映画「別れる決心」(@2022年・韓国)(Bunkamura ル・シネマ)を見てきました。
映画「別れる決心」(@2022年・韓国)(Bunkamura ル・シネマ)を見てきました。
監督はパク・チャヌク。最初にパク監督の映画を観たのは「オールド・ボーイ」でした。ストーリーの強さとそれを凌駕しようとするさらに強い演出に圧倒されたことを覚えています。
ある種の露悪的な倒錯の世界が描かれていました!本作もある種の倒錯的な世界観は共通なのですが抑制された演出がパク監督の成熟を感じさせてくれました!
とはいえ、抑制されているだけに隠れたところから見えてくる激しいものを感じられると、この映画のファンになるのではないでしょうか?
その隠れたものが見えないとやや難解で何だかわかりにくいという意見もあるかと思います。でもそれだけに何度も見たくなるかも。
本作は2022年カンヌ映画祭で監督賞を受賞しました!
さすがのカンヌ映画祭の審査員たちです。
細部まで目が行き届いているのだなと感じます。
韓国映画と韓国のドラマの違いには、こうしたわかりにくさを良しとすることなのでしょうか?これは日本映画と日本のドラマも同じかもですが…。
以前、ドラマとして放送もされた村上春樹の「納屋を焼く」を原作にした「バーニング」(2018年・イ・チャンドン監督)などは劇場版も公開されたこともあって、そんな固定観念がなくなるつつある時代を迎えています。
ネットフリックスで配信されその後映画館で上映された「ROMA」(2018年・アルフォンソ・キュアロン監督)なども同じですね!
配信プラットフォームの登場で映像のジャンルが拡がり
その分ジャンルの垣根が低くなったのではないでしょうか?
そうしたことに触発されてWOWOWなどもここに来てオリジナル作品を多く制作するようになって来ています!
制作会社はここをチャンスだと考えて奮起し
新たな映像制作の時代が来ることを願っています。
本作は刑事(パク・ヘイル)が、夫が亡くなった事件で中国からやって来て結婚したその妻(タン・ウェイ)を監視しているうちにある種の恋心が芽生えだすというもの。
抑制された演出がドキドキ感を加速させます!
昔見た「花様年華」(ウォン・カーワイ監督:2000年)を思い出しました!
刑事の妻は研究者で韓国にある原発施設で働いているという設定。
刑事はソウルに住み週末は原発の街へ戻っていきます。
刑事は不眠症を患っておりまったく眠れない状態が長く続いています。
まるで夢幻能のような状態で刑事はタン・ウェイの魅力のとりこになっていきます。これを谷崎潤一郎が見たら絶対に好きになっておられたんじゃないでしょうか?江戸川乱歩さんもそして、スタンリー・キューブリックも。
ある種の抑制された倒錯の美学が貫かれており、そして最後には
悲しい結末を迎えていくのです!それは見てのお楽しみでしょうか?
不眠症の刑事にタン・ウェイが眠れるようにと二人一緒に息を長く呼吸する、いわゆる「ロング・ブレス」をするシーンがあるのですが、その息の波長を二人で合わせていくというシーンがある種の身体的なエロスも含めてとても印象的でした。
息の合った演技っていう言葉がありますが、それって多分、会話している俳優同士の息の長さや呼吸数が合っているのではないでしょうか?
これは前から思っていたことなのですが、ご存じの方がいたら教えてください。
本作の物語には韓国の歴史に基づいたことが底辺に流れています。
HPの言葉を引用するとタン・ウェイは
「中国人だが、母方の祖父は朝鮮半島の独立運動家であり、自分の先祖の歴史と祖父に誇りを持っている。」
ということ。アジアはつながっており民族や国家などを超えた絆が生まれるということ。
こうしたことが本作の脚本に厚みを与えてくれました。
見終わってからも独特の余韻があり後を引く映画です!
映画館に貼ってあった「映画評」を読んでいると、
パク・チャヌク監督が好きなヒッチコックの「めまい」をオマージュにした映画だと書かれており「めまい」を再度見たくなりました。
こうした好奇心の連鎖が生まれるみたいな事が「映画」にはまっていく魅力なのではないでしょうか?
また本作のカット代わりの独特な同ポジ同サイズでの変化、水滴をモチーフにした同一イメージからの変転、光を使ったフレアからの転換、さらには流れコマの使用や、独特のズームショットの使用!など映像テクニック的にも見どころ満載でした!これらの効果がヒッチコックへのオマージュ?
上映時間2時間18分。映画館を出たら、
何と「花様年華」のポスターが置いてありビックリ!
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