異世界転生‐男の娘/僕はこの世界でどう生きるか 44‐46
44 聖賢者の洞窟
九戒の精を受けた僕は、体力抜群で重い荷物を軽々と運ぶことができた。
それに戦闘能力が高まってるのも感じたし、そういうところで九戒の強さというのを感じる。しかし、これだけの能力を持ってたのに、キャラメイクで失敗してただの大イノシシになってしまってたというのは悲しいだろうなあ。
そろそろ、五蔵たちは元の世界に戻ってる頃だ。
あのイノシシ、地団駄踏んで悔しがってるのではないかな。
思わずクスリと笑う僕をリリーが見とがめた。
「なににやけてるんだよ」
彼女の左手がこつんと僕の肩を小突いた。
何でもないですよ、と言いながら周囲を見回す。
高原の村、シバルクを出てずっと下り坂が続いていた。
ゲーム内でも山あり谷ありで立体的に起伏のある土地柄だったけど、現実に歩いてみると、疲れるし急な下り坂は滑って転びそうになるしなかなか大変だな。
見晴らしの良かった高原の道から、次第に谷沿いになって木々が生い茂り見通しが悪くなってきた。
「ひと雨きそうだよ。テント布広げる準備しておこうか」
前を歩くリズが振り向いて言った。
空を見上げる。
本当だ。周囲が暗くなったのは木々に囲まれただけじゃなくて、空を暗い雲が多い始めたからだった。
「確か、この近くに洞窟があったと思うけど」
カオルが言いだした。
そうだった。ゲーム内ではこの辺には『聖賢者の洞窟』というのがあったはずだ。そこではゲームプレイヤーを聖賢者が導くイベントがあった。
「でも、洞窟ってだいたい熊や狼なんかの巣になってたりするんだよな。下手したら山賊の巣窟だったりして、やばいぞ」
リリーも木こり生活をして、この世界でずっと生きてきたわけだから、そのへんはよくわかってるようだ。
ゲームの中では洞窟なんか見つけたら、取り合えず入ってみて宝箱を探すものだけど、現実にはそんなことやばくて簡単にはできないのだ。
歩いていると、道の左側に岩肌が割れているところが見えてきた。
「あれですよね」
カオルが僕に聞いてくる。
「そうだね。聖賢者のイベントがあったよね」
僕が答えると同時位に土砂降りが始まった。
ああ、もうしょうがないなとリリーが叫んで、その洞窟に向かって走った。
もし狼やクマが居ても、僕とリリーだけじゃ苦労するだろうけど、五人いる今なら何とか対処できるだろう。
洞窟に飛び込んだ。
当然、普通なら中は真っ暗なはずだ。でもそうじゃなかった。
「これは、魔法石の灯りですよね。魔法使いの洞窟だったんだ、やっぱり」
洞窟の壁に備えつけられた灯りを見つめてカオルが言った。
という事は、やはりここはゲームのシナリオ通りに聖賢者の洞窟なのだろうか。
狭い入口の中は少し広いホールになっていて、さらにその奥に続く穴が薄暗い魔法石の灯りに照らされていた。
雨宿りするだけなら奥まで探検する必要はない。
ここでじっと雨の止むのを待っていればいいのだ。
「奥の穴ちょっと見てくるよ」
タバサが言って、リズと二人で偵察に行こうとしていた。
うーん、その必要あるのかな。僕が止めるまもなく、声がその洞窟に響いてきた。
勇者よ、待っていたぞ。奥へ進め。
洞窟内のエコーを響かせながら声はそう言ったのだった。
45 洞窟に罠はつきもの
「誰だ? 姿を見せろ」
すぐにリリーはそう叫んだ。
しかし返事はない。誰かが僕らを見張っているのだろうか。
カオルを見るけど、魔力を持つ彼女にもなにも気づくことはないようだ。
僕の中に蓄えられたいろんな知識をまさぐってみても、思いつくようなものはない。
「とにかく、考えられることは、この奥にいる何者かは僕らの存在に気づいているけど、僕らはその何者かをまったく知らないということです。危険ですよ、いったん出ましょう」
僕が言うけど、リリーは首をふった。
「一人じゃ無理だけど、五人いれば何とかなるだろ。来いって言ってるんだから言ってみよう」
リリーが勇者の顔で言った。
「では、防護力を引き上げる呪文しますね」
カオルが言って両手の指を繊細に動かした。
僕ら五人の身体に光の幕のようなものが降りてきて、それに包まれた。
その光はゆっくり消えていったが、身体が強くなった感じは残っている。
しばらく効果が残るタイプの呪文のようだ。
「じゃあ、行くぞ」
リリーが先頭になって、すぐにタバサ、リズが続く。
その後にカオルで、僕は最後尾だった。
やはり、戦闘では僕の出番はないのかな。なんだか寂しい。
曲がりくねった岩の穴を通って行く。
ところどころに魔法石が灯っているから、足元に少し気をつける程度で先に進むことができた。
右に曲がったり左に曲がったり、登ったり下ったりで、やっとたどり着いた広間は、棺桶の並ぶ霊安室みたいだった。
僕らの足音に反応したのか、その棺桶の蓋が跳ね上がった。
中から骸骨が何体も立ち上がってくる。
「やっぱり罠なのね」
タバサが先手必勝と炎の短剣で斬りかかった。
剣を構えようとしたその骸骨兵士は、タバサの剣で炎を上げて崩れ落ちた。
リリーの鞭が別の骸骨を電気ショックでバラバラにする。
リズとカオルは後方から、それぞれ弓矢と氷雪魔法で援護している。
カオルの氷雪魔法を食らうと、骸骨の動きが極端に鈍くなって、倒すのが簡単になるようだ。
一分もかからずに、ここに現れた骸骨兵士は全滅させられた。
なかなか強いチームじゃないか、僕らは。
「ボスはどこだ? 姿をあらわせ」
叫ぶリリーに答える声はない。
骸骨兵士を操るボスは、多分死霊術師なのだろう。
ここに巣食っていたのは、聖賢者じゃなくてそっちだったか。
その霊安室の奥には扉が二つ並んでいた。
右の扉は木の扉、左は鉄の扉だった。
リリーは鉄の扉に手をかけた。取っ手を引くがびくともしないようだ。
タバサが木の扉を開く。今度はすんなり開いた。
「気をつけて、足元、罠がありますよ」
カオルが叫んだ。カオルの言うとおり、そこには低い位置に細い紐が張ってあり、それを足で引っ掛けると矢が飛んでくる仕掛けが見える。
解除するからどいてとリズが言って、その紐を横の方から切って弓矢を空振りさせた。
そうしてその先を進んでいく。
さっきの鉄の扉が気になるな。ゲームではこういう場合、木の扉のあとの部屋にレバーが有ったりしてそれを操作することで鉄の扉が開くなんてギミックが設定してあるものだけど。
狭い通路がだんだん広くなってきた。
そして左に曲がると、真っ直ぐな通路の先に大きめの扉が現れた。
いかにもボスの部屋のドアという感じだ。
「あの先がきっとボスの部屋です」
カオルも同じことを感じたのだろう、そう言った。
リリーが一つ深呼吸すると、おもむろにそのドアを開く。
その奥には広い空間が開けていた。
これまでのどの場所よりも明るく魔法石の光が輝いている。
一番奥の一段高くなった場所に王の椅子みたいな豪華な席が設けてあり、そこに一人の髭をはやした男が座っていた。紫色の法衣は金色の金具が所々に縫い付けてあるきらびやかな物だった。
「お前がボスか」リリーが鞭を構える。
タバサとリズも戦闘態勢。カオルも魔法の準備OKだ。
なんだか僕だけお呼びでない感じ。
「勇者よ。よくぞここまでこれたな。お前が本物の勇者かどうか試したのだ」
髭男は厳かな調子でそう言った。
46 そっちが試すなら
「適当なこと言ってるんじゃないぞ。手下がやられて不利になったからそんなこと言ってるんだろ。だいたいお前何者だよ」
じわじわその髭男に近づきながら、リリーは懐疑的な言い方をする。
僕は一瞬、やっぱり聖賢者だったのかと思いそうになったが、リリーの言うことのほうが正しい気がしてきた。
「私は賢者モレアーノである。勇者を指導するのが役目じゃ」
話し方は確かに賢者みたいな話し方だ。
「油断しないで。こいつなんだか胡散臭いよ」
タバサも用心深い。
「お前が賢者だって証拠はあるのかよ」
リリーの問いかけに、さすがの賢者も困った様子だった。
「ふふふ、どう言えば信じてもらえるのだろうな。疑心暗鬼な下賎な者達に」
首を振りながら髭男が呟いた。
「向こうが試すなら、こっちも試してやればいいのではないでしょうか」
今度はカオルが言い出した。
試すって言ったって、どうやって、と聞くリリーに、カオルは僕の方を指さした。
リリーがふふっと笑って頷いた。
「おい、ジュン。お前の淫乱ケツマン波をあいつにぶっ放してみろ」
リリーが僕に命令した。
本物の賢者なら僕の魅了の術なんかかからないだろう、という意味だ。
しかし、僕の魅了の術は淫乱ケツマン波って名前がすっかり定着してしまったみたいだ。
なんか悲しい。
結局僕って、こういう出番しかないんだな。
倦怠感にも似た諦めの気持ちと共に、僕は髭男に背中を向けると、ローブをめくって裸のお尻を拝ませてやった。
ぐふっと髭男が呻いて、よろよろと王座から降りてきた。
すっかり眼は術にかかっている眼だ。僕の方に近づきながらローブを脱ぎ捨てた。
股間のものはすでに天を向いている。
この時点でこいつは賢者じゃないってわかったわけだから、リリーの鞭で感電させて気絶させればいいのに、皆は成り行きを見守ってるだけだった。
え? このままこの髭男に僕は犯されるわけ? このダンジョンで?
そりゃあ、僕は男の精液をお尻に受けることでエネルギー補給になる男の娘サキュバスだけど、仲間全員に見られながらってのは、やっぱり恥ずかしいんだけど。
僕のそんな気持ちなど誰も思い至らないようだ。
皆が興味深げに僕のお尻に見入っている。
こいつらひょっとして全員腐女子なんじゃないか、という言葉がふとわいてきた。
「ちょっと、もうこいつが賢者じゃないってわかったんでしょ」
僕が言うけど、皆は反応しない。
「まあ、お前もエネルギー補給になるからいいじゃん」
というのがリリーの言葉。
やっぱりこういうのって興奮するよねというのがリズの言葉だった。
見せものじゃないぞと怒鳴ってやろうとしたら、髭男の口が僕のお尻に接触してきた。
ぬるりと舌がはう。
ああん。こういう場面でもお尻の穴を舐められるのは気持ちいい。
この死霊術師はどんな能力を持ってるんだろうな。
男の腕が僕の腹を持ち上げるようにして、そいつの物の先端が僕のお尻をこじ開けてくる。
濡れ濡れになった僕のアナルは、いつものようにそいつの肉棒をするりとくわえ込んだ。
ああ、気持ちいい。いきそうになってしまう。う、うふん。
思わず声が出てしまった。
四人の女達に見守られながら髭男に激しくお尻を犯される。
女達は勇ましく戦う戦士なのに、男の僕は敵にお尻を差し出して快感にあえぐという役回り。
かっこいいヒーローとは正反対のキャラ設定に無常感を感じてしまう。
でも、気持ちいいのには逆らえない。
い、いくう、と叫んで僕はエクスタシーを感じてしまった。
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