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願わくば花のもとにて

こんばんは。

「願はくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ」

桜の歌人といわれるほど、桜の歌を複数残している西行の有名な歌を国語の時間に習った方もいらしゃるのではないでしょうか。

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古来、お花見といえば梅でした。
桜でのお花見が徐々にメジャーになってきたのは平安時代になってから。
嵯峨天皇が催した「花宴の節」が桜でのお花見の起源ではないかといわれています。

当初は貴族など限られた階層の行事であったお花見も時代とともにひろがり、戦国時代に行われた豊臣秀吉主催の「醍醐の花見」は贅を尽くした一大イベントであったと伝わっています。
その後、江戸時代になり桜の品種改良が盛んになると、現在有名なソメイヨシノが誕生。
この頃には、庶民の間でも神事以外でお花見が楽しまれるようになっていました。
花見団子とも呼ばれる三色団子が提供されるようになったのも江戸時代のことで、一説によると雪の色である白は冬の名残り、ピンクは桜と春、ヨモギを使った緑は初夏の訪れ、冬から夏へ向かう今この時を楽しむ意味合いが込められていたともいわれています。

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話は変わって、中国の唐の時代、王翰によって作られた『涼州詩』があります。

葡萄美酒夜光杯 欲飲琵琶馬上催
酔臥沙場君莫笑 古来征戦幾人回

(現代語訳)
葡萄の美酒を夜光杯にそそぐ
飲もうとすると馬上からは琵琶の音色が
酔って砂漠に倒れこんだりしても笑ってくれるな
古来いくさから生きて戻った者などほとんどいないのだから

登場する夜光杯は中国甘粛省特産の工芸品。
夜、杯に酒を満たして、月光の下にかざすと杯に光が透けることから、夜光杯と呼ばれているようです。
鉱石から削りだされた本物は、ガラスとは異なる独特な風合いで幻想的です。

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最上のお酒と月の光をたたえて輝く杯。
明日をも知れぬ身で愁いを晴らすべく杯を干す。
琵琶の調べとともに飲んで歌う姿は、時代が変わり国が変わり場面は違えど楽しいひと時。

夜光杯を片手に見上げる桜はさぞや美しいことでしょう。
ここ数年はなかなかお花見も含め、宴席の開催は難しい状況ですが、やはりこの季節になると開花時期を心待ちにするようになります。
花のもとにて再び集える日を願いながら、今日もまた自粛生活を過ごすのでした。

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