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父の話

「20歳になったら2人で飲もう」

はるか昔、お酒好きな父と約束して
気づけば23歳。
家では1度だけ2人で飲みましたが、
口数少なく、お互いテレビを観てた。

いまだに2人で外で飲んだことはありません。


口では言わないけれど
父がこの約束を大事に、大事に
私が誘うのを待ってくれていることは
わかっています。

20歳以降、私の誕生日にお酒を
プレゼントしてくれるのが
なによりの証拠です。

それなのに私はなかなか
「行こう」といってあげられません。


仲が悪いわけではないけど、良くもない。

それが私と父の関係です。

生真面目で、ちょっと理屈っぽくて
変に頑固な私の父。
亭主関白気質で家事には積極的じゃない
そのわりに人への命令は一丁前。


小さな頃からママっ子だった私は
そんな父に物心ついたあたりから
抵抗感がありました。



家事は全然手伝わないし、

一緒にお風呂に入れば、ストイックに
数をかぞえ終わらないと上がれないし。

スポーツクラブでは、
「モップのかけ方が悪い!」と
クラブの子どもたちを叱っちゃうし。
(父は地元団体の体育指導員)

とにかくいちいち細かいし。


大人になった今だから、
真面目で正義感があって、正しいことは曲げない
父らしい良さが分かるけど


子供の頃の私はそんな父が
少し嫌だった。

友達を叱って欲しくないし、
目立って欲しくないし、
お風呂はすぐ上がりたかった。


もちろん、一緒に遊んだりもしたし、
仲良しではあったけれど。
ことあるごとに、
ママと一緒がいいー!!!とよく
泣いていたのを思い出します。
なんて贅沢なんだ、自分よ。



思春期あたりからは
さらに父との関係がねじ曲がり、
なんだか妙に気まずい。

2人になると何を話していいのか
お互い分からなくなってしまいます。

父もそれを察してか
私にあまり話しかけてこなくなりました。

「おはよう」「あれとって」「おやすみ」
1日3言話せばいいほう。


そのままズルズルと現在23歳。
気まずさは相変わらずです。


お互い素直じゃないんです。きっと。
嫌な所までそっくりと母は言います。


そろそろいい大人なんだし、
もういいでしょ。
早く素直になって、仲良くお酒飲みに行きなよ。
親子の約束果たしなよ。

心の中で言う自分と


いや、2人で行って何話すの?
あの生真面目頑固と行って楽しめる?
無理に行くのは違うでしょ。

心の中のもう1人の私が
いまだに喧嘩します。


父と娘ってどこもこんな感じなのかな?


本当はなんでも言い合える仲に
なりたいけれど、やっぱり難しい。


ただ、この歳になると色々
見えてくるものが変わるのは確かで。

高校生の頃なんかは
なぜ母は父なんかと結婚したんだ。と
本気で思っていたけれど
今なら何となくわかる気がする。

たぶん、将来私も最終的に
父みたいな人を選ぶんだろうなと
やんわり思ったりする。


自転車の乗り方を教えてくれたのも
水泳を教えてくれたのも
責任感を教えてくれたのも
人に優しくすることを教えてくれたのも

思えば全部父でした。


こんなに気まずい、気まずいって言っているのに
親子って本当に不思議です。


とんだ、意地はり親子です。
誰に似たんだか。


でも、ずっと父が元気なんて保証はないし、
もしかしたら明日…。

早く素直にならなきゃとわかってはいるんです。
親孝行は出来るうちに。
このままでは絶対後悔する。

言葉は簡単なのに実行は難しい。


もう少しだけ私に準備が必要です。




お父さん、

私がお嫁に行くまでには
必ず約束を果たしましょう。

2人でお酒を飲みましょう。

私から「行こう」とちゃんと誘ってね。



ハル


本日のひとこと
父の好きなお酒は

ビール
焼酎
ウイスキー

いや、全部好きだわ、あの酒豪は。



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