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十六夜杯(短歌)「審査員賞」 春〜と共に賞


前回の鶴亀杯に引き続き、十六夜杯短歌を担当させて頂きました
 春〜と共に  です。
三回目となりましたみんなの短歌大会も大変多くの方に参加して頂くことが
出来ました。
(宇宙杯141人335首、鶴亀杯124人336首、十六夜杯132人332首)
ありがとうございます🤗

では「春〜と共に」賞 7首をご紹介いたします。
どの方の短歌もその方の個性があり、魅力あるものでしたが、
今回も“余韻”を強く感じた短歌を選ばせて頂きました✨✨✨
(順番は投稿順です)


【おはようよねちゃんさん】
丁字路は言えないままのさよならを
残したままで夕陽の影に

丁字路・・丁字形に交差している道路
その 丁字路、言えないままのさよなら、残したまま、夕陽の影、と
全てやるせない感じがします。
そしてこれらの言葉を畳み掛けるように繰り返し、
その中で、まま という言葉も繰り返していますね。
心の中に残ってしまった、言えないままのさよなら が響いてきますね。



【KOMAさん】
敵国の憎き仇も見上げしか
月に祈るは明日の命

敵国の憎き仇も見上げしか
ここの部分に、か行の音が多く、響きにも強さを感じます。
内容とも連動していますよね。
月はひとつ、敵も味方もない。
暗い闇の中で同じ月を見つめている・・・明日の命を月に祈ると。
敵と味方・・・・・そんな人間。 そして、月。
人間がより小さく感じられます。



【吟遊詩人K.さん】
僕のことを不登校って呼ぶけど
みんなはなぜ有登校なの?


みんなはなぜ有登校なの?
この言葉がとても強く心に残りました。
物事を多角的に捉える、つい忘れてしまいがちです。
わかっていても心に余裕がなくなると、どんどん視界が狭くなりますよね。
シンプルにとてもわかりやすく表現されていて、
はっと気付かされる短歌でした。



【のんちゃさん】
ええねんでそんな自分でええねんで
そんな自分が好きでええねん

ええねんで ええねんで ええねん と繰り返す、そして更に、そんな自分 
そんな自分 と ん も繰り返され、読んでいてとても心地いいです。
ここまでストレートに・・かえってそのことに惹かれました。
この ええねん を標準語に変えたら全く味気ないものになってしまいそうです。方言は歴史もあり、昔からその土地の人々に受け継がれてきたもの。
その方言の意味やニュアンスは、説明をされればなんとなくわかると思いますが、その言葉の持つ微妙な意味合いは、その土地の人でなければわからないのではないかと思います。限られた音数の中でどれだけ表現できるか、使う言葉の持つ意味やニュアンスなどがとても重要なものだと、こちらの短歌を読んで、また改めて考えさせられました。



【akarikoさん】
確実に季節は過ぎてあのつらい
夏は過去だと金木犀

確実に季節は過ぎてあのつらい夏は過去だと
の部分はやや説明文のようでもありますが、そのあとの一番最後の部分に
ポンと、金木犀を持ってきたところに惹かれました。
金木犀が咲き始めたと、そして、香りがすると・・・
否が応でも季節は流れ、今はもう金木犀が咲いている。
“今” をしっかり見つめている作者(akarikoさん)がみえてきますね。



【ゆずさん】
登山道亡き父に似た人探す
癖のなおらず三度目の秋

この31音の中に、しっかりと色々なことが上手に表現されていると思いました。
読み手に自分の想いを理解してもらえるように、31音で表現するということは
簡単なことではないと、私もいつも感じています。
この秋が三度目の秋となり、山を登るその時に、
無意識のうちに探してしまう・・・お父様を探してしまうと。
その無意識にしてしまう“癖”という言葉から、お父様へのお気持ちが
とても伝わってきます。



【須崎水性さん】
僕らから熱を奪って知らぬ間に
過ぎ去る九月に恋をしました

参加作品三首とも、全て読んだ時の感覚が滑らかで心地いい短歌でした。
記事の中に「短歌で参加って語感がいい!」と書いてありましたが、
その感覚が短歌にもよくあらわれていると思いました。
私もそうなのですが、須崎さんも言葉の響きや流れのようなものにとても敏感なのではないかと思いました。
僕らから熱を奪って知らぬ間に過ぎ去る九月 の部分ですが、
僕らから熱を奪って は恋する熱い気持ち
知らぬ間に過ぎ去る は恋に夢中で時があっという間に過ぎる
このようなことが感じられ、この表現方法や構成にもとても魅力を感じました。



これからも皆様のご参加をお待ちしております✨
ありがとうございました🌸