見出し画像

花のいろは



花は刻一刻と形を変えてゆく。
さっきまで元気だったのに、
水揚げの良し悪しで一瞬で
萎れてしまったり。。

水揚げって本当に大事。
上手くやってあげたら、
ビックリするくらい長保ちするし、
こまめに水揚げし直すと、
みるみる元気を取り戻して、
また、誇らしげに胸を張ってくれる。

花屋に勤めて、
湯あげの驚きの効果を初めて知った。
花は市場から仕入れてきて、
最初の水揚げでお湯に短時間つけてあげると、
すごく長保ちしてくれる品種がある。
(つけ置き長時間放置は良くないけどね)

大きい花屋は忙し過ぎてあまりやらないけど、
本当は湯あげ処理してあげたい花たちは意外に多い。

私は枯れない花には殆ど興味がないのだけど、

最高の状態を引き出す(これが1番難しい)、
出来るだけ新鮮な状態をキープする、
出来るだけ長保ちさせる、
色合いが落ちていく過程を楽しむ、
などなど

「美しい状態をあらゆる手段で引き伸ばす」

そのことにはめちゃくちゃ興味がある。
(興味があるだけで、
日々の業務に追われていると、
なかなか出来ないことも多いし、
まだまだ失敗ばっかりで、
道のりは遠いけど...)


というか、、
花屋の至上命題の一つは、

花をいかに
美しいまま!
長保ちさせるか!!
と言っても過言ではない。

枯れない花には興味がないんだけど、
枯れさせないは超大事。

この矛盾を愉しむのが切花。。

そしてこれまた矛盾なんだけど、
私は保ちにくい花が好きな傾向にある。

性根がほんと、天邪鬼なんだな。

草花系の花は兎に角、保ちにくい。
茎が細めで、お水が好きで、
花畑で綺麗に咲く花を
イメージしてもらうと分かりやすい。

コスモス、
マトリカリア(大好き!)、
アストランチア、
デルフィニウム、
紫陽花、とか。

日々草とか切花では、
ほぼほぼ売ることが出来ない花もすごく好きで、
本当は切花を売ってるより、
庭師になった方がいいのかもしれない。。

明日には、
いや、下手したら、
一度摘み取ってしまったら、
ただちに枯れてしまうような花が、
たまらなく好き。

性癖が伺えますね。
ふふふ。


今日のランチ。

製図の仕事先で、若い男性の、
パートナーとの喧嘩の愚痴を無責任に聞いていた。

彼女が怒りん坊で、
かなり頻繁に怒らせるらしい。

いいな。
喧嘩するほど仲が良いって言うよね。

(リア充爆発しろ。嘘だよ) 笑。

その諍いの中で、よく、じゃあ別れる?って話になるんだって。
そうすると、彼女はブチ切れるらしい。

そりゃ、そうだよね。

大好きな人に
構って欲しい、
困って欲しい、
気にかけて欲しいだけなのに、
すぐ別れるだなんて
1番言っちゃいけない言葉のような...

まぁそれはさておき、彼は彼女に、

「私の20代後半を捧げさせておいて...」

というニュアンスの言葉をよく言われるらしい。

あらまぁ。。

同席した既婚女性は激しく共感してたけど、
私と言えば、青天の霹靂くらい、
そんな感覚、
久しく忘れていた。。

三十路も半ばを過ぎてしまい、
もう結婚願望もあるんだかないんだか...
それすら分からなくなってしまった私には、
なんだか高原の清涼な空気のように新鮮で
瑞々しい言葉だった。

摘みたての花みたい。

20代後半なんて全っ然若いよー!
そんな「捧げる」なんて大袈裟過ぎるよー!


声を大にして言いたかったけど、
その感覚のフレッシュさに面食らって
その場では気の利いたことが
何一つ言えなかった。
(言われる側の男性も真剣に悩んでいたし...)
既婚者たちとの意識の違いにびっくり。
だから私は結婚出来ないのか...?苦笑

でも、20代後半から30代にかけてって
女性は1番結婚したい時期だもんなぁ…
なーんてもう錆びついた記憶を掘り起こしてみたり。。

思えば、私もそんな感じだった。。

と言いたいところだけど…

うーーーん。

30までは結婚したいとか
全然思ってなかった。。

まだまだ子どもだったし、、
自分のことに精一杯で、
誰かと生活を共にするなんて、
出来るとは到底、思えなかった。

私は不器用で、
一つのことに集中すると、
他がとたんに疎かになってしまう。

あの頃はまだまだ感受性のコントロールが
出来ていなかったし、
仕事も何年経っても
上手く立ち回れなかった。

そして、すごく怒りっぽかった気がする。

すぐにイライラしてたし、、

言わなくてもいいようなこと
言っちゃったり。。

当たったり、障ったりしてたなァ。

あの頃、すぐに何かに傷ついていた。

何にだっけ。。

忘れちゃったな。。

花屋の勤務先でも、若い子達に
あんまり怒らないよねって言われる。

でも、小さい怒りは勿論あるし、
「悔しい」は数え切れないくらい、
たくさんある。

ただ、前よりも「怒り」という感情が湧きにくくなった。

怒るって兎に角エネルギーを消費する。
好きなこと以外にエネルギーを
なるべく使いたくないから、
常に省エネモードになっている。。
若い頃の有り余る体力がないから、
是が非でも節約したい。

おばちゃん通り越して
もはや、おばあちゃんだ。

怒りって「若さ」だよなぁ。
怒り爆発=若さ爆発って感じ。。
なんだか羨ましい。


伝わらなかったり、
分かってもらえなかったり、
傷つけられたり、
モヤモヤしたり...

それで悲しくなったり、
諦めになっちゃうことはあっても、
怒りにまで感情が昂ることが
もう、あんまりない。。



私は人にされたことより、
人にしてしまったことの方が
尾を引くタイプなんだと気付いてから、
切り換えが鬼のように早くなった。
良い人ぶってるわけじゃなくて、
その方が夜ぐっすり眠れるだけ。。

ただ、今日は、私より遥かに若い女性の、
切実な叫びに (間接的にだけど)
なんというか、胸を打たれてしまった。

忘れかけてたよ。
そんな感覚。



20代後半が若い、
なんでも出来るっていうのは
正しいんだけど、
人によりけりだよねって思う。

私は20代は窮屈だったし、
もっと言うと、キラキラ輝く10代が
人生で一番しんどかった。

30代前半は怖いものなし、
全盛期だった気がするけど、
半ばで急速に焦って、
はたまた窮屈になった。
がんじがらめな日々再び。笑

しがみついている必要がなくなって、
長くお世話になった職場を離れて、
花の仕事を始めた。

今や悟りを開いてしまったようで、
毎日が楽しい。

他人から見たら、
終わってるって思われるかもしれないし、
明日には枯れてしまう花かもしれないけど、
(既に枯れているかも。笑)

お菓子が美味しいだけで幸せだし、
家族といるだけで満ち足りるし、
箸が転げても無限に笑える。

今が1番、足取り軽やかで、
なんだかご機嫌だ。
このメンタルで20代を過ごしたかった。

今の自分がそこそこ好き。

将来のことを考えると、
ふと不安になることもあるけれど、
とやかく言わずに、好きなことを
思い切りやらせてくれる両親に、
ただただ感謝しかない。


はなのいろは うつりにけりな 
いたづらに
わがみよにふる ながめせしまに

小野小町

小野小町の色鮮やかな、おんなの愚痴。

自分の若さや美しさを、ただいたづらに貴方に捧げてしまったわ...って
軽やかに、艶っぽく唄ってる。
ただなじるでもなく、蠱惑的に。
さすが、モテ女子の鑑!

遥か昔からの普遍的な悩みなのかな。

この歌って百人一首の、9番めの歌ってところが完璧じゃない?
完全に花の命が終わってしまう、
10番めじゃないところがニクイ。
(時代順的に99番には出来ないし)
定家さんはすごい。。


花の命は短いよね。

でも、誰かに捧げた時間が惜しいって
そんな風にはいつしか思えなくなってしまって。

というか、捧げるってなに?
一緒にいたいから、ただ一緒にいて
結果的に時間が経ってしまっただけでは?
そこに自分の意志はないの?
あれ?厳しすぎ??

もう既に若くないからかな。

過ぎ去ってしまった時間は
もう戻らないんだけど
どんな瞬間もたまらなく愛おしいし、
悲しい記憶も
嬉しい記憶も
恥ずかしい記憶も
誇らしい記憶も
決して忘れたくない。

焦燥感や不審感で
まっくろくろスケだったあの頃も、
今よりずーっと若かったし。
焦る必要、なかったよ。。


結論、

今、この瞬間がいつだって、

人生でいちばん若い。

強がりじゃないよー!
ふふふ。


婚期を逃した週末花屋の、
深夜の戯言でした。

読んで下さって
Super thanks!

YUKIちゃん

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?