ゲーム感想!『5つのネイト』
前置き
この前遊んでめちゃめちゃ面白かったインディーズのRPGがあってですね。とにかく感想を書き残したくて、気づけば7000文字を超えてたわけです。それがこちら!
5つのネイト+ ダウンロード版 | My Nintendo Store(マイニンテンドーストア)
元々スマホのアプリゲーであった『5つのネイト』の移植版であり、ぼくはswitch版から初めてプレイしました。遊んで、楽しんで、そんでとにかく感想を吐き出したくてこれを書いたってだけなので小粋な前置きとかはありませんが、それはそれとしてこれをうっかり読んだ誰かにワンチャン届きゃいいなくらいの欲はあります。
なのでちょっとだけ体裁を整え、順を追ってレビューのようなものを書いてみました。あらすじ→良いとこ→その他補足ぐらいの感じで。どうぞよしなに!
ゲームのあらすじ
ストーリー
舞台は勇者や魔王、剣に魔法にねこドラゴンなんかが存在するオーソドックスなファンタジー世界。
そんで主人公は6人。青年剣士のアシュレーと、その妹のネイト”たち”。なんとこのゲーム、妹のネイトは5人います。正確には、1つの体に5つの心! とある魔道士がかけた呪いによって心を分割させられたネイト。彼女を元に戻すため、兄妹は魔道士を追いかけて旅に出るのでありました。
そんでその2人が旅の途中で立ち寄った、その名も『タチヨッタ村』がこのゲームの主な舞台となります。世界は特に救わないけど村1つくらいは救う、そんな感じの物語。
ゲーム概要
ゲームの基本はいたってシンプル。アシュレー→ネイト→敵の順で手番が回るので、兄妹の番が来たら3~5択の中から1つのアクションを選んで行い、それが終わったら次のキャラ。素早さの概念がないため、全員の行動順が変化することはない。なんならMPすらないし、HPも戦闘が終わったら全回復するので、節約とか気にせず力の限り攻撃してHPを削りきったら勝ち!
と、本当にシンプルなわけですな。というかこれだけだとさすがに素朴すぎるわけです。ただ……『5つのネイト』には他のRPGにはない、革新的なシステムが1つだけあります。それが戦闘画面の右下にあるルーレットのようなもの。これこそが『ネイトボード』! これは5人のネイトの人格をシステム化したものであり、このRPGの柱とも言えるシステムとなります。
先に説明した通り、このゲームの主人公であるネイトはその体に5色の人格を宿してます。白、緑、青、赤、黄。各色のネイトは性格が違うのはもちろん、使える魔法さえがらりと変わるわけですね。
ならば敵に合わせて色を使い分け、弱点を突いて巧みに撃破……と、そうそう思い通りにいかないのがこのゲーム。
この2枚の写真は後述するゲーム内説明書『ねこどらマガジン』で見られる解説ですが、これだけで大体雰囲気を掴める方もいまいちピンと来ない方もいると思うので、1つだけ例を挙げさせてもらいます。
例えばネイトボードの写真の右にある『風守+3』は緑ネイトが使う技です。これは相手に全体ダメージを与えつつターン終了時まで自分が狙われない便利な技ですが、代わりにネイトボードが3マス回ります。各色(白以外)のマス目は写真の通りそれぞれ2マスずつしかないので、3マス回ると場合によっては回復技を持つ青ネイトをすっ飛ばして、攻撃技しか持たない赤ネイトに行ってしまいかねません。
ゆえに『HPが無いから次のターン回復したい(青ネイトに回したい)けど、でもネイトが敵に狙われると倒されかねないから風守を使いたい。けど風守を使うと次に来る赤ネイトは回復を持っていないし……』といったジレンマが起こりうるわけです。
そのジレンマこそが、ネイトボードを持つこのゲーム『5つのネイト』にしか存在しえない厄介で愉快な醍醐味ポイントであり……そしてこのゲームは隅から隅まで、ネイトボードという斬新なシステムの醍醐味を味わうために創られた。そういっても過言ではないRPGなのです!
そんなわけで、この記事ではそのバトルシステムに主な重点を置いて語っていきます。いざいざ!
『くるくる回る戦略型ボードバトルRPG』とは一体なんぞや!
その1:ランダム性の少なさ&兄妹の連携によって、数ターン先まで読む楽しみが簡単に味わえる!
まずひとつ言及すべきこととして、このゲームはランダム性がかなり少ない作りになっています。
①命中率が存在せず、一部の例外を除き攻撃は100%当たる
②『転倒』『毒』といった状態異常を伴う技も1回目は必ず状態異常にかかり、2回目は2回命中で、3回目は3回命中でかかる……と、確率ではなく回数に応じて耐性が増えていく
③いわゆる急所やクリティカルといったランダムなダメージ上昇が存在しない
④強力な『必殺技』を持っている敵は、それを発動するまでのターン数が常に表示されている
④ネイトボードの回転も、『回復+2』『足払い+3』など、技に対して数値が完全に固定されている
といった形で、こちらの計算を阻害する要素が少ない設計となっています。逆にランダム性のある点は以下の通り。
①敵の攻撃ターゲット
②敵の通常行動
③ランダム要素がある一部の技および一定確率で技が外れる状態異常
といった具合。まぁこのランダム要素も『ランダム要素に乗るか反るか』といった楽しみが要所要所でありますが、ちと話が逸れるので割愛。とにもかくにもこのゲームは固定化された数値が多く、ゆえにある程度まで先を読んで戦いやすいということになるわけですね。
もちろん先読みが熱いゲームならこの世には山ほどありましょうが、その中でもこのゲームが特に優れる点として『先読みの敷居の低さ』があります。
そしてその敷居の低さ、分かりやすさを作っているのもまた『ネイトボード』というシステムなのです。
このシステム、『毎ターン使える技が変わる』というと敷居的にはむしろ難しく聞こえるかもしれませんが、技自体は1人のネイトにつき3種しかありません。技の傾向も色ごとに回復担当、攻撃担当など明確で印象に残りやすく、そこさえざっくり覚えてしまえばあとはネイトボードを見るだけで直感的に思考が生まれる作りになっています。最初はよく分からずとも、遊んでいるうちに自然と「ここは緑の雷+2で青に渡し、次のターンに回復+2で体勢を立て直しつつ赤ネイトの火炎打ち+1からスマッシュ+2だな!」といった具合で4ターンぐらい先までの戦術なら数珠つなぎで浮かんでくるようになってくるのです。
この「今の自分、すげー先まで考えてる!」という感覚が、RPGとしてとても気持ちいいんですよね。
そこに加えてさらなる奥行き、そして柔軟性と気楽さを与えるのがもう1人の操作キャラであるアシュレーです。彼にはボードが無く、予め装備してある4つの技で常に戦えるというのがネイトとの大きな差別点となっています。
妹に勝てる兄は存在しないのでアシュレーの攻撃力は低めになっています。が、代わりに彼は防御や回復、補助技の選択肢が非常に多彩です。例えば自分のダメージを軽減したり回復するだけじゃなく、ネイトを庇ってダメージを肩代わりもできるし、なんとネイトボードを進めたり止めたりもできる!このタンク兼サポート系兄貴のおかげで、このゲームはネイトボードに振り回されすぎず、咄嗟の思いつきで結構なんとかなるようにできています。
例えば「どうしても次に来てしまう赤や黄ネイトじゃ防御できないのに、同じターンに敵の必殺技が飛んでくる!」などといった『ネイトだけでは詰んでしまうような状況』でも、アシュレーに庇わせて全てを受け止めさせるなどの方法で凌ぎきれたりします。しかもなんとこのゲーム、2人同時に倒れなければ戦闘毎に1回だけ復活薬で復活もできるのです。頑張れ肉壁お兄ちゃん!
そんなわけでこのゲームはネイトボードと先読みを主軸に起きつつもほどよくアドリブが効くように作られているのですが、そのアドリブ性と先読み性が次に語るもうひとつの醍醐味にも繋がってくるのです。
その2:よく練られた敵との競り合いが、激しい緩急と爽快感を生み出す!
前提として、このゲームのボス(なんと20種類以上!)はそれぞれが個性豊かです。
例えば赤いものを見るとキレる牛は、赤ネイトを見ると攻撃力がアホほど上がってしまう。歌が好きなゴリラには、黄ネイトの普段は役立たない技『歌う』が足止めになる。緑ネイトの雷は水生生物の弱点を突けるけど、一部敵(主に水生生物)の特定行動でフィールドを水浸しにされると味方にも感電するようになる。などなど……全てのボスにそれぞれ有効なネイトや戦術があるよう丁寧に設計されています。
しかしそれぞれの戦闘では最初にちょっとだけヒントを貰えるけれど、基本的には喰らってみなきゃ分からない。そんなわけだから最初はネイトボードも上手く回せないのだけど、そんな状況で敵の攻撃になんとか耐えて体勢を立て直すとき、まず真っ先にアシュレーの柔軟性が活きてきます。なのでボス戦直後は大体アシュレーが壁になりつつ、各色のネイトで弱点を探ることになるわけですね。
そして上手い具合に耐え続けて、敵の行動や弱点が読めてきたら反撃開始。敵の猛攻の隙間を縫って、弱点を突くべし突くべし! ただし弱点と一口に言っても単純な○属性に弱いというものから、『風で煙の体が吹き飛んで行動不能になる』などの変化球まで色々あって、それらを探るのも一苦労だけど、当てていくのも一苦労。
何せこのゲーム、回復が貴重です。赤、緑、黄ネイトは基本的に回復ができません。アシュレーもちょっとした回復スキルこそ持っていますが、彼の技には実は『チャージ』という制約があり、数ターンに1度しか使えません。そして回復が貴重なわりに敵の1発のダメージが大きいので、ランダムターゲットなのも結構怖い。その辺がネイトボードと絡んでくると、毎ターン綱渡りのような戦いになることもしばしばあります。
『味方のHPを管理しつつ、殴れるときに弱点突いて殴っていく』ぱっと見はこの上なく分かりやすいのに、そこにネイトボードが加わるだけですげー悩むしすげー楽しい! アシュレーの技を把握し、ネイトボードを制御し、敵の技を読み解いていく……これだけでも緊張感が味わえますが、しかしぼく個人としてはその緊張感の先にこそこのゲームの真の醍醐味がある! そう思っています。
ここで見出しの『緩急』と『爽快感』の話に戻るのですが、このゲームの戦闘には大きな流れが存在します。
まずは先ほども説明したように、敵のパターンを把握するためなんとか耐え凌ぐ時間。
次に敵のパターンに対して兄と妹の行動を合わせて少しずつ劣勢を押し返していく時間。何度も語ったとおり、このゲームはお互いの行動を先読みしていくゲームです。敵のパターンを把握し、ネイトボードを制御する。敵の必殺技を上手に止め、余裕ができたら弱点を突く。上手くできればできるほど、敵のHPはゴリゴリ削れていき、こっちは余裕がどんどん出てきます。
最初は辛かったはずなのに、それがいつしか気持ちよくなっていく。流れがどんどんこちらに引き寄せられていくわけです。やがてお互いの行動が綺麗に噛み合った先で得られるのは、『この戦闘を完全に掌握した』という感覚。そう確信できたときの手応え、無敵感、爽快感! これこそが『5つのネイト』の醍醐味であり、核である!
……といった感じでひたすらに『くるくる回る戦略型ボードバトルRPG』の良さについて語ってきたわけですが。そんな身で言うのもなんですが。もしも『5つのネイト』がこのアイデアだけのゲームなら、ぼくはここまで語れなかったと思います。
こういう形で感想を残したい。ぼくがそう思った理由は、このゲームがアイデア賞で終わらなかったからです。このゲームには、このゲームを思う存分楽しむための様々な気配りが成されている。そんな点も含めて、ぼくはこのゲームが好きになったのです。
面白い戦闘のRPGにする。そのためにこのゲームは多くのことを、端から見たらヘンテコな形にさえ見えるほどに洗練させてきました。
『面白い戦闘のRPGにする』ため作られた仕様について
その1:死ぬほど簡略化されたマップ
まず拠点となる村がこれ。
次に毎章ごとのダンジョンがこれ。
このゲームの移動範囲は、村↔ダンジョンしかありません。さらに1章につき1ダンジョンしかなく章が変わると前のダンジョンに戻ることすらできないので、どんな方向音痴にも安心設計!
その2:各種装備は購入&付け替えのみ
このゲームはレベルアップで技や魔法を覚えず、代わりに全てのカスタマイズ要素がアイテム扱い(店から購入&道中で拾う)になっています。そしてこのゲームでカスタマイズできる要素は3つ。
①アシュレーが戦闘で使う技(4枠)
②白ネイトだけが魔法の代わりに使えるアイテム(3枠)
③ネイトたちの能力を上げたり技を変化させたりする装備(4枠)
各々の細かい仕様はゲームをやれば分かるので省きますが、これら全ては一度手に入れればいつでも自由に付け替えられる仕様になっているので、後述する仕様と合わせて色んな組み合わせを手軽に試せるようになっています。
その3:逃走には失敗しないし、負けてもその場からリスタート
なんと雑魚であろうとボスであろうと、基本的に逃走は100%成功! どれだけ緊迫した場面でも逃げられるし、なんなら負けてもゲームオーバーとか無くその場からすぐ再開できるから、装備を付け替えて再チャレンジも簡単です。地味にボス戦2回目以降は会話も変わるのも好き。
その4、戦闘が終わると全て回復する
全てです。HPはもちろん、1戦闘1回制限の復活薬も、白ネイトのアイテム(これも1戦闘につき回数制限がある)も全部回復します。逃げようとも負けようとも全回復です。だから勝つまで戦え、戦え……!
その5、ネイトの色がいつでも変えられる
ダンジョンマップならボタンひとつで5色のネイトを好きに切り替えられる。これ本当に地味な仕様なんだけど、本当にありがたかったんですよね。こういう忘れてもおかしくない配慮を忘れないでいてくれるのもまた、このゲームの本当に良いところだと思います。
その6、雑魚が強くて弱い
ずっとボス戦の楽しさばかり語ってたけど実は道中の雑魚戦も中々個性があって、『初見は苦戦するけど弱点分かればサクッと倒せる』やつも結構多いわけですね。こういう敵って初見は歯応えあるからネイトボードの良い練習になるし、レベル上げたきゃガンガン倒せるわけです。もちろん逃げたきゃ逃げても良い!
その他色々。セーブがいつでもできるとか、縛りプレイ用やレベル上げ用の
オプションだとか色々あるけどこれ以上は脇道逸れるので割愛。とにかく戦闘を楽しむことに特化したシステム作りとそれを楽しませるための細かい気配りがめーっちゃ気に入ったわけですよ。
じゃあそこ以外はどうなのか? といえば、これまたぼくはアレもコレも好きなのです。なんていうかしっくり来るんですよね、このヘンテコで愉快なRPGに。そういう話もちょろっとだけしたいのです。
『5つのネイト』の面白さを支える、バトル以外の要素について
なんか全体的にゆるゆるなストーリー!
拠点もダンジョンも少ないとはいえこのゲームもRPGであり、それゆえに様々な地名や敵などが登場します。
タチヨッタ村にコウター商店。チカクノ鉱山に森の熊ベアー。10秒で名前決める縛りでもやってたんか?
ファンタジーなのでもちろん、不思議な生物も沢山出ます。
ファンタジー世界にこれぶち込むのもある意味ファンタジーだけど!
ちなみに冒頭でさらっと書いたねこドラゴンはこれです。
そしてファンタジーには試練を与える塔がつきもの!
ういいいいいいん!
まーまーこの緩さには好みもありましょうが、手軽に戦闘を楽しめるゲームデザインとマッチしてて個人的には結構好きなんですよ。ボスに負けたり途中で逃げたりすると、再戦したとき「今度こそ負けないぞ!」くらいの気さくなノリで始まるんですよ。なんかすげー良い。良くないですか?
あとこの世界、勇者や魔王は存在こそしているようですが、主人公兄妹は一切それに関わりません。2人はあくまでも一般的な冒険者であり、作中で起こる事件も村1つ程度の規模っていうのも、ほどよいコミカルさに華を添えたのではないでしょうか。(そのせいで名前だけ出た王都があわや滅亡の危機に晒されたけど、誤差よ誤差!)
さらにもう1つ。このゲームにはこれをもっと楽しむための、素敵な”説明書”と”攻略本”が同梱されています。それが
『ねこどらマガジン』と『虎の巻』
スマホ版では課金特典だったらしいのですが、switch版では最初から付属している説明書&攻略本(のようなもの)。単なる説明や攻略に留まらずファンアート、アシュレー&ネイトによる敵や舞台の解説、制作者による制作秘話、果てにはストーリーの行間を繋ぐ短編小説まで載っていて、2冊合わせてなんと200ページ超え! 読み物としては本編を遙かに凌ぐ文量で、プレイ時間の1、2割はこれに費やされるという説もあるとかなんとか。でもこういう変な読み物めっちゃワクワクしませんか? なんならぼくはこれ読むために急いでクリアしたまであります。
そんでもって。
おおよそこれで一通り話したかな。でもめちゃ語ってなんだけど、実は惜しい点もいくつかあります。それは例えばバトルに特化したせいで一部のおつかい要素が味気なくただ面倒な物になっていたとか、ただでさえ弱点が分かりづらい仕様なのに技にカーソルを合わせるまで弱点表記が出ないとか。どうしたってもどかしいところはちょいちょいあるし、『虎の巻』でもいくつかの反省が載っていたりします。
だが、しかし! そんな細かい悪点なんて軽々超えるほどに革新的なバトルシステムとそれを支える様々な作り込みにぼくはこれでもかと感銘を受けちったわけです。その結果がこの文量。感想1つでこんなに物を書いたのは、マジで人生初めての体験でした。
プレイ時間はswitch版の追加ストーリークリア&虎の巻の読破も含めて8時間半ほど。時間としてはお手軽だけど、バトルは常に濃密で記憶に残る物ばかり! そんでもってもって。
ねこどらソフト 戦略発表会|せっきー|note
どうやら次作以降の構想もたっぷりあるようなので、今後の展開も楽しみなんですよ。発展途上なのにとても面白く、まだまだ更なる可能性も秘めてるこのゲーム。もしもこれを読んで少しでも琴線に触れたのならば、ぜひとも遊んでもらえたらなと思います。なによりも、私が次回作を遊びたいので!
(ちなみにスマホ版は本編が完全無料で遊べるようなので、それはそれで超すごいのでは!? こっちもオススメ!)
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