見出し画像

#読書感想文 ホリー・ガーデン/江國香織

 先日、職場の同い年の子が結婚すると聞きました。これで、同世代の同僚で独身女は私だけとなりました。

 結婚をするかキャリアを積むか。あるいは趣味に没頭するか。そんな議論をよく耳にします。”ワーママ”というタグも急激に普及していますが、つまるところ育児における女性の負担感が大きいこと、子どもを産むことはキャリアや趣味を諦めざるをえない社会構造であるということを各種コンテンツからインプットしまくっている今日この頃です。

 20代後半に差し掛かるなか、孤独が見え隠れする夜にふと「結婚しても地獄、結婚しなくても地獄」なのではないかと思いました。でも、このマインドが「結婚したら天国、結婚しなくても天国」に転換された時に結婚したいなあという結論にいたりました。これから”アラサー独身バリキャリサバイバー”として戦っていくために仲間意識を持てたのが江國香織さんの「ホリー・ガーデン」です。

 前置きが長くなりましたが、この物語には2人の女性が登場します。過去の恋愛に身も心もボロボロにされ、今もなお元恋人の呪縛の中に生きる果歩。そして妻帯者との恋愛を楽しめる大人を演じようとする静枝。ふたりは幼馴染で、30歳目前のいまでも友達であり、お互いの恋愛を心配しています。

 この本を読み終えて感じたことは、果歩と静枝のどちらにも共感できたし、一見正反対の二人は似た者同士なんだろうなということです。果歩を傷つけた元恋人は妻帯者であり、それを強く非難していた静枝も同じように不倫しているのです。大人になりきれない果歩も、大人であることを自覚しようとする静江も、アラサーという年代の中で必死に生きているんだと思うと同世代の友達という感覚で、読了後は温かい気持ちになりました。

 この本が発刊されたのは平成6年。今ほどジェンダー平等が取り沙汰されていなかった時代。果歩も静枝もキャリアを追い求めている訳ではなさそうですが、独身と既婚の狭間で揺れる心境は現代と変わらない気がします。

 果歩は大人であることを忘れないようにマニキュアを塗っています。泣きたいときは、爪に塗られたマニキュアを見て「大人なんだから」と泣くのを我慢します。そんな社会的に生きていくためのお守りを私も持っています。そんな小さな共感が散りばめられた一冊です。


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,831件

#多様性を考える

27,903件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?