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坂本菜の花『菜の花の沖縄日記』

 石川から、沖縄にある学校「珊瑚舎スコーレ」に進学した坂本菜の花さんの日記。先日早稲田奉仕園で「松井やよりと沖縄」という講演を聴いたことがきっかけで、沖縄について書かれた本を探していて見つけた。元は北陸中日新聞の連載らしい。高校生の日記かー、と読んでいたら、連載自体は2016~17年なので、ほぼ同い年の人だったのだ。年齢と育った環境など似ている部分がある気がして、少し親近感を抱いて読んでいた。
でも私が高校生の頃、今でも、こんな文章は書けなかったはず。

 本土では、今回起こった事件がどう受け止められているのでしょうか。抗議活動が大きくなる「恐れ」。最悪な「タイミング」。報道などで使われる言葉一つひとつが、私の喉に刺さって抜けません。「恐れ」って? こんなことが何十年も起きていて、抗議する声を「恐れ」とはどういうことなのかわかりません。

坂本菜の花『菜の花の沖縄日記』p.74

読んでいてはっとしませんか。2016年に、沖縄県在住の女性がアメリカ軍属の男性に暴行され、殺害された事件を受けて書かれた文章。「恐れ」「最悪なタイミング」といった報道のことばへの反応が鋭く、「みんな」いかに沖縄を周縁に追いやって考えているかを突いていて、どきりとした。そもそも坂本さんは中学生のときにドキュメンタリー映画を観て、オスプレイの反対運動を知るため高江集落に行ったそう。でも(私が書くのもなんだけれど)「上から」なところはなく、ずっと自分で考えて悩んで選んでいる人なんだろうと思った。さらっと書いているのに色々な問題を突いていてどんどん読めた。

 本の最後には、珊瑚舎スコーレを始めた先生たち(先生も日記によく出てくる)との対談も載っている。星野校長(通称ホッシー)も、(坂本さんは)「たいへんわかりやすい子、という印象でした」(p.164)と遠慮がない。学校も面白そうだ。坂本さんはいまどんなことをしているのだろう?本作はドキュメンタリー映画もあるそう。

坂本菜の花『菜の花の沖縄日記』ヘウレーカ、2019年


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