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映画館にいたい

 映画が始まる直前が好きだ。この瞬間を何度も繰り返したいと思う。
 私は映画が好きというより、映画館が好きなのだ。一人だけど一人ではない。2時間だけでも自由になれる。どんなにつまらない映画でもひどい映画でも、観ない方が良かったとは思わない(「それはまだ『○○』を観ていないからだよ」って言われたらそのとおり。『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』とか最後まで観たら後悔したかな)。
 だから特に観たくない映画でも、上映時間が合えば観てしまう。とくに働き始めてからは、観たい映画より時間が合った映画をよく観ている。映画好きは無理にでも時間をひねり出すが、見つけた時間で特に関心のない映画を観るのもまた映画好きだ。

 今日は『簪』を観た。戦時中の日本、同じ旅館でひと夏を過ごした人たちの群像劇だ。「学者先生」と呼ばれる男性が気難しく、面倒くさい人間でとても愛らしい。素晴らしい演技だった。そんなに面白くないだろうと思って行ったのに思いがけず面白く、やったあ!という気分だ。
 それから、こちらは気になっていた映画『トーク・トゥ・ミー』を観た。ふざけ半分で「降霊の儀式」をやるうちに、恐ろしいことに巻き込まれる高校生の話。やはり、いま生きている人と会話をしないとと思った。幽霊はいるかもしれないけれど、きっと生きていたときの人とは違う人なんだろう。ストーリーが巧みで飽きなかった。

 映画!映画館!これ以上に好きなものは今のところない。座席を蹴る客の近くに座ってしまうこともあるが、なんにせよその場でその人たちと観る機会は二度とないのだ。

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