見出し画像

私が過食嘔吐症を克服するまで⑤始まった地獄

私は高校に進学するとバドミントン部に入部しました。
中学と同じくらいの練習は厳しかったですが、理不尽な扱いを受けることはありませんでした。

中学時代に培った脚力と持ち前のパワーのおかげで、あっという間に中学生たちを追い抜き、強くなることができました。
(中高一貫校なので中学生と高校生が一緒に練習していました)

強くなるとコーチやチームメイトが褒めてくれる。努力していれば練習メンバーとして認めてくれる。
私に生まれて初めて居場所ができました。

本当に本当に楽しい一時でした。

そして、その練習を耐えたおかげで、その年の冬には16kgの減量に成功しました。
ついに正常体重になることができたのです。

今度は色んな人から痩せたね!どうやって痩せたの?すごいね!と称賛されました。

嬉しくなり、私はどんどんバドミントンの練習に夢中になりました。
部活以外でもよく練習するようになりました。
昼休みも返上して自主練していました。
家に帰ると走り込みもしていました。

減った体重が少しでも増えると翌日は夕食をほぼ絶食し、昼休みもビスケットを数枚しか食べない生活を送っていました。

朝食は抜くと太る、と思っていたので朝は食パンを半分だけ食べていました。

昔、ドキュメンタリー番組でみた拒食症の女性の話を思い出していました。
その女性は学生時代に体重が60kgほどだったそうで、夏休みに食パンに塩をかけて食べるだけの生活をしていたそうです。

夏休み中に7kgも痩せ、夏休み明けに登校するとクラスメイトから痩せてキレイになったと大絶賛だったそうです。
それからもその生活を続け、大学生になった頃には体重が30kgを切り、入院したが食生活を戻せず最後は亡くなったという話でした。

それに対しての恐怖ではなく、私は憧れていました。
食べたくない、食べる気がしないというのが儚げで美しく感じたのです。

幼い頃からの食習慣により大食い早食いだった私は自分を汚く醜いと感じていました。

こんなふうに死にたいと思っていたのでしょう。

運動をして食べない、という無茶な行動を続けていました。
紛れもなく【拒食症】でした。

当然のように授業に出られなくなりました。
しかも同時期にオナラが止まらなくなるという現象が体に起こりました。

過敏性腸症候群でした。家にいる時はでないのに、駅や教室や部活など場所とシーン問わず、ひとが多い場所に行くと1分に1秒くらいオナラが出てしまうのです。

クラスではイジメなどはありませんでしたが、異臭に気づかないわけがありません。

他のクラスの生徒が教室に入ったとき
『この部屋、くっさ!』

と言いました。当然です、臭いはずです。
でも私にはどうしようもなく、再び不登校になるしかありませんでした。

家族に病状を訴えたところ、学校に話が行き、保健医の先生を介して心療内科に行くとになりました。
(中学に上がる頃にはとっくに母の体格を超していたため、力に抵抗する事ができるようになり母は私を殴らなくなっています)

診断はすぐにつきましたが、マグネシウムを処方されたことと食生活を正すしかないと言われてしまいました。

食事を摂っていないことは家族も保健医の先生も知っていました。
食べなさいと初めて言われたとき、少し高揚したのを覚えています。

私が食べないことで心配してくれているひとがいる。
私の体調を心配してくれている。

食べないと臭い
食べると醜い

私は自分がどうすればいいのか分からないまま、日々を過ごしていました。

ある日、クラスで仲良くしていた女の子が私を心配して家に来てくれました。

その子は顔も良くスタイルも大変いい子でした。
しかも食べても太らない特異体質でした。

その子は私の病状を聞くなり、

『食べても太らないよ!ちゃんとたくさん食べよう!』

と言いだし、強引に近所のコンビニに連れて行かれました。
友人は買い物かごにお菓子やアイスやサンドイッチなどをこれでもかと詰め込み、買わされました。

帰宅し、一畳ほどの食品の山を目の前にしました。
友人がお菓子を一箱取ると、私もつられて手に取りました。

きのこの山でした。

ビリビリとパッケージを開けて、出てきたプレッツェルとチョコのかさを一口食べました。

頭の中にドーパミンが溢れるように出てきました。
その一箱はあっという間に食べてしまい、その他の食品も1時間と経たずに食べてしまいました。

当たり前ですがお腹が苦しく、血糖値が急激に上がったことで、腹痛のまま気絶してしまいました。

数時間後に友人とともに目が覚めましたが、お腹は膨らんだまま苦しいまま。

罪を犯してしまったかのような罪悪感に襲われました。
体がまともに起こせず、胃がずっと圧迫されていました。

それから数ヶ月、毎日のようにアイスを一箱食べたり、マクドナルドでハンバーガーを何個も食べたりと、【むちゃ食い】という摂食障害へ移行しました。

体重は多少増えたものの、毎日のように繰り返していた運動行為によって維持されていました。

しかし、代償なのか、朝、全く体が動かなくなってしまったのです。
不登校が続き、2年生の秋には学校側から自主退学をするよう宣告され、辞めることになったのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?