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Ep.1 自動車業界のトレンド(Connected)

日本では、全就業人口の約1割にあたる554万人もの人が自動車産業に携わっている[1]。

新聞やニュースで自動車業界が取り上げられない日はなく、最近だと『ホンダ、EV・車載ソフトに10兆円 投資計画2倍に[2]』『トヨタやホンダ、型式指定で不適切事案 内部調査で確認[3]』などが日経新聞の朝刊1面で取り上げられていた。

本記事では、社会人の教養として欠かせない自動車業界のトレンド(CASE)について、物語形式で学ぶ。自動車業界のトレンドを抑え、新聞やニュースをより深く理解できるようになろう。

今回はCASEの中でも特に、"Connected(コネクテッド)"を紹介する。


【登場人物】
小林(主人公):工学部機械科の大学3年生。就職活動にやる気が出ない。
今井先輩   :工学部機械科の大学4年生。自動車部品メーカから内定をもらっている。



1. V2V


今井先輩「自動車業界のトレンド(CASE)を紹介したね。まずは、”Connected(コネクテッド)"から見ていこう。」

自動車業界のトレンド(CASE)


今井先輩「コネクテッドとは、自動車が様々なモノとインターネット接続して、双方向で情報のやり取りをすることだ。突然だけど、V2Xって聞いたことある?」

小林「V2X・・・。DXみたいな感じですかね?」

今井先輩「残念!英語の頭文字を取った言葉って、種類も多いから難しいよね、、、。V2Xは、『Vehicle to X』の略。車両と様々なモノの間で通信や連携を行う技術のことだ。Xは車が繋がるモノを意味していて、具体的にはこの4つがある。

V2Xの活用例


V2Xはコネクテッドの考え方の一つだ。各自動車メーカはV2Xの実現を目指して開発を進めている。」

小林「V2Iは今でもありますよね?カーナビで渋滞情報のお知らせが来たことがあります。」

今井先輩「渋滞情報のお知らせは今でも実現できているね。でも、ここでいうV2Iはもっと高度なことを意味している。今後はそもそも渋滞が起こらないように、それぞれの車の経路や速度を変える未来がくるかもしれない。」

小林「そもそも渋滞が起こらない!それは嬉しいですね。でも、遠い未来の話のような気がしますね。」

今井先輩「言う通りだね。今現時点、コネクテッドは、車が一方的に情報を受け取るサービスが大半。仮に車の情報を使うとしても位置情報くらいで、まだまだ課題はたくさんある。それでも、コネクテッドは私たちの身近に広がってきている。次はコネクテッドの事例を紹介しよう。」


2. コネクテッドの事例

今井先輩「コネクテッドの事例として、GO Payを紹介しよう!」

小林「GO Pay?聞いたことないですね、、、。」

今井先輩「GO Payはタクシーの配車サービスだ。大学生だとあまり使わないかもしれないね。でも社会人は利用している人も多い。2024年時点で9,000社以上の法人企業が利用登録していて、このサービスを手掛けているGO株式会社は2024年に上場を検討するほど規模を拡大している。」[4]

小林「9,000社ってすごいですね。それに上場って聞くと、何だかすごい感じがします!」

今井先輩「そうだね。とりあえず、規模を拡大しているという感覚が伝われば十分だよ。」

小林「具体的にどんなサービスを提供しているのですか?」

今井先輩「利用者とタクシーの位置情報を利用してタクシーを配車し、決済手続きなしでタクシーを利用できるサービスだ。

GO pay の利用プロセス

会社情報を登録しておけば、経費申請も自動で行うサービスも展開している。」

小林「アプリで配車を依頼できるのと決済不要なのはかなり便利ですね。タクシーにはあまり乗りませんが、簡単に利用きるなら使ってみたくなりますね。」

今井先輩「そうだね!タクシーは下車するときの決済が面倒だった。そこをなくしたメリットは非常に大きい。仕事での利用であれば、経費処理の手間を省けることも大きなメリットだ。」


3. 自動車メーカへの影響

今井先輩「ここまで、コネクテッドの実現のためにV2Xが欠かせないこと、V2Xの事例紹介をしてきた。最後に、V2Xによる自動車業界のビジネス構造の変化を紹介しよう。」

小林「確かに車以外のモノとたくさん繋がろうとすると、ビジネス構造も変わりそうですね。」

今井先輩「そうだね。たくさんのモノと繋がろうとした時、一番大きく変化するのは、企画~販売までのプロセスだ。このプロセスは、今まで垂直分業型がメインだった。でも、今後は水平分業型の導入が必要になってくる。

小林「垂直分業?水平分業?」

今井先輩「自動車の企画~販売までのプロセスの種類のことだ。
垂直分業は、メーカや車種に合わせて整合性・最適化をすり合わせること。
水平分業は、メーカや車種を跨いで整合性・最適化をすり合わせることだ。
[5]

コネクテッドを実現する、言い換えると、たくさんのモノと繋がるためには、通信規格の統一化や部品の共通化が必要になる。そのためには、メーカや車種を跨いで仕様をすり合わせる必要がある。すり合わせをやらないと、後から接続することができないからね。」

自動車の企画~販売プロセスの変化

小林「水平分業型が導入されると、自動車部品メーカは、メーカや車種ごとに部品を変えなくて済むので楽になりそうですね。」

今井先輩「そうとも言えないね。メーカや車種跨ぎで同じ部品が使われるということは、使われる部品と使われない部品が明確に分かれることを示す。自動車部品メーカは、今後淘汰が進むと予想される。」

小林「車を買う側の視点で考えるとすごく便利ですが、会社側からすると厳しい環境ですね。」

今井先輩「厳しいとも言えるけど、チャンスとも言えるね。シェアを勝ち取れば、更なる事業拡大が見込める。そこに自動車業界の魅力があると思うよ。


参考文献

[1] 一般社団法人 日本自動車工業会, 『基幹産業としての自動車製造業』,https://www.jama.or.jp/statistics/facts/industry/ .

[2] 日経新聞, 『ホンダ、EV・車載ソフトに10兆円 投資計画2倍に』, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC15A2X0V10C24A5000000/, 2024/5/16.

[3] 日経新聞, 『トヨタやホンダ、型式指定で不適切事案 内部調査で確認』, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE030NO0T00C24A5000000/, 2024/6/1.

[4] 株式会社GO, 『当社の株式上場の準備の開始に関するお知らせ』, https://goinc.jp/news/info/2024/01/05/2q5de9qvg4pgpzfz5zwzoz/, 2024/1/5.

[5] ネクスティエレクトロニクス, 『コネクテッドカー戦略 日系自動車メーカー 2030年、勝者の条件』, 日経BP社, 2018/8/7.

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