異世界転生‐‐男の娘2/僕とリリーの奇妙な関係 19-21
19 美醜と善悪
「ねえ、先生、先生は美醜と善悪ってどう思う?」
砂浜に座った凛々子が聞いてきた。
今日は日曜日。凛々子に海に連れて行って欲しいとねだられたのだった。
密室でのSMプレイもいいけど、こんな普通のデートも素敵だ。
薄曇りの空からは柔らかな光が降り注ぎ、浜辺の波は穏やかな海の姿そのものだった。
「どうしたのですか、急に」
いつになく真面目な話に思えたのだ。
「ゲームしてても、テレビアニメとかでもさ、善人や正義の味方は穏やかのはともかくとして、基本的に美しく描かれて、悪人側は醜い容姿に描かれるでしょう。現実はそうでもないのに、不思議だなと思って」
そう言う凛々子はとてもかわいい。
現実はそうでもないって、かわいい凛々子自身が善人じゃないって言いたいのだろうか。
僕は砂浜に棒きれで円を描いて見せた。
「そうですね、美醜と善悪をいきなり考えるのではなくて、こんなのはどうでしょう。美醜とは何かをまず考えるんです。これは、なんとなく僕が今考えた事ですけど、この円はきれいだと思いますか?」
「きれいな丸だね。いいんじゃない?」
凛々子の答えを聞いて、僕はその横にもう一つ描く。
片方はぐるりと半円を描き、半分はぐにゃぐにゃした線にしてみた。
「これはダメだね。きたないよ。そう、醜いって事ね」
凛々子の反応は予想通りだ。
「今では差別的だとして使われなくなったけど、昔はカタワって言葉があったんです。例えば怪我や病気で片腕や片足を無くした人に対してそう言う表現をしていました。カタワって、つまりは片方は輪になっていないって事。左右非対称なのが不健全で、忌み嫌われることになったんですね」
「それって、かわいそうだよね」
「でも、そういう昔の人間の反応は無理もない部分もあるんですよ。その手をどうやって失ったかなんて、他人にはわからないんですから。もしかしたら感染性の病気を持っている場合だってあるわけだから」
「つまり?」
「つまり、テレビや漫画とか作る側の気持ちとしては、正義の味方を好まれるタイプに描いて、悪を嫌われるタイプにすることが倫理的にも正しい作り方なんじゃないのかってことです。ただ、最近はアンチテーゼとしてかっこいい悪役なんてのもいますけど」
「ふうん。聞いてよかった。先生、見かけによらずわかってるじゃん」
凛々子が僕の頬に唇をふれさせた。そして顔を離して僕を見る。
素敵な時間だなあ。凛々子に責め苛まれることも僕には素敵なんだけど、やはり尊敬されるのはいいよなって思ってしまう。
「でも、本当にいきなりどうしたんですか?」
照れ隠しに聞いてしまう。
「なんかね、夢でみたんだ。ソラリムで戦う女戦士の私が醜い触手と戦うの。でも、あとで醜いからって悪とは限らないみたいな説に困ってしまうんだよ」
凛々子は海の方を見てそう言った。
結構深いこと考えているんだな。中学二年生にしては。
いや、中学二年生が考えそうなことなのかもしれないと思い直す。
でも、ふと僕の中でもその紅い触手というのが心のとげに引っかかる感じがした。
「夢の中でソラリムの冒険してるんですか? 楽しそうですね」
僕が言うと、
「先生もソフト買ってやろうよ。オンラインでつながれるから。あたしがソラリムの世界を案内してあげるよ」
そう言ってくれた。
そういうのも面白いかもしれないな。それなら、家庭教師の授業があるとき以外でも、凛々子と繋がれる。
「そうですね。今度ソフト買ってみます。一緒に冒険しましょうか」
僕が言うと、凛々子は嬉しそうにうなずいて、
「その時は私が作ったキャラの男の娘サキュバスやってね」
と言った。
20 入り組んだ世界
ハイルース山の寺院での朝、僕は目が覚めると同時にリリーと話をしたい衝動に駆られてしまった。
夢の中で、僕は凛々子とソラリムのゲームを始めようとしていたのだ。
しかも男の娘サキュバスのキャラまで押し付けられていた。
それはこの世界の事なのだろうか。
この世界は凛々子が創造した世界なのだろうか。
しかし、僕もリリーも凛々子の意志とは無関係に、実際に生きているのだ。
もしかすると、リリーが凛々子に影響を与えて、そう言う展開に持って行ってるのか?
しかし、凛々子がリリーに影響されるのなら、圭一だってソラリムのジュンとしての自覚を少しくらい持っていてもいいはずだ。
考えるほどにこんがらがっていくみたいだ。
このこともロイナース師に相談してみよう。
朝食の席でリリーを見ると、彼女も僕に一瞬目を合わせてうんと頷くように顎をひいた。
あとで話があるって意味だろう。
テーブルには僕らとロイナース師の四人がついて、別のテーブルに弟子たちが食事をしている。
硬いパンとヤギのミルクが各人分用意されていた。
昨夜の夢、リリーからしたらどういう思いだろうか。
二人でやるソラリムのゲームがこの世界での出来事と連動していたとしたら。
それは凛々子がこの世界の神ということになるのだろうか。
でも、今も僕は自由に水を飲んだりパンをかじったり、行動しているし、誰かに操作されているなんて思いは全然ないのだ。
多分それはリリーも同じだろう。
だとしたら、凛々子のプレイするこの世界の二人のゲームはなんの意味があるのだろうか。
「実は、リリーにお願いがあるのだが」
ロイナース師が硬いパンを咀嚼したあと言った。
なんですかとリリーが返事するが、少し上の空なのは仕方ないことだったろう。
「ケンタのこと、しばらくここで修行をさせたいと思ってな。昨夜試験してみて、高い才能を感じたのじゃ。ケンタが才能開いて強い魔法剣士に成れれば、ホワイトホースのためにもなるじゃろう」
ロイナース師の言葉に、ケンタは頬を赤らめて眼をうるませていた。
「それは、問題ないよ。ホワイトホースの政務官に言っておくから」
リリーが気軽に請け負う。
リリーにとっての問題は今は別のところなのだから。
「実は、僕もロイナース師に相談があるんですけど」
リリーと二人だけで考えるよりも皆に聞いてもらった方が良いだろうと、僕は話し始めた。
僕とリリーが連動する前世の夢を見ていること。
その夢が、過去の事じゃなくて、同時進行的に進んでいる異世界の出来事みたいなこと。
「もしかしたら、これって僕の中のサタノスが関係しているんでしょうか?」
最後にそう訊くと、ロイナース師は少し伸びてきた白い顎髭を左手でつまんで難しい顔をした。
「そうかもしれん。というか、それ以外に考えられんな。しかし、夢で見るというだけでは特に問題ないだろ」
他人の夢の中の事は、自分にはどうにもできない、そんな言い方だった。
「まあそうだよな。でも、ジュンの中のサタノスをどうするか、とか、何か考えてるのか?」
今度はリリーがロイナース師に聞いた。
「確かに、カルビン司教が言ったようにジュンの身体の中にはサタノスの異様な能力が感じられる、しかしサタノスの意思が感じられないのだ。もしかしたら、サタノスの心はジュンに吸収されてなくなったのかもしれん。希望的観測だが、そうであって欲しいものだ」
「でも、だとしたらカルビン司教たちが感じたというサタノスの意思は何でしょうか?」
僕にとってはそこが重要なのだ。
「受け取った側には、彼らなりの感じ方があるのかもしれないな。お前もしばらくここで様子を見ていくか? ケンタたちと一緒に修行していってもいいぞ」
ロイナース師の提言はありがたいものだったけど、僕はやめておくことにした。
僕はリリーと一緒に居たいのだ。
彼女と一緒に居ることが、僕にとっての今の最重要なことのような気がしていた。
21 下山途中で襲われて
これでゆっくりリリーと話せるな。
ケンタとしばらくのお別れは寂しさもあったけど、今の僕とリリーに好都合なのは事実だった。
僕とリリーは、寺院の門でロイナース師やケンタといったん別れの挨拶を交わした。
そして、山影から上る朝日を浴びながら、二人で密着して馬に乗って下山を始めた。
一段一段階段を下りていく蹄の音。
そしてこの、お尻に感じる鞍の振動。
これは紛れもない現実だ。しかし、圭一になって凛々子とじゃれ合う夢の中でも、僕は同じようにリアリティを感じているのだ。
「もしかして、僕らって二つの現実を行ったり来たりしてるんでしょうか?」
背中に密着しているリリーに聞いてみた。
「どうなんだろうな。俺もあれが前世の記憶とは思えないんだよな。凛々子が俺だったとしたら、俺が凛々子の夢を見ているのに、凛々子はこの世界でリリーとして生きていることを自覚してないのは、一方通行すぎる気がするし」
「それは、凛々子は夢で見るんじゃなくて、ゲームとしてリリーを体験しているということじゃないですか?」
「その凛々子のゲームがこの、俺達の世界だというのは一方的すぎるってことだよ。ちょっと寄り道するか」
リリーは馬の手綱を引くと、下り階段を左に入る脇道に馬を導いた。
どうしたんですかと聞くと、
「凛々子の考えないようなことをやってみたらどうかなって、いま思いついた」
リリーが僕の右手で股間をキュンと握った。
この道は、確か春の妖精の池に通じる道だったはずだ。
三年前に一度通っただけの道だったけど、記憶にははっきり残っていた。
「凛々子が考えないようなことって、なんですか?」
僕の質問に、リリーはうふふっと笑って、気持ちいいことだよと答えた。
「お前の精液を女が飲んだら若返るみたいだけど、普通にセックスしたらどうなるんだろうな」
リリーの疑問は、思っても見ないものだった。
男の娘サキュバスは、女性とはセックスしないからだ。
「まさか、そんなこと考えてるんですか?」
そう聞いた時には、春の妖精の池が目の前に見えてきた。
馬からヒョイッと降りるリリー。
そして、僕が降りるのに手を貸してくれた。
「ふふふ、今からお前を逆レイプしてやるぞ」
リリーが嬉しそうな顔でそう言った。
そして僕を芝生の上に抑えつける。
僕は強く抵抗することもできなくて彼女のするままだ。
だって、彼女は僕のご主人様なのだから。余程の理不尽でない限り抵抗することはないのだ。
「僕を逆レイプすることが、凛々子の考えないことだってことですか?」
仰向けで抑えられた僕は、ローブも捲り上げられて裸の下半身が露出する。
「まあ、そういうこと。中学生の凛々子はさすがにそこまでしないだろう」
リリーが僕にキスしてきた。
リリーにキスされるのは僕も嬉しい。
リリーのことは僕も大好きなのだから。
二人の舌がからみあって熱い唾液が二人の口の中を行き来する。
今が一番幸せかもしれない。そんな思いがふと湧き上がった。
リリーの右手が僕の小さめのペニスを握った。
僕のそこはもういっぱいに硬くなっている。
それでも長さは10センチいかないくらいのお子様ちんちんだ。
リリーが起き上がって、腰を浮かせる。腰紐を解いてリリーは自分の下着も一緒にずり下す。
彼女の陰毛が目の端にちらりと見えた。
三年前と比べて、そこは立派な大人の風情を醸し出している。
リリーが腰をずらせると、僕のペニスの先端に股間の割れ目が密着した。
リリーの頬が上気して赤くなっている。眼も潤んで息も荒い。
リリーの腰がゆっくり下りてきて、僕の亀頭がぬるりとした温かいそこに飲み込まれていく。
キュンとくる快感。包み込まれる安心感。
ああ、とリリーの甘い声が聞こえる中で、僕は久しぶりの爆発するような射精をしたのだった。
「おいおい、こんなところでお楽しみかよ。いい気なもんだぜ」
その声と、ざわざわした人の気配が、僕とリリーの気だるいまどろみをいきなり中断させて邪魔してきた。
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