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「風の時代」と瑛人の「香水」

 2020年12月21日、昨日の夕方、木星と土星が大接近しました。太陽系で最大の惑星である木星と2番目に大きい土星がほぼ重なって見えるのは1623年7月17日以来、約400年ぶりなのだそうです。とても珍しい天文現象で「グレート・コンジャンクション(Great conjunction)」と呼ばれています。直訳すると「素晴らしい接続」です。

 ちょうど1週間前、私が仕事をしている某媒体の編集会議で、40代の編集部長から「12月22日から世界は『風の時代』に入るらしいよ。Sさん(私のこと)、占いに詳しかったよね?」と振られて驚きました。その媒体はバリバリのビジネス情報紙です。占星術なんてまったく興味のなさそうな部長が「グレート・コンジャンクション」なんて言葉を口にするほど、話題になっているんだなと。

 占星術は門外漢なので、私には「グレート・コンジャンクション」について語る資格はありません。検索すれば著名な先生方がたくさん記事を書かれていますので、そちらをお読みいただくとして、自分なりに感じた「風の時代」の予兆についてお話したいと思います。

「香水」を初めて聴いたのはYouTubeのカバーでだった

 今年、時代の変化を顕著に感じたのは、歌手・瑛人さんの「香水」のヒットでした。「香水」はメジャーなレコード会社を通してではなく、配信限定シングルとしてリリースされました。1年くらい注目されなかったのに、Tik Tokでの歌ってみた動画の投稿をきっかけにブームになったそうです。

 私が「香水」を初めて聴いたのも、YouTubeで人気ボイストレーナーのしらすたさんと星乃ちゃん(元宝塚歌劇団星組の娘役 華鳥礼良さん)のカバーだったのです。一度聴いただけでメロディが耳に残ってしまい、自分で歌いたくなる曲だなと思いました。ちなみに、二人とも声が抜群によくて、素晴らしい仕上がりです。

 しらすたさんはYouTubeのチャンネル登録者数 119万人を誇る人気ボイストレーナーです。彼のような影響力のある人が「香水」を拡散させていったんでしょうね。もしインターネットがない時代なら、「香水」は埋れたままだったかもしれません。

「土の時代」には人生が会社や組織に支配されていた

 昭和歌謡の全盛期だった1970年代から80年代は、売れる歌手になりたければ、メジャーなレコード会社に所属して、宣伝してもらう必要がありました。なので「スター誕生」「全日本歌謡選手権」といったオーディション番組やヤマハの「ポピュラーソング・コンテスト」に出場したり、レコード会社(古い!)へデモテープを送ったりして、メジャーデビューを飾るために必死に努力したわけです。

 「土の時代」には自分の人生は所属する会社や組織に支配されていました。歌手なら「この曲でデビューしろ」とか「まずはアイドル路線でいこう!」と事務所やプロデューサーに勝手に売り方を決められることもあったでしょう。サラリーマンなら辞令がでれば、希望でない部署や行きたくない場所に転勤しなければなりませんでした。

「風の時代」はすべてのオーナーシップが自分にある

 それに対して、「風の時代」はすべてのオーナーシップが自分にあります。瑛人さんはまだ23歳ですが、歌や活動のオーナーシップはレコード会社や所属プロダクションでなく、彼自身がもっているのです。次にどんな曲を歌うのかも、自分で決めています。

 先日、テレビをつけたらNHKの「SONGS」をやっていて、瑛人さんが歌っていました。純粋に歌を楽しんでいる無邪気な顔に目が釘付けになってしまい、「楽しいには敵わない!」と思ってしまいました。人から強制されてやっていると、何ごとも続きませんし、何より傍目から見て魅力がありません。「好きだからやっている」方が断然カッコいいのです。

 歌だけでなく、小説もエッセイも写真も動画も、このnoteのような発表の場があれば、作品のオーナーシップは自分にあります。そして読者からメッセージをもらったりして、誰がどう読んでくれているのかわかります。それがたとえ1人であったとしても、私はすごく嬉しいし、感動します。2万部とか4万部の媒体で書いていても、読者に会うことは滅多にないからです。

 第1回目の投稿「SNSを年下に教わったら、メチャ楽しかった!」にも書いたのですが、最近、若い先生にいろいろな種類のSNSについて教えてもらっています。ある26歳の先生はブログ歴2年だそうですが、「書いたもののオーナーシップは僕にある」とキッパリ言っていました。「キャリアは2年かもしれないけど、700回以上セミナーをやっています」とも。

 私はライターとして20年以上のキャリアがありますが(自慢ではありません)、大手出版社や編集プロダクションなどから仕事を発注され、取材して書くというのが一般的でした。オーナーシップは発注元やその先にいる大企業にあるわけです。若い講師の先生にその話をしても、彼にはその仕組みすら理解できない様子でした。 「どうしてそんなつまらない働き方をするんだろう?」と思っていたかもしれません。

100万人でなく、数十人の顔の見えるお客とつながる

 なるべく偏差値の高い有名な大学を出て、安定した企業に入るか公務員になる。「土の時代」はそういう生き方が良しとされた時代でした。ですがインターネットが普及してから、既存の価値観やビジネスモデルは崩壊しつつあります。たとえば、新聞や雑誌は売れなくなり、テレビの視聴者も減って、広告収入は激減しています。その一方で、古書店の若い店主が半年に一度、自費出版する幻想文学について書かれた本200部が、予約で完売するといった現象が起き始めています。

 ミンネという手作りサイトがあって、スマホカバーなどをよく買っていますが、クリエイターと必ずやりとりしています。バッグ、服、アクセサリー、雑貨、家具等々、どんなものでも手作りサイトは作り手と買い手の顔が見えるのです。

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 100万人が買ってくれる可能性は限りなく低いですが、数百人、あるいは数十人のため創り、買ってくれた人一人ひとりが感想を語ってくれる。そんなクリエイターのあり方も素敵だと思います。

 「照千一隅(一隅を守り千里を照らす)」とは天台宗の開祖、最澄の教えですが、「風の時代」は自分の立っている場所を懸命に照らす人にスポットが当たる時代になるかもしれません。そして、社名や肩書に惹かれてではなく、純粋に「スキ」だから、「楽しい」から、「共感」するから付き合う時代になれば、この世界はずいぶんと生きやすくなることでしょう。

 私はnoteからその一歩を踏み出したいと思います。

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