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【似非エッセイ】多様性ー犬社会もしかりー
日曜日の朝、平日と同じ時刻にアラームが鳴り目が覚める。
リビングから不規則に”カタカタ”という音がする。そう、それは彼女なりの”ささやかな主張”なのだ。
ベッドから降りて寝室の扉を開けると、カーテンの隙間から差し込む薄明りの中、もふもふした影が姿勢を低くして申し訳なさそうに「キャンキャン」と声をかけてくる。彼女はトイプードルの女の子。名前は”はなちゃん”。14歳だ。
毎朝の散歩が日課の彼女。平日は5時過ぎに母が起きて散歩に連れていくのだが、日曜日は私が6時に起きるのが最も早く、それでもはなちゃんの体内時計からは1時間も相違があるため、ゲージの中で地団太を踏んで「早く起きて散歩に連れていけ」とアピールしてくる。
はなちゃんを抱いて外に連れていく。彼女を抱きかかえるのは少しコツがいる。抱き上げられるとき、気を遣ってか彼女は少し跳ねる。それを上手くキャッチして、安定する部分に手を添える。今日はうまくいった。
腕の中の彼女の体温、重さ、毛の質感は14年間という歳月の中で少しずつ変化しているように思う。昔ほど温かくないし、どことなく頼りないし、毛もごわごわした。でも家を出て300m程度のところで私の脚に前足を掛けてくるのだ、「もう帰ろうよ」という様に。誰が散歩に連れて行けと言ったんだと思いながら引き返す。それは14年間変わらない。
”老い”は着実にやってきていて、はなちゃんの目は真っ白だし、名前を呼んでもこちらに来ない(聞こえないのか聞こえないふりなのかは不明だが)。犬のくせに鼻も悪い。あ、多様性の時代に「犬のくせに」って言っちゃだめか。
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