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バター遍歴

こんにちは。

明治・大正時代を舞台にした小説を読んでいると無性に気になる食材があります。
実際には当時の日本人にとってはまだまだ珍しかったバターですが、今読む私にとってはバターとソースの芳醇な香りを感じ取るように嗅覚が反応するようにも思えるのです。

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明治の洋食店として思い浮かぶのは、池波正太郎も通っていたという1895年(明治28年)創業の銀座「煉瓦亭」。
創業当時の「煉瓦亭」は、フランス料理店であったそうです。

「いまも、煉瓦亭の階段をあがって行くとき、二階からただよってくるうまそうな匂いこそ、昭和初期の洋食の匂いにまぎれもない。
現在、こういう匂いのする洋食屋は、煉瓦亭の他に私は知らない。
銀座の老舗中の老舗だ。」 池波正太郎『散歩のとき何か食べたくなって』

読むだけで入店前から高まる期待と美味しさの記憶が伝わってきます。
現代のとんかつの元になったのは、揚げた後にバターを乗せた仔牛のコートレット(牛肉のカツレツ)。
若い頃には三枚も食べることがあったという、池波正太郎も愛した名物料理です。

「ここは他の料理もいろいろとできるが、なんといっても皿からはみ出すほどの大カツレツが名物で、私も若いころは、これを三枚は食べたものだ」 池波正太郎『食卓の情景』

様々な作品に登場する洋食から立ち上るバターの風味は、今でこそ美味しそうの一言に尽きますが、当時は賛否両論どころか嫌煙する方が多かったのだとか。
時をさかのぼって戦国時代、ルイス・フロイスの『日欧文化比較』によれば「われわれ(西洋人)は乳製品、チーズ、バター、骨の髄などをよろこぶ。日本人はこれらのものをすべて忌み嫌う。かれらにとってそれは悪臭がひどいのである」と記載されており、かつての日本人にとってのバターを含む乳加工品は異臭をはなつ珍妙なものと捉えられていたようです。
海外の方がはじめて古風な納豆直面した際の感想のようなものでしょうか。

時代を経て、日本でも洋食の専門店が増えつつあった明治以降になっても、まだまだバターは万人受けするようなものではなかったのだとか。
それが、今ではいつの間にかバターを含めた乳加工品は、すっかり生活の中に溶け込んで、朝食にお菓子にと幅広く使用されるようになったのは不思議なものです。

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さて、幼少期にはバターとマーガリンの違いも意識することなく、お醤油やお味噌と並ぶ単なる調味料という位置づけでしかありませんでした。
長じてお菓子作りに熱中するようになってもバターはあくまでも材料。
主役になることはありませんでした。
しかし、いつしか私の中でバターは脇役から急にスターダムを駆け上がるように主役級の輝きを放つようになっていたのです。

有名どころでは、六花亭のマルセイバターサンド、プレスバターサンドなど焼き菓子との最強タッグを後目に、ハマったのはエシレのギモーヴ・オ・ブールです。
エシレ バターを原材料の30%も使用しているギモーヴは、口に入れるとジュワーッ!ふわわ~っととろけるような食感で無限に食べることができそう。
マシュマロも大して好きではなかったのが嘘のように夢中になりました。
※画像は公式サイトよりお借りしています。

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時を同じくして、折しも世間ではいちごバターなどのフレーバーバターブーム?が到来することになります。
当時は成城石井もカルディもない地方都市在住であったため、容易に入手できないことからジャム+バターで自作のフレーバーバターにも挑戦。
メディアで紹介されていたうにバターに出会ったのもその頃です。
うに+バターといえばパスタのイメージですが、この価格と前評判に否が応でも期待は高まります。
結論としては、残念ながらその時の私には分相応な大人の味として終了したのですが、バターの新しい世界の扉が開かれました。


そして、数年後、ついに運命のフレーバーバターとの出会いが訪れます。
私の運命のバターは、ナショナルデパート株式会社の「瀬戸内チョコミント」です。
特に「瀬戸内チョコミント」は、岡山産アップルミントを使用した清涼感ある香りにビターチョコレートがアクセントになった魅惑の一品。
調味料とか言ってごめんなさい、あなたは主役です。

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「自分を甘やかすご褒美ギフト、大切な人へ送るバターギフトで世界のどこにもない感動体験」をというフレーズのフレーバーバターを少しずつ楽しめる「ブール アロマティゼ 」も迷わず購入。
キャラメル、チョコレート、バニラ、フルーツ、個性的で彩豊かな組み合わせは、控えめに言って、バターの宝石箱です☆


オーナーは、元々はパン職人さんとして活躍されていたようで、レシピ集も出版されています。
ナショナルデパートさんといえば、プレスリリースも要チェックです。
食欲をそそる商品画像、オシャレなパッケージのデザイン、購買意欲をかきたてる文言。
華やかでセンスの良いラインナップは、3~6か月待ちの予約必須となるのも納得です。
実は、私が今一番取材をしてみたい企業様とオーナーさんです。

また、購入のハードルを上げてしまうようで本当は教えたくないけれど、ついつい紹介したくなってしまう。
毎日の生活に彩を添えてお家時間がちょっと楽しくなるフレーバーバターの底なし沼へ足を踏み入れてみませんか。

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