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成績が良くてみんなの自慢のお兄ちゃんと平凡で無駄な私の話


兄妹の呪い

成績優秀な上の子と、そうじゃない平凡な下の子の組み合わせなんてどこにでもありますよね。

うちもそうでした、平凡な何もない私とどこに行っても注目される優秀なお兄ちゃん。
どこに行っても、学校でも、家族からも友達からも「お兄ちゃんは〜〜だね!」とか言われるそういう毎日、
自慢のお兄ちゃんでもあり絶対に手が届かないいつまでたっても自分の劣等感だけを抉り続ける存在。


兄妹の呪い

いつからかそう呼んでました。


この兄妹の呪い、なかなかに強力で、厄介なところは呪いをかけている呪術者たちが無自覚なところ。無自覚なんですね、悪意無く呪術者になってる。

これが、呪いだって気づいたのは高校生の時で今はもう大人なのにまたこの呪いを思い出してしまった。


成人式って呪いから解いてくれる儀式とかではなかったんですね。

それはどうでも良くて。
この呪いにずっと縛られてきました。
小学校で児童会長をやった兄のことが眩しくて、羨ましくて、自分も児童会長になった。

中学で生徒会長をやった兄が眩しくて、
私には何もないって思われたく無くて、
兄の話ばかり上がる家庭に私のことも見てほしくて、
私も立候補した。勿論既に私は平凡で、会長には立候補できなかった。副会長だった。

高校。兄には学力で勝てなくて、どうしようもなくて、サボりがちな兄には絶対負けないって思って三年間皆勤で通学した。

2年生の秋には寝坊して朝起きて5分で家を出て学校まで全力で走ってギリギリ間に合ったこともあった。

でも、学校をサボって水族館に行ってた兄の話が上がった。

皆勤賞ももらったけどゴミになった。


まだ気付けなかった。



高校を卒業して偏差値の高い大学に入れば私のことを見てくれると思った。演劇学がやりたかったから、芸事だと馬鹿にされないようにとにかく早稲田大学の文学部に入ることだけを考えていた。

浪人した。兄も浪人した。同じだ


と思ったが、私は早稲田志望の弱い浪人生。
兄は東大か医学部志望で仕方なく浪人、だった


平凡な私にはよくわからなかった、医学部志望は仕方ないらしい。でも、浪人させてもらったことは感謝してる。ありがとう、両親。



第一志望に落ちた。



浪人の途中から自分が平凡なことに完全に気づいた。がんばったが届かなかった。努力もそうだが、能力が足りなかったと気付いた。


私は今、大学の哲学科で芸術を学んでいる。実学ではないから「何を学んでるの?」と家族から聞かれることもあるが兄の学問畑とは畑が違うからか何も言われることはない。

でも、親族で集まる食事会では兄の医学部話か、兄が休学して旅行をした話しか上がらなかった。

一言も話さずに食べた天ぷらの味はよく覚えていない。


両親が払ってくれた食事代、私の分が掛かることが迷惑だろうと思った。次から呼ばなくていいよ、、なんて言ったら母が悲しむから言えないけど。

もう気付いていた。
気付いていたのに忘れてた。

家族のことは大好きだけど、多分一生この呪いは解けない。

でも育ててくれてありがとう。