新海誠-「喪失」から「気付き」へ-
新海誠作品はこれまで「喪失」をテーマとしていた。お互いを大切な存在として思いながら、その大切さに気付かないまま、乃至は、気付きながらも繋がる事が出来ないまま、最後に物語は終焉を迎えてしまう。ここには大切な存在の喪失のモチーフが私達をして哀切させ、「悲」を身中に点綴させるような手法が見られる。「悲」が縁取る世界が、逆説的に「愛」の尊貴さを自覚せしむるというそれだ。
このモチーフは萌芽的な形で続いていく。しかし、やがて作品は「気づきの物語」へと変容していく。それを最も象徴的に描破したのが「君の名は。」である。
『君の名は。』には「。」と句点が入っている。外形的にこの句点表現は、文法的な違和感を生じさせるが故にこそ、句点の存在は、作者のそこに込められた強い意図を意識させるのに寄与している。その意図こそが「気づき」である。
「僕は君の名前を喪失なんかしていない!忘れてなんかいない‼︎君の、君の名は◯◯だ!」
このお互いの存在の繋がり、存在のかけがえなさ、ここに強い強い意味を込め「君の名は"。"」と句点で終止させるタイトルにしたわけである。
かかる氏の作品上の、私は進化とみるが、変遷を非常に評価したい。
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