宇宙ミュージアムTENQへ行ってみた
コンドウハルキさんがオススメしてくれた宇宙ミュージアムTENQは、率直に「行って良かった!楽しかった!」場所です。
というのも「コンセプトの強さ」「随所へのこだわり」「コンテンツの充実」「シグ二ファイヤの心地良さ」「体験の楽しさ」を強く実感できたからですね。(本当にすごかった!)
そこでTENQでの気付きと学びを「TENQ行ってみた」と題してシェアしてみます。きっと読み終わる頃にはTENQに行きたくなっているはず。それでは始めましょう。
TENQでの気付き【5本立て】
ぶっちゃけた話をすると「TENQって何?ようわからへんけどコンドウハルキさんが面白い言うてたから行ってみよ!!」と勢いだけで行きました。
往路の電車でHPを確認するも「結局何が楽しめるの?」とよくわからずじまいでしたが、行ったあとには「行って良かった!」と大満足になっていたのです。
そこで、なぜ大満足できたのだろう?を紐解いてみると「デザインって結局体験だよね」というコンドウハルキさんの言葉に着地したため、ここでは私なりの仮説5本立てで解剖していきます。
1|コンセプトの強さ
TENQが大満足できた大きな理由は「コンセプトの強さ」に尽きるでしょう。
行く前に見ると内容がよくわかりませんが、見終わったあとは確かにそうだったと言えるミュージアムなのです。まずはざっくり「星や宇宙、サイエンスを楽しめるのかな」と思えればOKです。ここからは時系列に、一緒に体験していくようにレポ形式で進めてみます。
実際に水道橋駅から黄色いビルという建物を目指して向かってみても遠くからビルの上に貼られた「TENQ」のロゴしか見えません。ビル6階にミュージアムはあり、建物入り口には土星の大きな模型があるため「ここにあるのか」と迷うことなくEVへ誘導。
6階は白を基調とした内装で、スタッフの制服はベースカラーが白で肩周りは青。「まるでガンダムの制服っぽいし、ココは宇宙船のようだな」と感じました。
ええ、そうです。コンセプトの世界観を施設規模で入り口からバンバン仕掛けてくるのがTENQ、そう気付いた私はエントランスから見回し始めました。
2|随所へのこだわり
随所のこだわりは、建物入り口から体験が終わるまで続いています。
しかもコンセプト通りにすべてが設計されており、先ほどザックリと把握した「星や宇宙、サイエンスを楽しめるのかな」という認識を決して裏切ることはありません。
これが世界観をやり切るということか!と読みながらわかるよう写真も撮ってきたため、合わせて紹介します。
もしネタばれNGの人はここでUターンしてください。
……それでは、準備はよろしいでしょうか。
まずエントランスでチケットを購入したらすぐに見つかる場所から、随所へのこだわりを見ていきましょう。
まずは入り口、チケット売り場の向かいにあるトイレです。
宇宙服を着たようなピクトグラムがもう可愛い。こんな些細なところからコンセプトを視覚的に取り入れてくれているのかと驚きました。
またオリジナルと思しきフォントもあります。
WOMENから伝わるでしょうか、ハルデザ0期生の人ならわかってくれるであろうトレース課題で苦しんだ時のNazalizationを彷彿とさせるフォント。(身内ネタごめんなさい)
そして白が基調の部屋と銀のドアノブは、我々が思う宇宙(スターウォーズなどを思い出すとパッと出てくる白や黒、青、金、銀など)から逆算されて決めた色なのかなと感じざるを得ません。
また写真右奥、窓のカタチが丸なんですよね。
外の景色があえて見えにくい高さ、しかも空しか見えないような高めの位置設定。これは変に都内の様子が見えないように、現実世界をあえて思い出させないようにしているのかもしれないーーと仮定するなら、ここもコンセプトの世界観を貫き通すための設計。うーん、思わずうなってしまいました。
しかしここはまだチケットカウンター前のトイレやEVホールです。奥には、さらなる仕掛けが施されているはず。
「TENQは随所へのこだわりがある」とコンドウハルキさんの情報もあったため待機スペースへ移動。
TENQはミュージアムへ入ると最初に映像を見る関係で15分おきの入場制となっています。
そのため入場時間まで待機する必要があるのですが、待機スペースには様々な仕掛けが用意されていました。上の写真は「エントランス」にあたります。お気づきの方もいらっしゃると思われますが、照明がUFOなんですよね。
それではエントランスと宇宙ストア(お土産ショップ)をみていきましょう。
待機スペースに入ると両サイドの壁には宇宙にまつわるアイテムや書籍がズラリ。
あからさまにターゲットたちへ宇宙を意識させる、世界観に連れ込む準備をしてきます。
しかも黒い椅子が置いてある通り、座って待っている間に眺めるだけでも楽しめますし、中には手に取って読める書籍もありました。
写真だと右上のUFOが実はお土産ショップで売られていたりと、購買意欲を引き出す仕掛けも忘れていません。
さらに部屋の隅では3月末閉館キャンペーンをさりげなく開催しています。
そのキャンペーンロゴですら宇宙服を模したピクトグラムがフォントに入り混じるなど、作り込み具合がハンパない。(しかも可愛い)
この細かなこだわりに「ここまでやるか」と、メッセージを書かずにロゴをまじまじと凝視してしまいました。
そして待機スペースにはお土産ショップ「宇宙ストア」があります。
待機スペース両サイドの壁、アイテム紹介の箱飾りがつづいていると思いきや、一部お土産ショップの景色が見えるように壁がない部分に気付かされます。これは意図したものかわかりませんが、あえて水色の壁紙が見えるのが大きなポイント。
今まで壁のアイテムをワクワクしながら見ていると「そういえばこの先に部屋があったな」と、ショップの入り口をさり気なく思いださせるのはもちろん。
宇宙空間にいる宇宙飛行士たちが、宇宙船という無機質な白い空間から地球の青を見た時に似ていると私は感じました。
しかも寒色系の青ではなく、暖色系の薄い青であることにこだわりがあると思いませんか。
白い空間から見た暖色はホッとします。それは宇宙から地球を見て「帰りたいなあ」とか「ホッとするなあ」という感覚と通じるように思えましたし、つまるところ「居心地が良さそうだ行ってみたい」と無意識に感じさせる可能性まで計算していたとしたら?
これは果てしなくコンセプトからの施設設計が上手すぎると言わざるを得ません。
そして究めつけは入り口です。
写真右端に見える通り、土産ショップの隣に位置していますが「真っ黒で白いトンネル」は先ほどのお土産ショップの雰囲気から感じる「温かみ」を一切排除し、宇宙という真っ暗な空間へ放り出されるかもしれない、やっぱり宇宙船に乗るんだと、無意識レベルの中に刷り込んでくる色遣いです。
白トンネルに当てられている青いライト、奥の廊下の薄暗さ、それらは最初にざっくり認識したコンセプト「星や宇宙、サイエンスを楽しめるのかな」を、よくはわからないけれどやっぱりそうらしい!と確信させたりワクワクさせるのに充分な仕掛けです。
まだミュージアムの中へ入っていないのにこのボリューム。
もうどうしたらいいのだろうと思いますよね(笑)
ここから先は内容をギュッとしぼってサクサク進めます。
3|コンテンツの充実
TENQの中へ進むと小さな子供から大人まで楽しめるコンセプトに沿ったコンテンツが充実していました。
しかし入り口の時点でわかった通り、コンテンツを全て紹介するとあまりにも長くなってしまうため、コンセプトの世界観と体験という視点でザクザク進めます。
はじまりの部屋
あの白いトンネルを通った先、暗い照明の広い空間に1人だけスタッフが待っています。
壁には大小さまざまな正方形がぼこぼこと配置され、少ないですが立方体の白い椅子に座るように言われるため着席。
スタッフによる世界観へ誘うノーカンペの長めナレーションを聞いていくと部屋は真っ暗となり、正方形の壁にプロジェクションマッピングの投影がスタート。宇宙やサイエンスにまつわるものが次から次へと映し出され、映像と音楽とで、たとえコンセプトを知らずとも「よくわからないけれど何か宇宙とかサイエンスっぽい場所だ」と把握させられドキドキできます。
実際、暗さや映像に驚いたのか小さな子供たちは何人か泣いていました。
すると急に入り口とは違ったドアが開き、そこだけが明るく照らされます。次はあちらからどうぞと案内されますが、勝手に自然とその扉へ行きたくなる心理が働く良い仕掛けだなと実感できたポイントの1つ。そうしてシアター宙へと移動。
シアター宙
広い空間に直径11mの穴が空いており、そこを囲うように銀の手すりがあるため好きな場所でそれぞれ立つように言われます。
その丸い穴はスクリーンで4K超の映像が投影されるんですよね。訪れる月や時間によって内容が異なるのも、いつきても飽きさせない楽しませてくれる工夫でした。
そうやって柵に寄りかかりながら大きなスクリーンを覗き込んでいると、まるで宇宙から地球を眺めているような感覚に。これが「視点を変えさせる」というコンセプト通りの体験をデザインされている場所です。
おかげですっかり宇宙や星、サイエンスという世界観に引きずり込まれたところで次の部屋へどうぞと促されました。そのあまりの圧倒的スケールに、暗い階段と廊下を移動しながら「やっぱり視覚刺激は強い」と再認識。
サイエンス
今まで映像体験が2つも続きましたが、今度は広くて明るさもある部屋へとやってきます。
映像の通り部屋の各所に宇宙研究にまつわるアレコレがあるのですが、これは行ってみて実感してほしい1つなのであえて詳しく書きません。
急に本物というか真剣度が増してきたなと感じる展示がドっ!と増えるのですが、そう感じさせる最終王手がその部屋にはありました。サイエンスの部屋で唯一撮影禁止の、東京大学総合研究博物館が協力しているリサーチセンターの存在です。
研究者たちが本当にそこで宇宙研究をすることもあり、書籍やPC、ホワイトボード、本当にそこに研究者がいてリアルに何か研究中なのか、悩んでいる姿が見られたり。
おかげで、ざっくり把握していた「宇宙とか星とか楽しめる場所なんだよね〜」という軽い認識が「やっぱり宇宙にまつわる場所だったんだ!」「ガチで宇宙研究やん!」と、急に予想を超えてくるコンテンツにワクワク感が一気に増します。
他にも本当に宇宙研究で使われた探索機の試作機が置かれており、動く背景をバックに写真をとれたり。右にある看板のQRコードを読み込めばiPhoneユーザーはARを楽しめるなど。
つまり展示されているものが本当に多いため、ターゲットが各々行きたい場所へいき楽しむ流れになるのも面白いなと単純に感じたポイントです。そうして探求心のままに歩き回ると次の部屋を発見するんですよね、この体験はぜひ行って体験してほしい。
イマジネーションと企画展示室
急に宇宙研究から解き放たれて遊ぶ空間か?と思いきや、やはり宇宙やサイエンスにまつわるあれこれを仕掛けていました。
開けてみたくなる扉、思わずへ〜!と言いたくなるマメ知識、ついつい視線で追ってしまう星など。ただ楽しませるだけじゃない、どのコンテンツもコンセプトに沿ったものしか置かれていないのに「触りたくなる」「面白そうだ」「なんだろう」と思わせるものばかり。
企画展示室もしかり、宇宙にまつわるゲームやガチャガチャが置かれているなど飽きさせない工夫しかありません。決して子供が楽しむための幼稚さに落とすわけではなく、感覚的に何をすればいいのかを引き出すものばかりである、このことが重要なのだろうと感じました。
おかげで子供はもちろん、大人もワクワクしながら歩き回る光景が広がっており「ディズニーやUSJに通じるこの感覚はコンセプトをブレさせないからだ」と、何度目かわからない確信になった瞬間でもあります。
つながる場所
そしてひとしきり歩き回ったら、途中で暗いトンネルを発見します。
宇宙にまつわる偉人や研究者たちの格言が壁に投影される心地良い空間で、黒い椅子があるため腰掛けて眺める人もいました。この美しさはYouTubeで確認したほうがわかりやすいですね。
宇宙を心に留めると公式サイトに説明がある通り、なるほどこの格言は覚えておこうと思う言葉がいくつもありました。
明るい空間の中にひっそりあったこの暗い通路は最初見つけにくいです。なぜなら周りが明るすぎるのに対してこの廊下は比較的狭いうえに暗いから。しかし、この暗さのおかげでもし最初に廊下を見つけたとしてもイマジネーションの空間に戻させる工夫があるとわかりました。
デザインでいう対比です。明るい・暗いという明るさの対比を生み出すことで「この廊下は楽しいイマジネーションとは何かが違う」「ここに行ったら楽しい空間から離れてしまう」と無意識に察することができるため、明らかに広くて楽しいものが溢れるイマジネーションに留めさせることができます。
万が一そうでなくても「ここは何の部屋?」と見上げたくなる人の心理をついて、入り込むような「コトバリウム」の工夫に「おお!」と感心。またさりげなくイマジネーションからは見えない壁に「EXIT」もあるため、出口になってしまうとわかりますね。
おかげでイマジネーションに引戻されてひとしきり遊びまわれるのです。遊び疲れたらゆっくりできる暗い廊下は自然と誘われて気づいたら椅子に座って格言を眺めている。これも感覚的に行動を促す仕掛けだろうと、心から感心したポイントの1つです。
そしてコトバリウムを堪能したあとは、あんなに広かった空間から狭くて白い空間になっていき「戻るんだ」と無意識に感じていきます。
最後の広い空間にはおもしろフォトスポットがいくつかあり、キャッキャ言いながら写真を撮るなど少しずつ現実を思い出し、最初にみたであろう穏やかなブルーの「宇宙ストア」に繋がるという流れでした。この青にホッとしたのは私だけじゃないはず。
さて、ここまで各コンテンツの気付きをまとめてきました。次はシグニファイアの心地良さに気付かされた話をお伝えします。
4|シグ二ファイアの心地良さ
そもそもシグ二ファイアとはなんぞや?という人がいらっしゃるかもしれません。もしかすると「アフォーダンス」という言葉なら聞いたことがあるでしょうか。
しかし、この話をし出すと非常に長くなるため、ちょうどいい解説記事を紹介します。気になる人はコチラをご覧ください。
時間がない人向けにザックリ説明すると「期待しているActionを誘導するサイン(デザイン)」です。
コンドウハルキさんが紹介のとき「無意識に進みたくなる照明や間隔の配置」と言っていたのが正にそれであり、実際に誘導されている人の図が写真にあります。
写真中央にひろがるソファはリクライニングができるほどの背もたれであり、そこに座る左の男性2名は寝転ぶような姿勢をとらざるを得ません。すると、自然と視線は上を向き、そこにはどこかの惑星の表面を撮影したムービーがずっと流れています。
つまりあのソファは「座らせ」て、あんなに角度がついたリクライニングなら「凭れる」ものというシグ二ファイアとなり、最終的に導きたい「上のモニターを眺めさせる」行動をデザインしています。
このようなシグ二ファイアが至るところに心地好くちりばめられているのがTENQでした。
最初の始まりの部屋で次の部屋へ促す照明の使い方、イマジネーションとコトバリウムの照明の使い方、イマジネーションに置かれたあらゆる仕掛け、すべてが自然とやりたくなるものであり、しかも楽しませ方がコンセプトに沿っている。このシグニファイアの心地良さは行ってみないとわかりません。
ワクワクさせ続ける畳み込むほどのシグニファイアのおかげで世界観をどっぷり楽しむことができました。こんな経験ができる場所はめったにないため、感動した気付きの大きな1つです。
5|体験の楽しさ
ここまでTENQにある各コンテンツとちりばめられたシグニファイアの心地良さをお伝えしてきました。
これらがどうして「楽しい体験」となり得たのか、改めて振り返っても「コンセプトの強さ」としか言いようがありません。
コンセプト通りに入り口から宇宙を思わせる視覚へのアプローチが施設規模で施され、チケット購入で出会うスタッフの制服や宇宙にまつわる待機スペースにあるアイテムの数々、そして想像を超える映像体験でTENQの世界観へと確実に引きずり込んだら、本物の研究施設に「これはすごいぞ!」と期待せざるを得ない。
そして進めば触れて楽しめる、動いて楽しめるのは心地よいシグニファイアのおかげ。次は何があるのかと探し回りたくなる行動すらコンセプト通りであり、すべてがワクワクするコンテンツとなり世界観を貫き通しています。
すべてはTENQのコンセプトがしっかり定まっており、正確なコンセプト理解が導き出した各コンテンツが知覚へのアプローチとしても楽しませてくれるからこそ「行って良かった!楽しかった」と感動体験を与えてくれるのだろうと感じました。
だからこそ、コンドウハルキさんが「デザインって結局体験だよね」といっていたのだなと、現地で楽しみながら実感できたと思います。
TENQでの学び
TENQで学んだことは、やはりコンセプトは大事でありコンセプト理解がさらに大切だということ。
用意されるコンテンツはコンセプトがベースにあり、シグニファイアを操れたらターゲットにストレスなくActionを起こさせ、楽しませることもできる。
うまくいけば「こんなことがあってさ」と口コミも拡げられる。
正しく「デザインって結局体験だよね」であり、だからこそマーケティングと切り離せないものなんだと確信しました。
デザインって、すごいですね。
しかし、この素晴らしいTENQは23年3月末に閉館します。もし今回気になって行ってみたい方は、来月末までにぜひ足を運んでみてください。
今回のnoteは以上になります。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。この記事を通してあなたにも気づきや学び、ワクワクを与えられたら幸せです。
編集後記
初めまして。医療にどっぷり10年、それからブログとライターを経て、今はデザインの奥深さに魅力されているハルと申します。
裏にある徹底したロジカルは決して見せず、無意識へアプローチするデザインの美しさたるや。まるで白鳥のようだと惚れ込んでしまい「もっとこの世界を知りたい」とデザインを猛吸収しているところです。
今回はデザインのインプットから得た気づきや学びを、得意のライティングでアウトプットしてみました。
私の考えやフィルターを発信することで「ハルってこんな人」が伝わればいいなと考えているため、これからもnoteで発信していきたいと思っています。
さあ、記念すべき初noteとなりました。
ここまでお読みくださったあなたには心からの感謝と、何か一緒にできるのでは!とワクワクの気持ちを抱いています。もしビビッときたらTwitterで繋がり、何か一緒に創り出しましょう(笑)気になる方はぜひフォロー、いいねよろしくお願いします。
さて今度こそ本当にありがとうございました!
また、あなたとお会いできることを願って。
それでは、また!
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