算していました。

 しかし実際には、フリーランスや自営業者は、国民年金基金などで、厚生年金相当の年金を作るのが一般的ではないかと思います。

 これらの制度は節税効果を持つものも多いです。


退職金を積み立てる制度

 サラリーマンにおける退職金に相当する積立制度として、小規模企業共済が存在します。月最大7万円の掛け金で積み立て、事業を解消した時に退職金として受け取れます。

 掛け金は全額が経費(所得控除)となり、一括受け取り時は退職所得の扱いになるため、退職金控除が受けられます。

 これらの制度を利用し、節税をしつつ、厚生年金や退職金に相当するものを作っていくのが、フリーランスでは非常に重要になります


自分の厚生年金と退職金を作る

資産運用

 インフレ下では、ただ銀行に預金するだけでは、物価上昇に伴い、次第に資産の価値が目減りしていくことになります。

 そのため、フリーランスであっても、貯めた資産を運用によって増やしていくことを考える必要があると思います。
 ただし、運用で増やす可能性を取ることは、減らす可能性を取ることでもあります。
 老後資金という、決して失敗することができないお金に対して、フリーランスが過度に大きなリスクをとることは危険だと私は思っています。

 とはいえ、インフレ下で毎年2%の物価上昇がある場合、銀行にただ預けることも、資産を目減りさせることと同義です。
 あくまでも「稼ぐ」「貯める」を主眼としつつ、インフレによって減っていく資産を守る、という意識で「増やす」を行うのが良いのではないでしょうか。


 仮に、30年間、積立のみで老後資金6000万円を作る場合、毎月いくら積立すればいいでしょうか。
 Chat-GPT4に計算してもらいました。

ありがとうChat-GPT4


 年率5%で30年間運用する場合、月々7.2万円の積み立て
 年率3%で30年間運用する場合、月々10.3万円の積み立て

 
 となります。これらについては、NISAでの運用が想定できると思います。

こんなうまくいったら苦労しないわけだが


 「実際に30年間も続けられるか」「年率5%も得られるか」「30年間、毎月7万円も続くか」「29年目、5000万以上運用してるけど、最後の年に一気に下落して半分になったらどうするん?」など、色々ツッコミどころはあると思いますが、単純にシミュレーションの結果ととらえてください。

 現実には、貯金もなしに数千万も年率5%の投資商品で運用し続けるというのは、非常に非現実的だと思いますので、こんな風に、老後資金を全額運用で賄うようなことは不可能だと思います。
 何より、国民年金基金や小規模企業共済など、運用ではない部分で年金や退職金を補いつつ、余力資金の中で運用していく、というのが重要だと思います。


まとめ

・フリーランスは、親世代のサラリーマンとは大きく条件が違うので、そのことを認識する。
・フリーランス向けの制度を用いて、厚生年金や退職金の代替とすることで節税しつつギャップを埋めると良い。
・「稼ぐ」「貯める」「増やす」を意識的に行う。特に、資産運用で、インフレについていく必要性がある。

以上です。


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