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デタラメの中を生きる


1.振れ幅が大きいとワンチャンあるかも


 自分の話したことや書いたこと、あるいは振る舞いは、自分の意図とは別の捉え方を他者からされることがよくある。もともとの意図や内容とは違って受け取られて(つまり、誤解されて)、いろんな方面に転がっていくのが常だ。デリダのいう「誤配」である。自分とは異なる考えや規範をもつのが他者であるから、他者とのコミュニケーションにおいて「誤配」が生じるのは必然であるとも言える。

 ある人が時に思想的に右な意見を持つこともあるし、別の局面では左の意見に振れることもある。自分の考えや感情は、時と場合、相手により揺れ動いて一時的な例外をとる時もある。ただ、自分に都合のよい方向に振れるだけではない。良くない方向に振れることもあれば、良い方向に振れることもある。振れ幅が大きいほど、凶が出る時もあるし、大吉が出る時もある。システムとして完全に一方向に行くのではなくて、上下左右といろんな方向に飛んでいく余地があると、ハズレも多いが、たまによく分からない理由で自分にチャンスが転がってくることもある。

2.人は気分で動く

 人の消費活動は合理的なのだろうか。みんなにも自分の消費活動を顧みてもらいたいが、店ではよいと思って買ったのに使わないまま放置していたり、何となく気分で買ってしまったものは意外に多いのではないか。その時にその人なりの理由で買っていても、消費の動機にはデタラメが左右してるのではないか。生活に余裕がない貧乏人も無駄遣いしてしまうのはこのためだ。

 人は何かを埋め合わせるため、他者を求めたり消費をするのだと思う。高齢者や孤独な人が訪問販売やテレアポなどにひっかかりやすいという話がある。これは、商品がどうこうよりも、寂しめの人が直接話し相手を得ていい気分になったとか、一時でも自分を特別扱いしてもらったことが大きいのではないか。キャバクラやホストに通う人も自分が特別扱いされるのが気持ちよいためだろうし、接待とかでも同じことが言えそうだ。特に理由はなく、自分が特別扱いされることで人は懐が弱くなる(それは、いいも悪いも含めて)。みんなに万遍に与えられる同一のサービスではなく、自分だけに特別に与えられるサービスに人は折れやすい。自分のために歌を歌ってくれたとか、絵を描いてくれた、話しをしてくれた、そういう特別扱いをキッカケに人と関わったり、少しおこぼれをもらえるチャンスもある。 

3.デタラメとはシステムの隙間

 もともと世界は偶発性により動いていた。その時々の気候により植物や木の実のでき具合が左右されて、動物の生存可能性の振り幅も激しかった。その変動リスクを抑え一定の収量を確保するために農耕が発達した。社会の安定のためにデタラメが起こる可能性を減らし整序するのがシステムである。労働の賃金システムも、その時々の生産や売上によらず一定額の所得を保障するために本来あるはずだ。しかし、いくら働いても低い最低賃金しか支払われないシステムになると、人を低い位置に縛り付けるように作用してしまう。システムは暮らしの安定をもたらすものだが、逆にシステムの中で上手く立ち回れない人には不自由な縛りともなる。

 労働規範は、労働以外ではお金は得られないと人に思わせて人を労働に駆り立てる。正攻法では損をする末端労働者や負け組の人も規範を内面化してシステムに従う。こうやって、システム以外では何もできない無力な存在にさせられてしまう。

 整序つけられたシステムの中では、デタラメやワンチャンは起こりにくい。普通の振る舞いからズレたところで奇跡が起こる可能性が立ち現れる。路上でいきなり話しかけたり一発ギャグを言って100円もらうしょぼいことから、ヒッチハイクしたらご飯をたらふく食べさせてもらえることなど様々なことがある。これで抜本的に人生が変わるわけではないが、小さなことでも自分自身の振る舞いで何かを得る経験をすると、自分に内在する力の可能性を感じる。何度か成功したら、またできるかもしれないという根拠のない自信にもなる。一歩前に出て人に働きかければ思わぬことが起きる。これは、ゲームの説明書には載ってない隠しコマンドのようなものだ。

4.デタラメに賭ける

 世の中や人はデタラメや気まぐれで動くことが多い。そういった偶発性が世の中の多様性を担保してるのだとも思う。わたしのような変な人を面白がって寄付してくれる人もいるのを見ると、わたし自身がデタラメな偶発性で助かってるところがある。正しい人や真面目な人ばかりじゃ、わたしなんかは生きていけない。そもそも、自分が今置かれた状況も、国や家族、環境などいろいろな制約や可能性の中における偶発性によるものが大きい。偶発性が支配する中で、真面目にやろうとも中々思うようにならなければデタラメに賭けるのも手ではないか。

 社会はシステム化して一元化しつつあるけど、システムから外れた人の生存可能性はこのようなデタラメや「誤配」にかかっているとも言えそうだ。

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