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Ep.2 自動車業界のトレンド(Autonomous)

日本では、全就業人口の約1割にあたる554万人もの人が自動車産業に携わっている[1]。

新聞やニュースで自動車業界が取り上げられない日はなく、最近だと『ホンダ、EV・車載ソフトに10兆円 投資計画2倍に[2]』『トヨタやホンダ、型式指定で不適切事案 内部調査で確認[3]』などが日経新聞の朝刊1面で取り上げられていた。

本記事では、社会人の教養として欠かせない自動車業界のトレンド(CASE)について、物語形式で学ぶ。自動車業界のトレンドを抑え、新聞やニュースをより深く理解できるようになろう。

今回はCASEの中でも特に、"Autonomous(自動運転)"を紹介する。


【登場人物】
小林(主人公):工学部機械科の大学3年生。就職活動にやる気が出ない。
今井先輩   :工学部機械科の大学4年生。自動車部品メーカから内定をもらっている。



1. 自動運転


今井先輩「”Connected(コネクテッド)"を紹介したね。次は、”Autonomous(自動運転)"を見ていこう。」

自動車業界のトレンド(CASE)


今井先輩「自動運転とは、その名の通り、車がドライバーの操作なしで自律的に運転する技術のことだ。

小林「それなら知っていますよ。高速道路で前の車を追跡するって話を聞いたことがあります!」


今井先輩「いいね!自動運転にはレベル0~5まで6段階ある。国土交通省からもこんな資料が出ているよ。[4]」

自動運転のレベル分けについて(国土交通省)[4]


今井先輩「少しかみ砕いて書くとこんな感じかな?」

自動運転のレベル分け(国土交通省の資料[4]を基に作成)


今井先輩「自動運転はレベル3とレベル4の間に大きな違いがある。レベル3は人がただちに自動車を止められる状態にいる必要がある一方で、レベル4は運転に関する操作は全てシステムが実施する。」


小林「全てシステムが実施・・・。乗っている人からすると少し怖いですね。今現時点で、そんな車があるんですか?」

今井先輩「海外では既に出てきているよ!日本では、2023年4月に法改正があって、自動運転レベル4が解禁されたけど、まだ商用化には至っていない。


小林「海外は進んでいるんですね!でも、あまり聞いたことがないですね。具体的にどんな会社が自動運転を商用化しているんですか?」

今井先輩「わかった。そしたら海外の事例を紹介しよう。」


2. 自動運転の商用化


今井先輩「アメリカと中国の事例を紹介しよう。まずはアメリカのWaymo(ウェイモ)だ。」

小林「ウェイモ?全く聞いたことないです・・・。」

今井先輩「ウェイモは、実はGoogle(グーグル)から分社化した会社なんだ。グーグルなら聞いたことあるよね?」

小林「もちろんあります!グーグルは自動運転もやっていたんですね。」


今井先輩「実はそうなんだ。ウェイモは、2018年に初めて世界初の自動運転タクシーを商用化した会社で、2019年からは運転手なしの自動運転レベル4も達成している。[5]」

小林「グーグルの強みは検索エンジンだけじゃなかったんですね・・・。すごいですね。」


今井先輩「自動運転は、別の業界から参入して取り組む事例は多い。次に紹介する中国の百度(バイドゥ)もそうだ。」

小林「百度と書いてバイドゥ・・・。教えてもらわないと読めないですね。」

今井先輩「中国の会社名ってなかなか読みにくいよね。バイドゥは中国版グーグルとも言われる、IT企業なんだ。2022年には完全無人タクシーの商用サービスを開始している。[6]」


小林「海外はすごいですね。日本は遅れていて、なんだか悔しくなってきました。」

今井先輩「日本が遅れを取っているのは事実だね。でも、日本でもトヨタが2021年東京オリンピックでレベル4の実証を行ったり[7]、ホンダが2026年に東京都で無人タクシーを実用化することを発表したりしている[8]。これからに期待だね!」

小林「東京で無人タクシーが走るんですか!それは楽しみですね!」


3. 将来展望


今井先輩「ここからは自動運転に関わる将来について話そう。」

小林「将来・・・。自動運転の実現には色々な技術開発が必要になりそうですね。」

今井先輩「そうだね。自動運転には、色々な業界の技術が必要になる。

自動運転に関連する業界(参考文献[9]の情報を基に作成)


ここで注目したいのが、将来、自動運転を成り立たせる技術はもちろん必要だが、自動運転車向けのサービスも重要になってくることだ。」

小林「自動運転車向けのサービス?」


今井先輩「人は移動している間、車を運転する必要がなくなるから暇を持て余すことになる。だからこそ、自動運転車向けのサービス、例えばエンタメや広告を提供して、車室内を快適に過ごせるようにしようって考え方だ。」

小林「めちゃくちゃいいですね!例えば映画を見ながら移動して、気が付いたら目的地に着いているってことですよね?」


今井先輩「その通り!もはや移動が楽しみになる世界に近づいていくはずだ。自動運転には、もちろん色々な技術開発が必要だけど、自動運転が実現した未来を夢見ながら仕事ができる。それもまた、自動車業界の魅力の1つになっているね。


(つづく)


参考文献

[1] 一般社団法人 日本自動車工業会, 『基幹産業としての自動車製造業』,https://www.jama.or.jp/statistics/facts/industry/ .

[2] 日本経済新聞, 『ホンダ、EV・車載ソフトに10兆円 投資計画2倍に』, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC15A2X0V10C24A5000000/, 2024/5/16.

[3] 日本経済新聞, 『トヨタやホンダ、型式指定で不適切事案 内部調査で確認』, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE030NO0T00C24A5000000/, 2024/6/1.

[4] 国土交通省, 『自動運転のレベル分けについて』, https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf.

[5] Reuters, 『Waymo unveils self-driving taxi service in Arizona for paying customers』, https://www.reuters.com/article/us-waymo-selfdriving-focus/waymo-unveils-self-driving-taxi-service-in-arizona-for-paying-customers-idUSKBN1O41M2/, 2018/12/5.

[6] 日経ビジネス, 『中国初の「完全無人タクシー」に試乗 百度の自動運転の実力は』, https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00485/090100005/, 
2022/9/2.

[7] 日本経済新聞, 『トヨタ、東京五輪で専用EV 移動革命をアピール』, https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47495590Y9A710C1TJ2000/, 2019/7/18.

[8] 日本経済新聞, 『ホンダとGM、無人タクシー先行 人手不足解消の切り札』, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC180I00Y3A011C2000000/, 2023/10/19.

[9] 下山哲平, 『自動運転&MaaSビジネス参入ガイド 周辺ビジネスから事業参入まで』, 株式会社翔泳社, 2020/11/5.

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