4年前の書きかけのメモを見つけて。【2000年を生きる『塩野七生と高校生の対話』】※2020/2/24放送を観た時の備忘録

✾スマホのメモ帳の下のほうに眠っていた、尻切れトンボの書きかけで終わっているメモを見つけたので、中途半端なものだけれど此処に記しておこうかな、と。✾

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【2000年を生きる『塩野七生と高校生の対話』】※2020/2/24(月) NHK総合(再放送)
録画しておいたのを観終わる。再放送なので実際はいつの放送だったかは不明。

(放送当時)82歳の塩野七生さんが、母校である学習院で行った高校生への講義。ご本人が語られた言葉は、10代の高校生だけでなく今のわたしにとっても有り難いものだった。また、モノを書くということ意外においても、塩野さんの人生からは多くの“学び”と気付き があったので、備忘録として。

※ご本人の言葉を拝借しながら要約。
それでも長っ…下手クソめ……( ̄▽ ̄;)

①将来あなたたち(高校生)の役に立つ唯一のこと。それは「教養を身につける」ということ。教養=知識ではない。多くの本を読み、色んな世界を感じること。それでどう感じるか、感じたかが大事。「他を知ることで自分という人間を知る」というのがとても重要、それは己の“免疫”となっていく。

②なぜ考えるのか、それは壁にぶつかるからだ。不思議だと感じたり疑問に思ったりするのも壁にぶつかっている状態。例えば他人と違う考えや価値観によって否定されたりすることで味わう違和感や、失敗や挫折等も同様。壁にぶつかって考えることで、“免疫”がついていく。免疫を増やすことによって徐々に慣れていくのだ。

③『正解』というのは存在しない。だからそれについて考える必要もない(※現在の塩野さんが自身の経験を通して言えることとして)。そんな時間があるならもっと別の興味を惹く何かについて考えたり、取り組んだりしたほうがいい。自身の糧にもなり有意義な時間となるだろう。ただし、「人としてみっともない真似はしない。品格を持つ」ことだけは忘れずに。これを規範にする事で、一つの出口に繋がるのではないかと私(塩野)は考える。

④複眼的な視点を持つこと。例えば歴史というのは、360度、ありとあらゆる方向から見なければ全体(真実)を知り把握することは出来ない。視点の其々で違う側面があり、そのどれもが事実。これは歴史だけじゃなく何事にも言える共通のこと。

⑤私(塩野)が歴史について書くのは決して勉強してほしいからではない。歴史を感じてもらいたいという思いからだ。そして、読者を歴史の中へ連れていく書き方をする。“引き付ける”のではなく、“連れていく” のだ。

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『ローマ人の物語』を15年にも及ぶ歳月をかけて執筆された塩野七生さん。大学を卒業してから作家になるまでの間、そして作家になってからも心に残っている言葉があるという。『語源に常に戻れ』という、恩師の言葉だ。

ギリシアで『クライシス』とは “危機” だけでなく 、“蘇生” という意味も含んでいる、ということを、学習院大学時代の恩師である呉茂一氏 (※古代ギリシア・ラテン文学の権威) に教わる。そこで『語源に常に戻りなさい』と言った呉氏の言葉が、塩野さんのベースにしっかりと根付いているのだ。

それがどういう意味であるか、何を指しているのかは、物書きでなくとも気付くことだろう。簡単に言えば「表面だけ、見た一面で判断するのではなく、多角的に捉えようとする視点を持て」という事ではないか。実際に塩野さんは「鳥と虫の視点があれば己の役に立つ」とし、日本語ではそれを「鳥瞰図」とも言うが、イタリア語では「鷹の視点」と言うのだよ、と話されている。

『複眼的な能力を身につけなさい。それが我が内で免疫となるのです』

話の中で頻繁に出てくる“免疫”とは 、“挫折に慣れる(備える)為” のもの。塩野さん曰く「失敗も挫折もたくさん経験していくだろう。そこで必要になってくるうちの一つは、様々な角度で物事を視る(捉える)眼力。それは這い上がるきっかけとなってくれるはずだ」と。

また、ご自身が東大を受験されて落ちた事についても打ち明けられた。
『東大を受験したのは周りがそうするから何となく自分も、という軽い気持ちで受けた。しかし結果は不合格。どうして落ちたんだろう?と、同じく東大を落ちた同級生の利根川進氏と考えてみた』という。

そこで導き出された答えは作家としての塩野さんに繋がるものであった。
『我々は、先生の言葉で何かピンっと引っ掛かり気になるものがあると、そこから次々に連想が始まっていって、思考(脳内)はその世界へと入り込んでいってしまう。だから、それ以降の内容が耳に入って来ず、授業が分からなくなってしまったのが原因なのではないか?』

というのが一つの理由らしい。その言葉に至極共感してしまった。(わたしにも身に覚えがある…!) そして『でもね、この連想や空想や想像ってのが、とっても大事なのよね』と、笑いながら付け加えられた。

お二方の考えは続く。
『もしも東大へ入った(受かった)として、卒業後の道と言えば(今もあまり変わらないが)お決まりのレールがあった。自分たちはその道に進みたいのか?と改めて考えると、そうは思わなかった。じゃあ何を学びたいか?と考えた結果、「呉茂一氏から学びたい!」だったの。それで当時、呉氏が教鞭をとられていた学習院大学へ進もう!と。そこで古代ローマの歴史について深く触れていくことになった』と。

塩野七生さんの作家としての起源が、ここにあった。

『あなたたちは「これって将来、何の役にも立たないんじゃない?」と思うような授業もあるだろうけど、今はそんな事は考えずに、とにかく学びなさい。皆さんが30~40歳になった頃、それが標となったり役に立ったりする時がきっと来る。だからこそ10代の今のうちに学ぶべき事を少しでも多く吸収しておく必要がある。損なんて何もないのよ』

そう話された塩野七生さん。

『30にして立つ。40にして惑わず。50にして天命を知る。という言葉があるけど、なぜ40にして惑わずなのかというと、みっともないからよ。大のおとなが惑ってたら、様にならない(笑)。それから50にして天命を知るっていうけど、天は何も教えちゃくれないわよ。これはね、50になって自分にはコレしかない!ってものを知る(わかる)って事。そしてそれを極めるの。歳をとるということは、自分がやれそうな事を一つ一つやって消していくことなのよ。そうしていって50になった時に、コレ!ってものに行きつくの。』

ふむふむ、なるほど!と、わたしも頷きながら聞いていた。

高校生から『ほしい情報はインターネットで何でも調べられて知ることが出来る現代ですが、現地へ行ってみるのとの違いは何かありますか?』との質問に、塩野さんは『ある!』と即答。『ネットでは伝わらない事って沢山あります。たとえば絵画、筆遣いや色彩や影など、実物を観なければその繊細さや細部なんかを知ることが出来ないし、感じることも出来ません。私(塩野)はその絵を描いた画家や描かれた人物にね、心の中で問いかけるんですよ。会話をするんです。』

なんとーーー?!わたしも同じよ!!
と、テレビ画面に向かって思わず……

『ローマの街中にカラヴァッジョ(※16~17世紀を代表する画家)の絵の傑作といわれる6点があるんだけど、その絵を見た時に私(塩野)ね、「あなた!30歳という若さで、なぜ…どうして、こんな絵なんか描いたりしたのよ……」って(絶句しながら)カラヴァッジョに聞いたの。問いかけたのよ。絵を観ながらね。』

なんですと?!カラヴァッジョ!!!
嗚呼、なんという偶然…!先日絵画展で観たばっかだわよー!そしてわかるーー!わかりみーーー!(以下自粛…

『私(塩野)ね、執筆してる時に書きかけの作中の登場人物にも語りかけるの。「あなたみたいな人を、煮ても焼いても食えない男と言うんですよ!」って(笑) わたしもその中(歴史)にいるの。そうやって、自分だったらどうだろう?って考えながら書いてるのよ。』

これは興味深い話だ。塩野さんはそこで、自分の書いた人物に“惚れる”とおっしゃった。なるほど、「そこ(作中の世界)に私も居る」と言われる理由が、この言葉でわかったような気がした。

『“先” を見る(考える)のではなくて、“今”やりたいことをする。これも大切な事です。』と塩野さん。

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✾と、ここで終わってしまっているメモ…。果たしてどんなことを、この後に続けて書こうと思っていたのか。4年前の自分に訊いてみたくてたまらなくなっている。
テレビを観ながらメモをとった手書きのノートが何処かにあるはずなのだ。それを見ながらスマホに入力していたはずだから、どうにか探し出してこの続きを読んでみたい。(いや、そこは「続きを書く」じゃないのかーい!(笑)


「2024年の“今”のわたし」が、続きを知りたがっている。✾



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